豊side

俺の悪友、八神 雪夏(やがみ せっか)は昔から変わっていた。

俺は昔から弟が欲しくて誰かの世話をやくのが好きだった。

だから色んな人の面倒を見ていたしおせっかいをやいていた。

勿論ゆきもその内の一人だ。

ゆきは野良猫みたいな男だった。気分屋で警戒心の塊。笑顔で人を傷つける。そんな男だった。


そんな男が少しずつ懐いてくのが楽しくて

気付けば保育園から始まって小中高と共に過ごしていた。

ゆきは成長すればする程、性格はねじ曲がって人を傷つける事が増えた。

特に幸せそうな人を見るのが嫌なのか、そういう人を壊して遊び始めた。


ゆきは、顔が整ってるが故にモテるがその分猛毒を吐くからプラマイで言えばマイナス評価だ。

だから、外では顔を隠すか話すなと言った。

その際に起きるデメリットやメリットを理屈的に懇々と話したら顔を隠す方を選んだ。

そのおかげで小中と少し平和だった。

まぁ、外では遊んでた様だから少なくとも学校ではっていう所だけど。


そんなゆきは自分の名前を呼ばれるのを嫌がる。

誰に対してもゆきで通しているから本名を知ってるのは俺や理事長くらいだろう。


俺は、ゆきと一緒に居たからゆきの内側の問題を知りたくなくても知っていった。

だから、アイツが好意に対して無知なのも鈍感なのも仕方がないとは思う。

それにあんなに正確ネジ曲がったのも納得だし

だけど、今回は俺の友達が対象になってる訳で…


幸いゆきは俺を気に入ってるのか好いてるのか知らないが 

大抵のお願いは聞いてくれる。まぁ胃袋を掴んだ俺の勝利という所だ。


ま、そんな事は置いといて今回は要の話も聞かなきゃ良くわからん。

二人で話させるにしろ俺が話を理解してないとマトモな話し合いに出来ない。

どうせゆきの事だ。話をずらしまくってとんずらこくだろうから。


ピンポーン


「はーい。あ、豊。どうしたの?」


少し目元が赤い要は必死に笑顔を作っていた。


「今いい?」


「う、うん。」


中に入ってソファーに座るとそわそわしながら要も座った。


「俺面倒なの苦手だから率直に聞くけど

前の仕事の時ゆきと何かあった?」


「……何もなかったよ。」


顔を伏せたまま悲しげな声で答えた。


「本当に…?」


「避けられる心当たりはないよ。」


やっぱり避けられてるのは気づいてるのか。


「要、ゆきのこと嫌い?」


「っ…嫌いな訳……ないじゃんっ…

好きだよ…好きで好きで堪んないよっ!

けどっ…っぅ」


ポロポロ泣き始める要。

此処までゆきの事好きになった奴初めて見た気がする。

皆ゆきが壊して洗脳に近い状態でのすきすき状態だったからなぁ。


「なら、何で誤魔化そうとしたんだ?

ゆき起こした時、誤魔化そうとしたろ?」


「だって…言える訳ないっ

ゆきが特別で…ゆきがっ大好きなんて…言える訳ない!

そんな事言ったらもう傍には居られない!」


やっぱり誤解…というか変にネジ曲がってんな


「要は知らないかもしれないけどさ、アイツ嘘つかれたり誤魔化されるの嫌いなんだよ。

自分はやる癖して他人にやられるの嫌うんだ。

帰りに要が誤魔化そうとしたのを、ゆきは嘘つかれたと思ってる。

ゆきが嫌いだけど、嘘ついて好きだって言ったって思ってる。」


「ちがっ」


「違うのはわかってる。

わかってるけど、アイツはとことん捻くれてるから気持ちをそのまま受け取ってはくれない。

裏の裏まで考えちゃう面倒な奴なんだよ。」


最初の頃なんて飯食ってないって言うから飯分けるよって言ったらナニが狙い?なんて返されたもんなぁ…幼稚園児だぜ?普通にありがとうで良いじゃん!ってなったよ。


「でもっ……僕どうすればいい…?豊……

このまま避けられたままなのかな…」


相手がゆきじゃなかったら話して解決しろって言うけど

相手がゆきなだけで問題がとてもややこしくなる。

好きな事を隠して誤解だったんだって言っても警戒モードに入ってるゆきは色々勘ぐるだろうし

要は嘘つくの下手くそだしもっと拗れるだろうなぁ……


「ぶっちゃけ、ゆき相手にできる事は2つ。

正直に気持ちを吐露して疑ってきてもずっと言い続ける。

それか、ゆきの事は忘れる。この二択。

ゆき相手に適当なその場しのぎは出来ないし

そんな事しようもんなら多分、いや確実にもっと拗れる。」


多分正直に気持ちを言ってもすぐ信用はしない。

何度も何度もアタックしてやっと信じるか

鬱陶しいと突き放すか。まぁ正直此処は賭けだよな。


「………ゆきを忘れるなんて……そんな事出来ないっ」


「そっか。俺は要の友達だけどゆきの友達でもある。

多分何かあったら俺はアイツの味方になる。

だから応援は出来るけど手助けは出来ない。

要が自分で頑張んないとアイツは納得しないだろうし。一度諦めたらもう二度とゆきは捕まえられないと思う。

それでもやる?」


「……うん。

僕…頑張る。だって……ゆきと離れたくないっ。」


「ん、わかった。

今ゆきは俺の部屋に居るから行ってきなよ。

俺話し終わるまで部屋の外で門番してるから」


「うんっ!!豊!背中押してくれて…ありがとう」


ニコッと笑って駆けていく要。


「はぁ……これもし上手くいっても問題山積みだな……」


ゆきにはトラブルが付き纏っている。トラブルメイカーといっても過言ではない。

それはゆき自身の問題だけではなく家のせいでもあるが……


これから起きるだろう面倒事を思うとため息が止まらないが

ゆき自身、何か変化があったようだし……俺も頑張りますか。


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