第29話 入学式の夕食

 ……なるほど。つまりこの世界の歴史を要訳するとこんな感じか。


《➀転生者のマコトさんがこのサトー王国を創り、人間を統治した》


《➁マコトさんによって様々な文化が作られる。この文化は現代日本をモデルにしているのだろう》


《➂そのマコトさんが亡くなった後、魔族などの人ならざる者を統治する存在、つまり魔王が現れる》


《➃そして、その時からサトー王国は冒険者ギルドを設立し、魔王討伐に動き出すが今まで全くうまくいってなく、進展なし》


 できれば、魔王のスキルの情報とか欲しかったんだが……全くなかったな。

 でも、この時代まで生きているなら、不死身とかそのあたりだろ。

 ……あれ?勝ち目なくね?

 いや、あの自称神が与えたチートスキルで勝ってきてって言っていたのをみると、死ぬことはあるということか?なら寿命を奪うとか?それとも、そもそも長生きする種族とかか?魔王が代替わりしている可能性も……駄目だ。考えだしたらきりがない。


「ミツル君?そんな真剣な顔してどうしたの?お菓子もっと欲しかったの?」


「いや違うけど……まぁまだお菓子あるなら貰おうかな」


 貰ったお菓子、めっちゃ美味かったし、もっと食べたいかと聞かれれば食べたいしな。


「え?駄目だよ普通に。もう夕食の時間だよ?」


「は!?マジで!?」


「うん。気付いてなかったんだ」


「で?夕食はどこで食べるんだ?食堂か?」


「いや、夕食と朝食は寮の一階にある大広間で食べるんだよ。料理は寮母さん達が作ってくれて、献立はその日の朝に発表されるんだ。今日は入学式だからバイキングらしいよ。君とローズさんが来る前に、先生達が言ってたし」


「……集合時間は?」


「……後十分ぐらいかな……」


「よし急ぐぞ!走れボーグン!」


「うん!」


 俺とボーグンは部屋を飛び出て階段を駆け下り、一階まで全速力で向かう。

 一階に着いたら、ボーグンの案内で大広間まで走り、扉が開いている大広間の中に駆け込む。

 そこには、多くの生徒がすでに席に座っていた。


「あ!やっと来ましたか!こちらですわ二人とも!」


 エザが俺達に向けて手を振っている。

 どうやら四人席を確保してくれていたようだ。


「おう。席取っておいてくれたのか。ありがとな」


「いえいえ。なんでも、ローズさんがミツルさんに渡したい物があるらしいので。そのために席をとって待っていただけですわ」


「渡したいもの?……ああ!小説か!」


「そう……。約束通り持ってきた……」


「おお!サンキュー!部屋に持ち帰ってから読むわ。読み終わったら返すってことでいいか?」


「うん……。それでいい……」


 ふーん……『弱小能力者である私の恋が実ることは、絶対にないはずだった。』か。

 どんなストーリーなんだろうか。読むのが楽しみだ。

『弱小能力者である私の恋が実ることは、絶対にないはずだった。』を机の上に置き、周りを見渡す。

 料理の名札を見る限り、用意されいる料理はやっぱり知っているものが多いな。

 ただ、やっぱり少し見た目が違ったりしているような気がする……。

 まぁ、地球と同じような動物がいるとは限らないもんな。

 そこら編は試行錯誤してたどり着いたのだろう。

 とにかく、食べるのが楽しみだ。


「はーい。皆静かにしてねー」


 アテナさんが手を叩いて、皆の注目を集める。

 全員がアテナさんの方を向いたら、アテナさんが口を開いた。


「今ここにある料理は全部寮母さん達が作ってくれた料理だからね。その人に感謝して。そして、食べさせてもらう生き物にも感謝を忘れずにね。じゃあ、皆手を合わせて」


 アテナさんのその言葉によって、クラスの皆が一斉に手を合わせる。

 俺も急いで手を合わせた。

 そして全員で声を揃えて言う。


「「「「「いただきます!」」」」」


 いただきますと言い終わったら、皆が次々と動き出す。

 さて、俺も取りに行くか。

 まずは何から食べようか……。色々あるし迷うな……。

 よし。せっかくだし、気になった料理を片っ端から取っていこう。

 さあ!どんどん取ってどんどん食べるぞ〜!

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