第20話荷重トレーニング

 十月半ばになり、仕事とリハビリを順調にこなす。

 お客さんも俺の姿に慣れてきたようで、お子さんとかは俺を羨望の眼差しで見ているのが分かる。

 たまに「おじさん、その足かっこいいね!」なんて声をかけられるのだ。


 少年よ、君も足を折ったらアイウォークを装着するのだ。お薦めだぞ。

 まぁ、足なんぞ折らないにこしたことはないのだが。


 そしてとある日、俺はいつものT外科病院を訪れている。

 この日は記念すべき日なのだ。


 いつもの診察室に入ると……


「骨折さーん、具合どうかなー?」

 

 と爽やかにM医師が尋ねてくる。

 

「もう順調そのものですよ!」

「あはは、そうか。なら予定通り今日を抜いちゃおうねー」


 そう、俺の踵には金属製のピンが二本入っている。

 そのピンが折れた踵を固定している状態なのだ。


 本来はピンを抜くのは二週間後なのだが、俺は治りが早いらしく、治療を前倒しすることになった。


 ベッドにうつ伏せになると、包帯が裁断される。

 ちょっと怖い。

 今から骨に埋まっているピンを抜くんだからな。


 M医師はペンチを持って……


「ちょっと気持ち悪い感覚がするかもね。痛かったら言ってねー」


 グッ ズズズッ……


 うげっ!? 

 確かに気持ち悪い感覚!


 踵からズルズルとピンが抜かれていく……


 ズズズッ ズルリ……


「はーい、おしまいだよー。よく頑張ったね」


 はぁはぁ……

 歯を抜かれるより辛かったな……


 俺は止血、消毒を受けていると同時に次のリハビリの説明を受ける。


「うん、状態もいいから次は荷重トレーニングだね」

「荷重トレーニング?」


 荷重トレーニングとは……



 (=゚ω゚=)やぁ、こんにちは!

 骨折博士だよ!←誰だよ


 荷重トレーニングについて説明するね!

 例えば骨折君の体重が60キロと仮定しよう。

 通常ならば右足左足30キロずつの負荷がかかってることになるんだ!

 でも今の骨折君の右足では30キロの負荷に耐えられず、またぽっきりいってしまう可能性もある。

 だから最初は15キロの負荷、そして段々と負荷の量を増やしていって元の状態に戻していくわけさ!


 さぁ、僕の説明はお終いだ。

 もし君が骨折したときはいつでも僕を呼んでおくれよ!

 (=゚ω゚=)


 骨折博士、ありがとうございました。

 というわけで、俺はほぼ二ヶ月ぶりに大地に足をつけることになる。

 そして……


 最後の無茶が始まるのだ……

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