第4話 八月二十二日①

 痛い……

 俺は右足に痛みを感じつつ、目を覚ます。


 恐る恐る右足を見ると……

 

 あかん。これは病院に行かないと。

 よくグローブのような手、足という表現を聞くが、まさにその状態だった。


 やっぱりこれ、折れてるんじゃね?


 俺は立てなかったので、一人寝室を出て三階に住む義理の父に向け叫んだ。

 ちなみに嫁さんはすでに仕事に行っており、娘は塾。

 

「お義父さーん! 車お願いしまーす!」

「はいよー」


 三階から遠州弁バリバリの初老の男性と女性が降りてくる。

 二人とも久しぶりに会ったけど、白髪増えたなぁ……


「大丈夫かね? ここらへんだとK外科病院がいいんじゃないか?」

「あんた、そんなとこダメだら! T外科病院にしなさい!」


 と、二人は動けない俺を尻目にギャーギャーとどこの病院にするかを議論し始める。

 どっちでもいいよ、さっさと病院に行こうぜ。


「じゃあ、お義母さんのお勧めのT外科病院で」


 というわけで、俺はT外科病院に向かうことにした。

 お盆明けということもあり、病院内は患者さんでごった返していた。


 俺は一人では歩けないので、お義父さんに肩を貸してもらい、受付に行こうとするが……


「ちょっと大丈夫ですか!?」


 と声をかけてくれる人がいた。後にお世話になる理学療法士のWさんだった。


「酷いみたいですね。さぁ、車椅子に乗って!」

「あ、ありがとうございます……」


 俺は車椅子に乗って、受付を済ませる。

 お義父さんは一度家に戻るようだ。

 俺もそっちのほうが気楽でいい。


 ピロリン♪


 おや? ラインの通知音が。

 スマホを開いてみると……


【骨折君、大丈夫?】


 先輩のEさんだった。

 この人はすごくいい人で尊敬する先輩の一人だ。

 彼を心配させるわけにはいかん。

 俺はEさんに返信することに。


【昨日病院に行きましたが、折れてはないみたいです。たぶん捻挫だと。今近所の病院に来ています。結果が出たら返信しますね】


 と送信。

 あ、そうそう。

 仲良しであり、信頼をおけるBさんにも知らせておかないと。


 Bさんはめっちゃ仕事が出来る。年下だが、尊敬できる人物だ。

 だが一緒に仕事をしていると、必ずといっていいほど俺のお尻を触ってくる真性の変態だ。

 どエロでもある。ほぼ初対面だった時もいきなり乳首をつねられたのはいい思い出だ←どんな職場だよ


 俺はBさんに診断することを送信。既読はついていなかったので業務中だったのだろう。


 ラインの送信を終えたところで、俺は地下にあるレントゲン室に連れていかれた。

 エレベーターは広く、入院患者さんが移動式ベッドに乗って出てきた。

 へー、この病院は入院とかもしてるんだな。

 まぁ俺には関係無いけど。

 なんてことを思っていました。


 前日と同じく、レントゲンを終え診察室前で小説を読みつつ順番が来るのを待っていた。


『番号○○番でお待ちの骨折様。二番診察室にお入りください』


 お、呼ばれた。

 診察室に入ると、そこにはさわやかダンディ、M医師が出迎えてくれた。

 

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