第2話 自称神
「っ……ここは……?」
気付いたら、言葉で表せない奇妙な空間が目の前に広がっていた。
そして、俺は自分がここに来た経緯を知らない。
あの時、路地裏で意識を失ったのは覚えている。
それからどうなってこんな所に来たんだ?
「疑問が尽きないみたいだね。葛城充君」
「だ、誰だ……?お前は……?」
「ああ、まずは自己紹介をしないとね。僕は……そういえば名前を言っちゃいけなかったっけ……。えーっとね、君の世界で言うところの神だよ。新人の」
「は……?神……?いやいや……冗談でしょ?神って……ラノベの世界とかで出てくるやつでしょ?」
「そうそう。その神だよ。いやー、良かったよ。君がラノベ好きで」
い、意味がわからない……
急に連れてこられたってことか?
ならまず、警察に連絡しないと!
……あれ?ない……ないぞ!俺のスマホがない!
というかスマホどころか俺の所持品が全くないんだが!?
どうしてこんなことになってるんだ!?
「じゃあまず、今のきみの状態を簡潔に説明するね。君、死んじゃった」
「……え……?」
う、嘘だろ……
そんなこと……
「えーっと、死因は急性心筋梗塞による心臓突然死……らしいね」
「心筋梗塞……」
保健体育の授業で聞いたことがある……
前兆が起きない場合も多く、一刻も早い治療と応急処置が必要だって……
それがまさか……俺に起こったってことか……?
「でも安心して!君は選ばれたんだよ!通常の輪廻転生じゃなくて――」
「安心なんてできるかよ!!」
「っ!!……そっか。そうだよね……ごめんね」
そうか……本当に死んだんだ……俺……
父さん……母さん……ごめん……
そして、ありがとう……
「……君のお葬式……見るかい……?規定があるから長くは見せられないけど……君のお父さんとお母さんの姿ぐらいは見せられると思うよ……?」
「っ……いいのか……?」
「うん。もちろん」
神は懐から水晶玉を取り出し、この空間に映像を映し出した。
そこに映っていたのは、棺の中に入っている俺の亡骸を見て、号泣している姿だった。
……俺は、こんなにも、二人に愛されていたのか……
「うっ……うう……」
「……もう、終わっちゃったね……」
「……いや……もう十分だよ……ありがとう……」
俺を思ってくれる二人の姿が見れただけでも良かった……
言葉を残せなかったのは残念だけど……
「……落ち着いた?」
「ああ……で……?俺はこれからどうなるんだ……?」
「うん。普通なら記憶を消して魂だけを肉体に宿して、新たな生命を誕生させるんだけど、君はさっきも言った通り選ばれたんだ」
「え?何に?」
「なんと!!記憶と外見そのままで、別の世界に転生する人にだよ!!」
「え?そ、それってつまり……異世界転生!?」
「そうだよ。混乱している世界に転生してもらって、その世界を治めてほしい。あと、その世界にはなぜか魔王っていう存在がいてね……。その魔王を倒してほしいんだ。つまり君には、勇者になってもらいたい」
俺が異世界転生してその世界を治める……?
何だそれ……めっちゃ楽しそうじゃん!
自分がラノベの主人公になったみたいだ!
でも、魔王か……ラノベみたいにうまくはいかないだろうな……
「あ、怖いんでしょ?当然だよね。でも大丈夫!その世界では一人一つのスキルを持ってるんだ。そして僕はそのスキルを与える権限を持っている。この意味、ラノベ好きの君なら分かるよね?」
それはつまり……チートスキルの付与ってことか……
え〜……いらないなぁ……
異世界転生チートものは飽きたんだよな……
よし。ここは思い切って断ろう。
理由は異世界転生チートものは飽きたから、別の感じの異世界転生をしたい。
「あのー、俺ちょっとチートスキルはいらないかなぁって……」
「え?もう付与しちゃってるよ?」
「は!?なんでだよ!?」
「だって、ないとこの先困るよ。魔王も多分めっちゃ強いよ?なかったら倒せないでしょ?」
最悪だ……
まさか自分がチートになってしまうとは……
これがラノベなら、もう読むのやめてるわ……
「あ、それとね、向こうの世界では名前はカタカナ、スキルは漢字四文字で表されているんだ。公用語も日本語だしあんまり困らないと思うよ」
「ち、ちょっと待ってくれ!なんで公用語が日本語なんだ!?」
「えーっと……僕も詳しくは知らないんだけど……その世界ができたばかりの時、その世界を発展させるために転生した人が日本人だったらしくて……それで公用語が日本語になったみたい……名前がカタカナなのは多分その人の趣味だって……」
しゅ、趣味って……
もしかしてその人は厨二病とかだったのだろうか……
「な、なぁ、向こうの世界っていつできたんだ?」
「え?できてから向こうの時間では千年ぐらい経ってるね。でも、向こうの世界と君が元いた世界では時間の流れが違うからな……。多分、君の世界で十年前ぐらいに死んだ人の誰かが向こうの世界に転生した人だと思う。まぁ、もう生きてないとは思うけどね。」
……もしかしてその人、ラノベオタクだったのか?
ラノベで異世界転生・転移や召喚が爆発的に増えた時期が西暦二千十年ぐらいだ。
今の年代から逆算すると丁度その時期あたりになる。
まぁ、だから何なんだって話だけど。
「もう大丈夫かな?そろそろ時間だから転生させるよ?」
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