第21話 学園内散策の始まり

 玄関に着くと、そこにはすでに多くの生徒が集まっていた。

 見る限り、先生達はまだ来ていないらしい。

 良かった……遅刻せずに済んだみたいだ……


「どうやら、間に合ったみたいだね」


「そうみたいだな」


「あ、先生たちが来たよ。ギリギリだったね……」


「ホントだ……危なかったな……」


「ほら静かにしろ!!」


 ローズの兄が生徒の前に立ちそう言うと、さっきまで騒がしかったのが嘘のように静まり返った。

 その場にいる生徒全員が先生達の話に耳を傾ける。


「これから学園内を散策する時間だ。各々自由に動いていい。学園内の地図は各自に渡す。明日から自分達が通うことになる場所だ。隅々まで知り尽くしてこい。昼は食堂で食べるように。寮には日が沈む前には戻ってこい。以上だ。学園内の地図を受け取ってから解散!」


 前から地図が送られてくる。

 ……なるほど……だいぶ広いな……

 これは覚えるのに苦労しそうだ。

 取り敢えず、誰と行くか……

 一人ぼっちだけは避けたい。

 でも、知ってる人ローズとボーグンぐらいだしな……

 仕方ない……ローズに話しかけたらあの人がうるさくなりそうだし、ここはボーグンで我慢しよう。


「なぁボーグン。一緒に学園内をまわらないか?」


「ああ。構わないけど、一緒にまわらないといけない人がいるんだ。その人と一緒でもいいかな?」


「おう。別にいいぜ。で、誰なんだそいつ?探さないといけないから、どんなやつか教えてくれ」


「いや、その必要はないよ。もう見つけてるから。おーい!エザ!」


 ボーグンがエザと呼ぶと、ボーグンが向いている方から王女が小走りで俺達のところまで来た。

 ……え?一緒にまわらなきゃいけない人って……王女!?

 王女とまわらなきゃいけないって……ボーグンは一体何者なんだ!?


「どうしたのです?ボーグン。あら?あなたは……ミツルさん?」


「あ、ああ。」


「改めて、先程は申し訳ありませんでした。それで?何のようです?ボーグン」


「ミツル君も一緒にまわろうって話になってね。いいかな?」


「もちろんですわ!ローズさんも喜びますわ!」


「え!?ローズもいるのか!?」


「……駄目……?」


「うおっ!ローズいたのか!」


 びっくりした……ずっと王女、エザの後ろにいたのか……

 全然気付かなかった……


「私がいると……嫌なの……?」


「いや、嫌ってわけではないんだが……」


「なら、問題ない……早く行こう……」


「そうですわね!お腹もすきましたし、食堂に向かいましょう!自己紹介などもそこですればいいですわ!」


「うん。そうしようか」


「わ、分かった……」


 まずは食堂を目指すことが決まったので、四人で玄関へ向かう。

 その途中にはあのローズの兄が……

 嫌な予感しかしない……


「……ん?おい待て!ローズ!なんでこの男と一緒にいるんだ!?貴様!!ローズはやらんとあれほど言っただろう!!殺すぞ!!」


「いや、あの、これはですね……」


「お兄ちゃんうるさい。邪魔。あと、ミツルを殺そうとしないで」


「う、うるさい……邪魔……?だと……?」


 ローズのこの二言に、ローズの兄は放心状態になった。

 おいおい……なんかここまでいくと可哀想になってくるな……


「お、おい……お兄さん大丈夫か?なんか真っ白になってるけど……」


「放おっておいていい……それより、早く食堂行こう……」


「お、おう……」


 ……哀れなりローズの兄……強く生きて……

 そんな放心状態のローズの兄を尻目に、俺達四人は玄関を出て食堂に向かい歩きだした。

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