第18話悩み
九月半ばになり、俺が足を折ってから一月が経とうとしている。
相変わらず暑く、地球温暖化って進んでるんだな~なんて思ってしまう。
そんな暑い中、俺はアイウォークを装着し、営業を楽しく行っていた。仕事は好きだからね。
そして一日の業務を終え、家に戻って装具を外す。
ソファーに座り、ゆっくりしていると……
プーンッ
むむ? この匂いは……
臭いのだ。体が臭い。
今まで嗅いだことのない香りが体から漂ってくる。
仕方ないことか……
そう、俺は一月風呂に入っていないのだ。
因みに頭は毎日洗面台で洗っていた。
体は濡れタオルでゴシゴシ拭いていたのだが、それでけでは匂い、汗の汚れは取りきれず、体に染み付いてしまった……ということだろう。
ヤバイ。
今の俺は濡れた犬くらい臭い。
もしくは牛乳を拭いた雑巾の臭さだ。
もし【全日本臭いサラリーマン選手権】があったとしたら、俺は間違いなく東京代表にノミネートされるだろう。
そんなアホなことを考えつつ、体をゴシゴシ擦って眠ることにした。
翌日……
この日は休みでT外科病院に通院する日だ。
タクシーで病院に向かい、待合室で新作小説の続きを書く。
そうこうしているうちに俺の名前が呼ばれた。
診察室に入ると、爽やかダンディーM医師が出迎えてくれる。
「骨折さん、おはようございます。今日も消毒からだねー」
俺はベッドにうつ伏せになる。
ギプスの踵部分をカパッと開けて、M医師はいつも通り消毒をしてくれた。
「うんうん、綺麗だねー。これならギプス取ってもいいかな。骨もくっつき始めてるしねー」
マジすか!?
一月もの間、俺を苦しめてきたギプスと今日でおさらば出来るの!?
「よーし、マルノコ持ってきてー」
「はーい」
マルノコ?
そういえばギプスって、どうやって外すんだろ?
看護士さんが持ってきたのは……
見たことがある。
丸い刃のついた電動ノコギリじゃん……
こわっ……
あんなのでギプス外すの!?
「あはは、大丈夫だよー。この刃は皮膚に触れても切れないから」
とは言うが、ちょっと不安……
M医師はそんな不安を余所に……
キュイーンッ ガガガガッ
おおうっ、ギプスが切られていくのを感じる。
数分もすると……
カパッ!
俺の足からギプスが外れた!
何この解放感!?
俺はベッドに座り直し、折れた右足を見つめる……
うぅ…… 左に比べて細くなってる。噂通りだな。
「落ちた筋肉はまた付けていかないとね。でもね、今日からシャワーなら入っていいよ」
なんて!?
「シ、シャワーを浴びれるんですか!?」
「うん、でも傷口を濡らさないように気を付けてね」
俺は検診を終え、急いで家に帰る!
ババッ
全裸になり、風呂に向かう!
その手には買い物で使うビニール袋を三枚持って!
俺の今の右足は足首からしたのみ包帯でぐるぐる巻きになっている状態だ。
水が入らないよう、しっかり覆ってから浴室に!
四つん這いでだけどね。
ご想像いただきたい。
40のおっさんが全裸で右足にビニールを巻いてハイハイをしながら風呂に向かう姿を。
滑稽である。
決して嫁と娘には見せられない姿だ。
俺は何とか浴室にたどり着き、シャワーを浴びる!!!!
シャワーッ シャワワーッ
ランラン ランララ ランランラン♪
何故かナウシカのテーマを口ずさみながらシャワーを浴びた。
体をゴシゴシ洗った。
頭も三回は洗っただろう……
なんだこの天国は!?
き、気持ちいいのぉ!?
こうして俺は一つやれることが増えた。
完治まで後二ヶ月……
まだ先は長いな……
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