第10話

「棗はイイコ、そうだろう?」


後ろから棗を抱きしめながら聞いた。


「う、うん」


「それならこれからも忠実な犬でいるって誓える?」


「うん!うん!!

ゆきの為に生きる!ゆきの言う事は何でも聞く!」


あぁ、これで完全に捕まえた。


「それなら、棗は良い子で僕の隣に居るんだよ?」


「うんっ!」


元々棗は自由奔放で愛されたくてしょうがないのに自分で壁を作りヘラヘラ笑ってるような奴だった。

手を出したのはただの気まぐれ。

興味が出た。そのヘラヘラ笑った顔を壊したらどうなるのかなって。


だから、一度全部壊した。

なのに、人間は少し甘くするとすぐつけあがる。

自分は対等なのだと勘違いする。


「ゆき!愛してるよ!」


「うん、知ってるよ。」


飴と鞭は難しいなぁ。

鞭は得意だけど、飴の配分が難しいや。


「ゆきー、報酬振り込んどく?」


お風呂から出るとPCから目を離さず要が聞いてきた。


「んー?任せる。」


僕がソファーに座ると棗は僕にもたれて安心したからなのか寝始めた。



「あーい。

それにしても自分の暗い過去を消すために実の息子を壊してくれ、なーんて酷い話だよね」


「しかも、本人はそれを知らないんだもんね。」


要に調べてもらった山田紀紗季の過去を見たら

パパの一人が実の父親でそれに気づいた父親が

周りにバレる前に口を塞ぐため僕に壊せって依頼だった。


僕の肩にもたれて眠る棗の頭を撫でる。


「思ったよりいい動きしてくれたもんね、棗。」


山田紀紗季が僕に絡んできたと知れば

棗が何かしらの動きを見せることはわかっていた。

だから、棗に知らせた。

棗の事だから自分に惚れさせてポイするんだろうな、とは思った。

だから、山田紀紗季が惚れてるタイミングで

僕が棗を捨てればこうなる事はたやすく予想がつく。

そして、要達に様子を聞き頃合いを見計らってから出てきた。


「本当棗は可哀想な子だよね」


そう言う要の目は冷たい目をしてた。


「本当はそんな事思ってないくせに。

しょうがないよ。棗は、メンバーじゃないんだから。

ソレ、いつまで飼うつもり?」


冷たい目で棗を見る豊。


「んー、気分次第だよ。そんなの。

棗は、''犬''であり決して恋人にはなれない。」


所詮愛玩動物でしかない。飽きたら終わり。

それが僕と棗の関係だ。




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