第2話 地下書庫にたどり着かない 1
「まずは戴冠の儀かな」
魔王城はいくつかの階層に分かれており、四将軍の居住している階層には魔人はほとんど通らない。
俺は人気のない通路を急ぐ。
まぁ俺だけでやることでもないのかもしれないが、ただでさえ評判は悪いのだ。
世間でも、魔王城内でも。
ここで、わざわざただ面倒なだけの儀式に関わらせることもないだろう。
まずは戴冠の儀。
魔王は、生まれつきのものではない。
もちろん世襲制ではあるのだが、例えば――今までは一度もないが――反乱が起きたりすると、魔王の座は代わることになる。
魔王に代々伝わる冠を被り、魔王に代々伝わる魔法を行うことで、魔王候補者は初めて魔王になるのだ。
まずは儀式で行う魔法が載っている魔法書を取ってくる必要がある。
まずは、地下の書庫だな。
四将軍の部屋は五階だから地下まで降りるの面倒くさいなぁ。
そう思いながら、俺は階段を降りていく。
魔王一族には魔王城内で自由に魔法を使う特権があるので、転移魔法を使えばいいのだが、俺は魔王なのに魔法が上手くなく、場所を間違えるとかならまだいいが、地面や壁に埋まったりする可能性もある。
この魔王らしからぬ下手さは、教師が爺さんだったせいでやる気が出なかったのもあるが、魔王らしからぬセンスのなさのせいである。
要するに、親父と母親のせいだ。
ただ、魔法の下手なところなどが悪評判に繋がっているのだと思えば、庶民に悪口を言われようと起こる気にもなれない。
俺だって、魔法の下手な魔王など嫌である。
三、四階は魔人の姿はほぼなく、一、二階だけ多い。
一階から地下に降りる階段は、静まり返っていた。
ただ人が通らないだけでなく、音がすべて奪われていくような静けさ、そして暗さである。
……ちょっと雰囲気暗くて嫌だなぁ。
魔王らしくない感想をいだきながら、俺は長い階段を降りる。
どれだけ長いのだろうか。
地下書庫じゃなく地の底につきそうだな、とか洒落とも言えないような言葉遊びを思いついたとき、ようやく扉が目の前に現れた。
こちらも階段の雰囲気に合わせて、重厚な作りの扉。
オリハルコン製とかでも全然おかしくない。
俺は扉を押し開け、中を覗き込んだ。
そして、一番目にしたくなかったものを目にした。
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