第17話 本音

「なんで、そのことを……?」


「……それは、私のスキルが《能力透視》だから……」


「《能力透視》?それは、どんなスキルなんだ?」


「……そのままの意味……相手のスキルが、どんなスキルなのかが分かるの……スキルの名前も、その詳細も、全部……」


 な、何だそのスキルは……

 俺にとっちゃ学園長のスキルより厄介なんだが……

 相手のスキルが事前に分かればその対策をすることができるし、弱点だって見えてくる。

 かなりの強スキル、パーティーで輝くスキルだと思う。


「それで……?なんでアテナさんより弱いと言えるの……?そんな無敵かのようなスキルで……なんで……?」


「そ、それは……」


「……もしかして同情してるの……?なら、やめて……!」


「ち、違う!」


「何が違うの……!?そんな……そんな恵まれた貴方に何が分かるの……!?」


 分かる……分かるんだよ……

 だって、俺は……


「……俺は、自分のスキルが怖い……」


「……え……?ど、どういうこと……?」


「……俺はこのスキルで、人狼を殺した……。このスキルを使って、俺が殺したんだ……」


「……うん……それは……当然……あいつらは、魔王の手先だから……」


「確かにそうかもしれない……実際、俺もあいつらがしていることが許せなかったから殺した……」


 そうだ……あの時、俺は殺した。

 明確な殺意を持って殺した。

 更にスキルを使ったあたりから、俺はあいつらを殺すということだけを考えていた。

 ただただ、邪魔をするものを排除しにいっているような……

 スキル使用中の俺は、俺が俺じゃないみたいだった。


「でも、怖いんだ……あいつを殺した俺の拳が……あいつらを切り刻んだあの剣が……あれらを使うとまた……そう考えると、俺自身のスキルが怖くて仕方がない……」


「……」


「俺は弱いんだ……スキルの問題じゃない……心の問題だ……。心が弱いんだ……あの光景は俺にとってはグロすぎた……。だから俺はアテナさんよりも弱い。そして自分の力で戦えるようになりたいと思った。だからここにいる。俺の強すぎるスキルを使わずに、戦えるようになりたくてここにいるんだ。だからこそ、不安がある。強いスキルなしでやっていけるのかという不安が」


 ……これが俺の本音だ……

 あの戦いから自分の中ですら逃げていた、気づかないふりをしていた。

 もちろん、面白くないという理由もある。

 事実、あの戦いの前はそうだったし、今もそう思っている。

 でも今のそれは建前でしかない。

 本当は怖かったんだ。

 チートスキルを使うという行為自体が。


「……そう……貴方も、不安なんだ……。ごめんなさい……あたっちゃって……」


「いや……俺も、本音を話せてスッキリした……だからお互い様だ」


「……うん」


「まぁ……お互い頑張ろうぜ。自分の望む姿になるために。お互いに助け合いながらさ」


「うん……!お互いに、頑張ろう……!一緒に、頑張ろう……!」


「……ってやべぇ!!寮に行かねえと!!」


「……あ……忘れてた……」


「急ぐぞ!ローズ!」


「うん……!ミツル……!」


「……でも俺は分からないから、案内してくれ!」


「……」

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