第17話ガチ営業(骨折れてるけど)②

 ガチョンッ ガチョンッ


 タララーララー♪(ターミネーターのテーマ)


 気分はT-800である。もしくはロボコップだ。

 俺の太ももからは三連バーストの大型拳銃が出てきてもおかしくない。←おかしいだろ


 俺は第三の足であるアイウォークを装備し職場であるH営業所に向かう。


「…………!?」


 道行くカップルが俺を物珍しい目で見つめるのが分かる。

 むふふ、かっこいいだろ。

 40過ぎても俺は男の子だ。

 こういったギミックを装着することには憧れをいだいていた。


 気分よく歩いていると、営業所に到着。

 目の前には二階に続く階段が。

 俺は一歩を踏み出す!


 ガチョンッ ガチョンッ


 本当はそんな擬音は出ないけどね。

 カツカツとテンポ良く階段を登る。

 おぉ、スムーズに登れる。

 松葉杖とはえらい違いだ。


 事務所に向かうと、そこには肝っ玉Aさんと、K君がいた。


 俺は元気良く挨拶をする!


「おはようございます!」

「こ、骨折さん!? そ、その足は……!?」

「足が無い!?」


 二人は俺を見てビックリしてた。

 いやいや、二人は俺のギプス姿は知ってるはずだ。

 まぁ正面から見たら義足をつけてるように見えるから仕方ないが。


「心配ありません。足、ついてますよ!」


 と、クルリと体を反転させる。

 横から見たら、膝を折り曲げ装具に乗せてる折れた右足が見えるはずだ。


「その足で働くんですか!? 無茶ですって!」


 とK君は心配そうに俺に話しかける。


「大丈夫だ。問題無い」


 と、イーノック的な台詞を言いつつユニフォームに袖を通した。


 そして俺はAさんとK君に作業指示を出す。


「この足だ。両手は使えるようになったが、あまりお客さんの前には出られない。

 裏方で最大限のフォローはする。だから安心して働いてくれ!」

「「安心出来るか!」」


 と突っ込みを受けるが、営業時間は始まろうとしている。


 詳しいことは身バレしてしまうので、あまり書けないが何とか営業を行うことが出来た。

 アイウォークを装着したのはこの日が初めてなので、何度か転んでしまった。

 だがそれ以外は問題無かった。


 そして10時間後……


「ふー、疲れた」


 一日の業務を終える。

 疲れたが俺は満足していた。

 嬉しかった。働くことが出来たのだ。

 足は折れてても、お客さんのため、仲間のため、家族のために働けるのだ。

 こんな嬉しいことはない。


 満足感を堪能していると……


 ピロリン♪


 ラインの着信だ。

 スマホを取り出すと……


【骨折さん、今日は大丈夫でしたか!? 今から支援に向かいます!】


 変態Bさんからだ。

 相変わらず優しい人だな。変態だけど。

 Bさんも業務を終え、俺を心配してH営業所に向かおうとしているのだ。


 俺はBさんに返信する。


【大丈夫ですよー。業務は全部終わってますから。それと俺はもう働けるんで、逆に支援が必要なら言って下さい】

【マジすか!? すげぇ…… 骨折さんの仕事に対するストイックさはマジで気持ち悪いっす……】


 がはは。誉め言葉だな。

 こうして俺は戦慄の日曜日を乗りきった。

 そして俺は完治するまで、新しい足と共に営業に勤める日々が始まるのだ。

 一度本部から無茶するなって怒られたけどね。

 

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