第23話最後の無茶③

 デデンデンデデン

 デデンデンデデン

 チャララ~ラ~ラ~♪(ターミネーターのテーマ)


 俺はアイウォークならぬ普通の松葉杖を、お世話になったT外科病院を訪ねる。


 今日は最後のリハビリを行うのだ。

 受付を済ませ、リハビリ室に向かう。


「こんにちは、調子はどうですか?」


 と、いつもお世話になっている理学療法士のWさんが出迎えてくれた。

 

「全く問題ありません!」

「あはは、それじゃ早速始めましょうか!」


 リハビリは順調に進み、一週間前には松葉杖無しで少し歩ける程度には回復した。

 この時はWさんはすごく驚いてたな。


「骨折さん、今日は自立歩行の練習です。前回は数メートル歩ける程度でしたが、今日もし問題なく歩けるなら…… 

 M先生に仕事に戻っていい許可をもらってきます」


 おぉ! これは頑張らねばだな!

 むふふ、それでは俺の回復度合いを見ていただくとするか。


 スクッ


 俺は立ち上がる。

 

 スタッ


 一歩前に踏み出す。


 ピリッ


 むう、まだ右足に僅かな違和感を感じるが……


 問題無い。


 更に一歩……


 更に一歩……


 スタッ スタッ スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタスタッ


「…………!? こ、骨折さん、ストップストップ!」


 Wさんは焦ったように俺を止める。

 そう、俺はもう歩けるのだ。

 ここまでにかかった期間、二ヶ月と少し。

 全治三ヶ月と言われた俺は、予定を前倒しして骨折から回復したのだ。


 冒頭でも書いたが、俺は自宅からT外科病院の道のりを松葉杖を持って歩いてきたのだ。

 まだ不安はあったので、時々松葉杖をついてはいたが、ほとんどそれの世話にはならなかったな。


「全く…… 骨折さん、すごいですよね。こんなに治りが早い患者さんは初めてですよ。何かしたんですか?」

「あはは、秘密です」


 さすがにめっちゃ食って治したとは言えないじゃない?

 それに回復のヒントがルパン三世とグラップラー刃牙なんてさ。


 こうして俺はこの日でT外科病院に来ることはなくなった。


 手術を担当してくれたM先生。

 リハビリを指導してくれたWさん。

 他多くの看護師の方々。

 本当にお世話になりました。


 俺はタクシーを拾い自宅に戻る。

 仕事は明日からだが、やらなくてはならないことがある。


 自宅に到着した俺はポケットからキーを取り出す。


 駐車場に置いてあるバイクの前に立つ。


 待たせたな、相棒。

 俺をこの10年、快適に通勤させてくれたPCX。

 休みの日以外は毎日乗っていた。

 すまんな。二ヶ月も放っておいて。


 バイクにキーを差し込む。

 バッテリー大丈夫かな?

 

 カチッ


 スピードメーターが跳ね上がる。

 バイクに跨がり、スターターを押し込む。


 ドルンッ ドドッドドッドドッドドッ


 良かった……

 何とも無いみたいだ。


 少し走るか。


 俺はアクセルを回し、久しぶりの運転を楽しむ。

 

 風が気持ちいい。

 もうすぐ冬が来るな。


 こうして11月初旬、俺は復活した。

 

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