第7話
僕が立ち上がり出口へ向かおうとすると
「ゆき!何かこっち来てるー!」
要の言葉に動きを止める。
「翡翠もう食えないのか?」
「ん、もう限界。」
「お、結構食えてんじゃん!よしよしっ
後は俺が食うから気にすんなっ」
翡翠と葵は気にせず二人の世界。
此方に向かってくる事で転校生に罵声がとんでるのに気づいた。
「棗!何でこっちなんだ?
あっちにも席は開いてたよ?」
「んー?此方に用があるからだよぉ」
鼻歌交じりの棗の声が聞こえたと思ったら棗の姿が見えた。
「あれ~?もしかしてゆき帰ろうとしてたぁ?
駄目だよぉ帰っちゃぁー!」
腕に絡みついていた山田紀紗季の手を振り払い僕を抱き締める棗。
「棗!何でそいつを抱きしめるの…?」
何か前見たときと変わった…?
何かが違う気がする。
「何でってぇ?
だって俺の本命だもん。
寂しかったんだよぉ?ゆきぃ」
そう言いながら僕の頬や首にキスをする。
「棗、うざい。
豊バトンタッチ」
棗を振り払い豊の肩を叩く。
「俺にバトンタッチされても困るんだけど…」
そう言いながら要を降ろして僕が元いた場所へ向かう。
棗は振り払われた手を見つめかたまっていた。
「ゆき、わざとでしょ?」
翡翠が僕の耳元でボソッと囁く。
それに答えずニンマリ笑ってみせた。
「それ、ゆきの悪い癖。」
まぁ、僕は葵に被害なければいいけど、と言って未だ美味しそうに食べる葵の所に戻った。
「棗!どうした?
アイツに何かされたか?」
フルフル震えて手を見つめる棗に寄り添う山田紀紗季は僕を睨む。
「棗に何をした!!」
僕に近づき胸ぐらをつかもうとする手を
「こんなんでも俺の友達だから止めてくんない?」
豊が掴む。
「止めなくても良かったのに…」
「止めなきゃお前容赦しないだろ?」
「離せ!棗に何をした!!
棗は俺の大事な人なんだぞ!!」
「へぇー、大事な人、ねぇ?
それじゃあ、棗と相思相愛な訳?」
僕を睨む山田紀紗季に聞いた。
「当たり前だ!
棗だけが俺をわかってくれる!愛してくれる!」
「ふふっ、今の聞いた?
愛す、だってさっ」
要達の方を見て言えば皆一斉に笑い始めた。
「な、何がおかしい!」
「棗がお前を愛す?
笑える。それなんてジョーク?」
動揺する山田紀紗季。
「ジョークじゃない!!
棗は俺を愛してるって言ってくれた!
イジメから俺を護ってくれてずっと側にいてくれた!
人の気持ちを馬鹿にすんな!!」
「別に馬鹿にはしてないよ?
そんなに言うならそこで固まってる本人に聞いてみるといい。なぁ?棗。」
棗の方を見てニコニコ笑う。
僕の声に反応してゆっくり顔を上げる棗。
「俺は紀紗季が大事だよ」
そう言う棗の顔は今にも壊れそうな笑顔だった。
「棗!俺も愛してる!!」
豊に掴まれた手を振り払い棗に抱きつく山田紀紗季。
「聞いた?要ー
だから僕のお相手してくれる?」
スッと要の頬を撫で要を見つめる。
「むぅ…僕も怒られないし
しょうがないなぁ。
だけど、そんなに付き合えないからね!」
腰に手を当て
わかった?と僕に言う要。
「わかってるって。
それじゃ、帰ろうか要。」
要を抱き上げ棗の横を通り過ぎる。
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