第10話
それからの毎日はというと…サーバー構築やセキュリティの強化、と毎日PCとにらめっこしていた。
「やった!遂に見つけた!」
急に要が飛び上がり要に持たれていた僕は体制を崩した。
「おめでとう。流石要。」
「ありがとう!理事長に言ってくる!」
嬉しそうにぱたぱたと出ていった要を見て僕も最終チェックに入った。
問題は無さそうだし、これで終わりかな。
PCを閉じて僕は部屋に戻った。
部屋に戻るとPCを片手に持ってベットに横たわる要が居た。
「ふふふ、だらしない顔してる」
ツンツンつついても起きない要。
口をだらしなく開けて気持ちよさそうに寝ていた。
要のPCを取って鞄にしまって上を脱いで僕も横たわる。
「んぅー………ゆきぃ……」
「なぁに?」
目閉じてるから寝言かな?
「好きだよぉ……」
ツーっと要の目からこぼれ落ちる涙。
「何で好きって言って泣くんだろ。」
本では好きな気持ちは幸せな物だった。
好きなだけで笑顔でいれて好きな人と居るだけで幸せな物だった。
なのに、どうして要は泣いてるんだろう。
「ゆきぃ………好き……好きなんだよ……」
悲しげに繰り返される言葉。
どうしてそんなに辛そうなんだろう。
いつも要は僕に好きという。でもそれは豊にも翡翠にも葵にも言う。
皆同じ好きな筈なのに、どうして要はそんなに辛そうなの?
わからない。
「ゆき、起きて!帰るよ!」
いつの間にか寝ていたのか既に要は服を着替えて準備バッチリだった。
「要、僕の事好き?」
「…好きだよ。葵も翡翠も豊も皆好き。」
一瞬顔を顰めてから笑顔でいう要。
でもその笑顔は何処かぎこちなかった。
「………そっか。」
僕はその笑顔を見た事があった。
本当に要は嘘が下手くそだ。笑って誤魔化そうとしてるのにちゃんと笑えてないんだもん。
「どうしたの?突然」
「んーん、何でもない。
早く帰ろう。」
どうして、要は嘘をついたんだろう。
僕が嫌いなら、そう言えばいい。僕を切ればいいのに。
僕は胸がざわつくのを感じながら寮へと帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます