第16話 無口な彼女との出会い

 学園長の話が終わったので、アテナさんの所へ戻る。

 そこにはもう入学者とその親御さんの姿はなく、アテナさんだけが残っていた。


「すいません。待たせてしまいましたか?」


「いいえ。全然大丈夫よ。それより、もう皆寮に向かったわよ。保護者とはここでお別れ」


「……そうですか……」


「そんな悲しい顔しないで。また学園で会えるし、しばらく修行をつけてあげることになっているから」


「そ、そうなんですか!?助かります!」


「ええ。だから早く寮に行ってらしゃい」


「はい!じゃあまた!」


「ええ。またね」


 よっしゃあ!

 アテナさんから修行つけてもらえる!

 これで更に俺は強くなれるはずだ!

 っていうか早く寮に行かないと!

 遅れているんだから、急いで向かわないとな。

 ……っていうか寮ってどこだ……?

 クラス寮が固まっているといっても、そもそも寮の場所が分からないきゃ意味がない……

 ……あれ?もしかして詰んだ?

 い、いや!まだアテナさんに聞けば――

 ……すでにいねええええ!!

 ……終わった……どうすればいいんだ……

 ……うん?あの銀髪で髪の短い女の子……制服着ているからこの学園の生徒だな。

 よし。あの子に聞いてみよう。


「な、なぁ……君さ、寮の場所知らない?」


「……?……あ。推薦の人……」


「た、確かに俺は推薦入学者だけど……よく覚えてたな。他にも結構いたのに……」


「……だって……あのアテナ・シュウェットの推薦だったから……」


「そ、そうなのか……」


 やっぱり有名なんだな……アテナさんって……

 そんなアテナさんの推薦入学者だもんな……

 そりゃ覚えられるわけだ……


「……っていうかそんなことより!寮の場所知らないか!?」


「……知ってる……前見学した時に見たから……」


「おお!良かった!案内してほしいんだが、いいか?」


「……分かった……付いて来て……私もそろそろ行こうと思ってたし……」


「サンキュー!……えっと、名前なんて言うんだ?」


「……ローズ……ローズ・ラウト……」


「ローズか……俺はミツル・カツラギ。よろしくな」


「……うん……よろしく……ミツル……じゃあ、行くよ……」


「お、おう」


 ローズがあるき始めたので、俺も慌てて付いて行く。

 しかし、無口なやつだな……

 まぁ、寮の場所がしれて良かった……


「……着いたよ……」


「……結構近かったな……」


 いや、ホントに近かった……

 迷ってた俺が馬鹿に見えるレベルで近かった。


「じゃあ、ここでお別れだな。ここまでありがとな」


「?……なんで?……私と同じクラスだから、寮まで一緒だと思うけど……」


「いやなんで同じクラスって分かるんだよ?」


「……だって推薦入学者は、全員同じSクラスだもん……」


「そ、そうなのか……ってことはお前も推薦入学者なのか?」


「……お兄ちゃんが卒業生の冒険者だから、その推薦……」


「へー……兄が冒険者なのか……」


「……お兄ちゃんはすごい……でも、私はすごくない……だから、不安……」


 ……そうか……ローズも……嫌なのか……

 比べられるのが嫌で、不安で、しかたないんだ……


「……俺もだ……俺もアテナさんとは比べ物にならないほど弱い……」


「……嘘……スキルはそんなにすごいのに……?それでもアテナさんより弱いの……?」


「……え?」


 なんで……なんで、ローズが……

 俺のチートスキルの存在を知っているんだ……?

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