第30話 夕食後の会話


「皆手を合わせて」


「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」


 全員で手を合わせ、声を合わせて言う。

 言い終わると、クラスの皆が次々と立ち上がり、自分達の部屋に戻っていく。

 いやー、食べた食べた。大満足だ。どれもめちゃくちゃ美味かったし、料理に文句はないな。


「さて、じゃあ俺達も部屋に戻ろうぜ」


 俺はそう言ってローズから貸してもらった『弱小能力者である私の恋が実ることは、絶対にないはずだった。』を手に取り、椅子から立ち上がる。


「そうだね。戻ろうか」


「私達も戻りましょうか。ローズさん」


「うん……」


「あ!待ってミツル!ちょっと話があるから残ってくれる?」


 俺達が部屋に戻ろうとするとアテナさんが俺を引き止めてきた。

 一体何の用だろうか?俺、怒られるようなことはしてないと思うけど……


「わ、分かりました。ボーグン。先に帰っててくれ」


「オッケー」


「では、ミツルさん。また明日に」


「また明日……ミツル……」


 ローズ達が大広間から出て行き、大広間から俺とアテナさん以外の人がいなくなった。

 ……なんかちょっとドキドキするな……


「……それで、何の用でしょうか?」


「修行の件なんだけど……皆に気付かれないように早朝からやるから、早く寝て、早く起きてね」


「ああ!修行の件でしたか!分かりました。何時に、どこに集合ですか?」


「朝の五時に、寮の扉の前に集合よ。分かった?」


「了解です」


「じゃあ、また明日ね。もう戻っていいよ」


「はい。また明日」


 アテナさんに別れを告げ、大広間から出る。

 なんだ。話は修行についてのことだったのか。てっきり俺がなにかやらかしたかと思ったぜ。

 ……しかし、五時起きか……。だいぶ早いな……起きられる気がしない。

 今日からは早めに寝ないとな。

 そんなことを考えながら歩いていると、部屋の前に着いたので扉を開ける。


「おかえり。何の話をしてきたの?」


「そんな大したことない話だったよ。それより、俺は早めに寝たいから風呂に行きたいんだが」


「分かったよ。じゃあ僕も行こうかな」


「お!助かるわ!浴場ってどこにあるんだ?」


「一階だよ。案内するから着いてきて。あ、寝間着忘れないでね。タオルとかは全部向こうに用意されてるけど、寝間着は持っていかないといけないから」


「了解。すぐ準備するわ」


『弱小能力者である私の恋が実ることは、絶対にないはずだった。』を自分の机の上に置いた後、クローゼットから寝間着を取り出す。

 ボーグンはすでに寝間着を手に持っていて、俺を待ってくれていた。


「すまんボーグン。待たせたな」


「気にしないで。大浴場に行こうか」


「おう」


 こうして俺とボーグンは部屋を出て、ボーグンの案内で大浴場に向かって歩き出した。

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