第16話ガチ営業(足折れてるけど)①

「まだか……」

「座ってなさいよ。怪我人なんだから」


 俺は焦っていた。

 そんな俺を見て嫁子が声をかけてくる。

 何度も○mazonの配達状況を確認している。

 恐らくもうすぐ到着するはずだ。

 待ち望んだが。


 出勤時刻は刻一刻と迫っている。

 いや、俺は傷病休暇扱いなので、いつ営業所に行っても問題無いのだが、営業所には不安を抱えた従業員が待っているのだ。


 今日は欠員二名のまま、営業を行わなければならない。

 足を折って動けない俺の指示だけでカバーしきれる訳はない。

 だがアレがあれば……


 ブロロロッ キキィーッ


 むむ? この音は。

 二階の窓から外を見ると……


 来たー!

 宅配便の車だ!

 

「嫁子、受け取ってきて!」

「はーい」


 嫁子は土日休みで、俺は平日休みなのだ。

 こうして日曜の朝に顔を合わせるなんて、何年ぶりだろうか?

 

 因みに夫婦仲はいいぞ。

 最近エッチはしてないけど。


 嫁子は荷物を受け取り、二階に上がってくる。


「うわ、すごく重いね。何買ったの?」

「ふふふ…… これぞ秘密兵器…… 見て驚け!」


 バリバリッ


 俺は段ボールの包みを乱暴に開ける!

 嫁子が片付けが大変になるでしょと怒る!

 

 そして出てきたのは……!


「あ、あなた、これは……!?」

「すまん! 組み立てを手伝ってくれ!」


 俺はソレを組み立て、早速装着してみる。


 ジャキンッ


 パパパパパー パパパパー♪


 頭の中に鳴り響く【ロボコップ】のテーマ。

 装具を装着して俺は立ち上がった。

 そう、無しで、左足と右足に装備した装具のみで立ち上がったのだ。


 嫁子はクララが立った!みたいな感じで俺を見つめている。


「す、すごい! こんな装具があるのね……」

「俺も最近知ったんだけどね。これは…… I WALKっていうんだ」


【I WALK】それは膝下の骨折や怪我をして歩けない人のために開発された装具だ。

 この装具の利点は松葉杖を必要とせず、自立歩行を可能とする。

 自由に両手を使うことが出来る。

 立ち仕事の俺にぴったりの装具なのだ!

 俺がどんな装具を買ったのか、皆さんも是非ググってみて下さい。


 だが医療対象外なので、病院で置いてあるところは少ないらしい。

 M医師と後日話をする機会があったのだが、M医師もその存在は知っていたが、実際に見るのは初めてだったそうだ。


 日本であまりI WALKが見られないのには理由がある。これは海外では主流な装具だ。

 日本は医療費制度が充実しており、海外に比べて手厚い治療が受けられる。

 だが欧米をはじめとした国では医療費が馬鹿高い。気軽に入院なんぞしようものなら、目ん玉が飛び出るほど高い治療費を請求される。

 なので、骨折くらいなら、さっさと退院してI WALKをはめて仕事に戻るそうな。


 俺は簡単な歩行訓練だけして、仕事に行くことに!


「あなた、行くのね……」

「あぁ、行ってくるよ。嫁子、愛してるぞ……」


「私は普通ね」

「普通って何!? そこはお前も愛してるって言えよ!」


 と、いつもの会話をすませ、俺は外に出る。

 お迎えのタクシーを呼んだのだ。

 因みに足が治る間、タクシー通勤を認めてもらったのだ。

 でも交通費が支給されるのって二ヶ月後だから、しばらくお金はいっぱい持っておかないと……(クレジットカード嫌い!)


 あ、そうそう。

 ここでお礼を言っておかねば。

 ジャパンタクシー様、ありがとうございますm(_ _)m

 貴社のおかげで、快適に通勤することが出来ました。


 と、優良企業に感謝しつつタクシーに乗り込む!

 運転手さんも俺の装具を見てビックリしてた。


「ご、御乗車ありがとうございます。大丈夫ですか……?」

「ただの骨折ですから! 目的地はアプリの通りです!」


 俺は新しい足を手にいれ、地獄の営業に挑む。

 

 骨折してからまだ十日も経っていない。なのに本格的に仕事に復帰する。

 これが【かなり無茶したな】ということだ。

  


※検索してもヒットしないというご指摘をいただきました。

「アイウォーク ハンズフリー松葉杖」と検索すると、画像が見られるかと思います。

ご指摘いただき感謝いたしますm(_ _)m

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