第8話

「本当に人が悪いなぁ、ゆきは」


「ふふふ、そうでもないよ?」


僕の首に手を回し耳元で囁く要。


扉に手をかけ開けようとした時


「…何?棗?

僕これから要と仲良くイチャイチャするんだけど?」


僕を後ろから抱き締める棗に冷たく言う。


「……な……でっ…」


「何?聞こえない。

棗は、山田紀紗季を選んだ。

それと同じで僕は要を選んだ。」


棗の方に振り返り

涙目で僕を見つめる棗に


「棗は、もういらない。」


耳元で囁くと棗が崩れ落ち

山田紀紗季がこちらに駆けてくのが見えた。


そのまま僕は要を連れて要の部屋に戻った。



「あーあっ、盛大に爆弾落としたね」


僕の隣に座りPCを触りながら言った。


「だって、三ヶ月待たされてコレ?

それはないよ。」


「んー、確かに少し肩透かしくらったけど

僕は棗ともゆきとも友達だからどっちかの肩を持つ事はないできないよ。

それに、僕ノーマルだし。」


ガチャッ


「ただいまー」


食べ終わったのか葵達が帰ってきた。


「あの後どうだった?」


「え?あの後?壊れた人形みたいになってたぞ。

もって一ヶ月じゃね?今回は。」


「それじゃ、棗に何か聞かれたらほかの奴と仲良くやってるって言っといてよ。

僕、それまで理事長の手伝いで居なくなるから。」


ニィっと笑えば


「本当歪んでんなぁ

そうしなくても棗はお前だけだろ?」


「ん?知ってるよ?

だけど、最近ちょっと甘やかし過ぎたみたいだから。」


「ま、そう伝えとくよ。

どうせ今から行くんだろ?」


「勿論。

それじゃ状況報告よろしくー」


皆の頬に軽くキスして僕は理事長室へ向かった。

そろそろ棗が要の部屋へ向かってる頃かな


「高遠君、お疲れ様。

この後の予定はどうなってるかな?」


「取り敢えずそろそろ帰るつもりです。」


豊からそろそろ帰ってこいって言われたし


「3ヶ月も手伝ってくれてありがとうね。」


「ちゃんと給料も貰ってますし、これくらい大丈夫ですよ。」


理事長は優しいフワフワした人。

時たまお手伝いという名目で理事長の会社を手伝い小遣い稼ぎしてる。

特にお金には困ってないけど、いつどうなるかなんてわかんないしね。


「あっ、喧嘩したら仲直りするんだよ」


フフッと笑いながら去っていく理事長を見て僕は首を傾げる。


「僕、誰かと喧嘩したっけ?」


荷物をまとめてホテルを出る。着くのは明日かなぁ。

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