第35話 質問の終わり
「え、ええっと……ミツルを推薦した理由?を聞きたいの?」
「ええ。その通りです。この者がアテナ先生に推薦されるような者に見えないので」
「そ、そうね……。えっと、それは……」
アテナさんは少し吃りながら、俺をチラチラと見てくる。
……なんで見てくるんですかね?
「し、強いて言うなら……境遇が似ていたから、かしら」
「……それだけ、ですか……?」
「え、ええ。あとは学園長がそうしたほうがいいとおっしゃったから……」
「……学園長が……。そうですか。分かりました。ありがとうございます」
……どうやらアテナさんの答えに納得してくれたようだ。
いやはや良かった良かった。
もしこの後俺に矛先が向いたらどうしようかとヒヤヒヤしてたんだ。
……いやマジで助かった。
もし俺に来られても、なにも答えられないからな。
コルトが質問を終え自分の席に座ったことにより、計三人の質問が全て終了した。
すると、出席をとっていたジェラー先生が、出席簿らしきものをパタリと閉じて、俺たちに向かって口を開いた。
「……よし。出席も席も問題ない。では、時間割を黒板に張っておく。まず、一時間目は武器選びだ。……そして、一時間目が始まるまで時間がない。すぐに武器庫に移動する。時間割は教室に帰ってきてからにしてくれ。アテナ先生。生徒たちの先導の方、よろしくお願いします」
「ええ。じゃあみんな、着いてきて」
アテナさんがそう言うと、皆各々返事をし、アテナさんに続く。
じゃあまあ、俺も行きますか。
「ローズ、エザ。一緒に行こうぜ」
「……ん。行く」
「ええ。もちろん構いませんわ」
「よし。じゃあ行こうぜ」
「待て待て待って。どうして僕を誘ってくれないんだい?ミツル」
「……ああ。なんだ、いたのかボーグン」
ナチュラルにボーグンを誘わない俺。
だってこいつ面倒くさいんだもん……。
なら、放っといたほうがいいよね?
「ひどくないかい!?まあ、勝手に一緒に行くから良いけどね」
「マジでいい性格してるよなお前……」
放っといても駄目でした……。
いや分かってたよ?分かってたけどさ。
「では改めて、行きましょうか」
エザがそう言って歩き始めたので、俺たちはその後に付いて歩き始めた。
しかし、歩き始めたのも束の間、俺たちの前に一人の男子生徒が立ちはだかった。
その生徒は、アテナさんに最後の質問をしていた、コルトだった。
……え?なに?なんで俺たちの道塞いでるの?邪魔で先に進めないんですけど。
「ミツル・カツラギ」
……俺?俺になにか用でもあるんですか?ねえ?
ないでしょ?ないよね?……ないと言ってくれ……。
「僕は君のような者がSクラスにいることを認めない。Sクラスは一級冒険者に認められた、実力者でなければいけないんだ。なにより、君のような者があのアテナ・シュウェットに推薦されたという事実が我慢ならない。すぐに化けの皮を剥いでやるから、覚悟しておくんだな」
そう言って、コルトは先に武器庫に向かった。
……まぁ、薄々分かってたけどさ……。分かってたけど……。
……結局、矛先俺に来んのかよぉ!勘弁してくれ!
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