要side

僕の腰に抱きついてすやすや眠るゆきの頭を撫でるとスリスリとすり寄ってきた。本当に猫みたい…。


「ん?もう寝たの?」


「そうみたい。」


「本当に、ゆきは要の側でしか熟睡しねぇよな。」


ゆきは、一人じゃ絶対寝ない。

誰かと寝ても物音1つで起きるし、とにかく眠りが浅い。

なのに、僕と触れ合ってるとすやすや眠る。

なんでだろ。僕からアルファ波みたいなの出てるのかな?

こっちの気も知らないで安眠して…


「要ー、今回の奴大丈夫なの?」


「ん?大丈夫だよ。

多分物珍しいだけだよ。ゆきの事だからすぐ飽きちゃうよ」


僕がゆきに抱かれない理由は正にこれ。

ゆきはとてつもない飽き性。

飽きた瞬間興味を失くしてポイ捨てされた子をどれだけ見たか。

そうなるくらいなら、この関係のままでいい。

少し、我慢すればいいだけだもん。


「要は大丈夫か?」


ゆき以外にはバレバレな僕の恋心。

何でわかってほしい人には伝わらないのかと嘆く事もあるけど、気付かないでほしいとも思う。

気付かれたら…僕はもうゆきの隣に居られないかもしれないから。


「うん、大丈夫だよ。

ありがとう。豊、翡翠。」


「キツくなったら言って。

俺も葵も…それに他の皆も要の味方だから。

ゆきに怒ってあげる。」


「ふふふ、それちょっと見てみたいな

ありがとうね、本当に。」


僕は、とても臆病で自分から一歩踏み出せない。

だからただ願う。今回の子もゆきの特別じゃありませんようにと。

これからもゆきの側に居られますようにと。

ただ……そう願うんだ。


「さて、報告書纏めちゃおっか」


「手伝うよ」


「ありがとう、翡翠。

じゃあ、お願いしちゃおっかな」


「じゃあ、俺晩飯作るわ。

何食いたい?」


「んー、久しぶりにグラタンかな!」


「わかった。美味しいの作るから待ってな」


「ありがとう、豊。楽しみにしてるね!」


大丈夫……きっと今回も特別じゃない。大丈夫…

なのに、何でだろう……どうして、こんなに不安だろう。


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