第8話 馬車内

「……あの……まだですか?もうかれこれ三時間ぐらい馬車に乗ってると思うんですけど……」


「うん?そうね……あと一時間といったところかな」


「そ、そうですか……」


 ……か、会話が続かない……

 なんか、気まずい……

 この空気、どうにかならないものか……


「ねぇ、君」


「は、はいっ!!何でしょう!!」


「そ、そんなに驚かなくても……君を助けてくれた人のスキル、どんなスキルだったか分かる?」


「い、いや……ちょっと分かんないですね……」


 実はその人俺自身で、スキルは《英俊豪傑》、その中に《一騎当千》《我竜転生》《空間転移》《二刀聖剣》《自然治癒》を持ってまーす……なんて言えない……

 ……改めて考えても……うん。ガチチートだな……


「そう……」


「何だ?なにか引っかかるところでもあったのか?」


「いえ……倒し方にね……」


「倒し方?」


「ええ。四肢がもげていて殴られたあとがあった死体と、切り刻まれた死体……死体のあり方が全く違う……とても一人のスキルとは思えない……でも複数人いなかったんでしょ?だって見知らぬ人って言ってたものね。複数いたなら人達って言うはず。……そう考えるとその人のスキルが気になってね」


 いや鋭すぎい!!

 何この人!?怖っ!!

 探偵かよ!?

 もはや名探偵レベルだわ!!


「おお……流石、世代ナンバーワン剣士様はすごいねぇ」


 ……世代ナンバーワンの剣士?

 この人が?

 すごい人だったのか……

 確かに装備も他の人たちよりも強そうに見える。

 その格好はまるで女勇者そのものだ。


「からかわないで。私は自分が強いだなんて思ったことはないわ」


「そういえば、お前ヘイト学園の剣術講師を引き受けたんだって?なぜだ?」


「……魔王を倒すためよ……。今の状態だと、とても魔王討伐なんて叶わない……。だから少しでも次の世代のために力を尽くしたいの」


「へー……立派なこったな……」


「あ、あの……少しいいですか?」


「ええ。いいわよ。どうしたの?」


「その、ヘイト学園って誰でも入れるものなんですか?例えば……その……俺でも」


「もちろん。誰でも入れるわ。寮もあるしね」


「俺が紹介しようと思ってたのもそこだしな」


「かく言う私も、元々孤児でヘイト学園に拾われた身よ」


「そうだったんですか……」


 ……ヘイト学園……

 そこがどんなところなのかは分からないが、力をつけることができるのは確かだろう。

 俺自身が力をつけることで、チートスキルを使わずに済むようになる。

 それが理想の俺の姿だ。

 絶対になってみせる。

 俺自身が望む姿に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る