第6話 初陣、そして決意
……とは言ったものの……どうするべきか……
まだスキルを全部試していないしな……
試したスキルもあるけど、ここで《我竜転生》を使うと大きくなりすぎて戦いにくい。
人狼共を蹴散らす前に集落の家々を蹴散らしてしまう。
ここは試してないスキルで戦うしかないな……
俺の予想だと、というか言葉通りの意味なら、《一騎当千》は身体能力を上げて、《二刀聖剣》は二本の聖剣を扱えるようになるのだろう。
……よし、まずは《一騎当千》からだ。
あくまで俺の予想の話だが、身体能力がどれくらい上がるのか知りたい。
いざとなれば《空間転移》で離れればいい。
……《一騎当千》……使用。
……お?おおお?おおおお!な、なんかめっちゃ体が軽くなった気がする!
凄まじい高揚感が全身を駆り立てる。
今なら何だってできるぞ!!多分!!
「ヒャハハハ!!死ネええええ!!」
人間より一回りも二回りも巨大から大ぶりで振り上げられた鉤爪は、俺が見上げるほどの高さにある。
だが、遅すぎる……!
「お前が死ぬんだよおおおお!!」
「なっ!はや――」
体を腰で九十度折りたたみ、奴の懐に潜り込む。
自分が手ぶらであることなど念頭にない。
ただ、目の前のコイツラを、殺す。
「ぶっっっっ飛べええええ!!」
俺が一瞬前の人狼のように肩を引き絞るように振り、全力で放った拳は、対象のみぞおちを信じられないほどに抉った。
「グアアアア!!」
殴られた人狼の体はみぞおちから血を吹き出し、くの字に折り曲がった体勢のままで広場を突っ切って広場外縁部の家の石壁に衝突、さらにそれでも人狼は飛び続け、その先の家三軒分を突き破り、ようやく止まった。
「な……キ、キサマ!!何をした!!」
……俺もさっぱり分かりません……
いやどう考えても吹っ飛びすぎじゃね?
瓦礫がものすごい積み上がってるし、絶対死んだよね、あれ。
っていうかグロ!!
四肢が飛び散ってやがる!!
オェ……吐き気が……ウップ……
「き、貴様アア、オレの、オレの弟を、よくもやってくれたなぁ!!」
「待て!!迂闊に近づくな!!あれは恐らく奴のスキルだ!!《身体強化》や《一点集中》などの身体能力を上げるタイプかインパクトを強くするようなスキルなのだろう!!しかし、強すぎるぞ!!これまで何人もの強い人間と戦ってきたがここまでのスキルは見たこともないし聞いたこともない!!」
……ああ……やっぱりチートだったんだ……
しかし今は関係ない。
こいつらを倒さないといけない。
チートスキルがなければ俺は弱い。
自分の力だけで戦いたいのは山々だが、今の俺にはそんな力はない。
……この戦いが終わったら、自分を鍛えられるところを探そう。
そうじゃないとチートスキルに頼りっぱなしになる。
心のどこか奥底で理性を保った自分が言う。
「……同時に攻めるぞ……少しでもスキができたら逃すな」
「……分かってんよ……一人で戦っても敵わねぇことぐらい……」
……一気に来るつもりか……なら、《二刀聖剣》が適任か。
正直扱えるかどうか分からないが、《一騎当千》使用中の今なら使える気がする。
そもそも、二つのスキルを同時に使えるのかを試すのも兼ねて……
《二刀聖剣》使用……!
「おお!出た出た!剣二本!」
いかにも聖剣ですって感じの剣だな、キンキラしてて……
でもこれで、二つのスキルを同時に使えることが分かった。
……ことごとくチートだな……マジで。
これ以上のスキル同時使用は可能なのだろうか。
……まぁ、それはいつか試すとして……
今はこれでなんとかなりそうだ。
「な!?何だその剣は!?物質を、作り出したというのか!?」
「んなもん分かるわけねぇだろうが!あいつのスキルはあいつにしか分かんねぇ!たとえ相手が誰であろうと、戦うしかねぇんだよ!俺達は!」
「……そうだ……その通りだ。我々は戦うしかない……進み続ける他ないのだ!あの方が!私達が!望む世界のために!」
「それによぉ!この村の住人ぐらい殺さねぇと楽しくねぇもんなぁ!」
「フハハ!そうだな!それが我々にとって、この世界での唯一の娯楽なのだからな!」
……この世界での唯一の娯楽……?
……俺はこの世界に転生してきたばかりで、この世界の状況なんて、あの自称神が言ってたこと以外は知らない。
それでも。たとえどんな世界だったとしても。
人を楽しんで殺すという行為は許されないんじゃないのか!?
お前らが何を望み、何を目指しているのかは俺には分からない。
でも俺は、あの光景を見た瞬間、許されないと思ったんだ。
だから、俺はお前らを止める。
お前らに、どんな理由があったとしても!
「行くぞオラァ!殺れるもんなら殺ってみろよぉ!」
「我等が望む世界のために!我等が求める娯楽のために!貴様を殺す!」
「来い!返り討ちにしてやる!」
思い出せ!
あの伝説的ラノベ主人公の二刀流を!
今の俺ならできる!……気がする!
「うおおおお!!スター◯ースト・スト◯ーム!!」
「ば、馬鹿な!このような剣技、見たことがない!」
「スゲェ……スゲェスゲェ!もっと戦おう!殺し合おう!」
「もう!終わりだああああ!!」
最後の一太刀が入る。
相手はもう……確実に死んでいる……。
スキルを両方とも解除して死んだ奴らを見る。
……俺が、殺したんだ……たとえそいつらが許されないことをしていたとしても、この事実は変わらない。
……これから、背負って生きていこう……
そして、もう一つ言わなければいけないことがある。
……パクってすいませんでした!調子乗りました!許してください!何でもしますから!
……まぁ、それは置いておいて、この戦いで確信したことがいくつかある。
まず初めに、戦ったこいつらを従えているものがいるということ。
そいつが恐らく魔王だろう。
次に、魔王が何かを目標にしていること。
俺はこれを阻止しなきゃいけない。
最後に、チートはやっぱりチートだったこと。
このまま進んでも、面白くないのは目に見えている。
それにあんなグロいの、もう二度と見たくない。
でも、魔王も倒さないといけない。
だから俺は決めた。
俺はチートスキルを使わずに魔王を倒す!
自分を鍛え上げて、自分の力だけで勝つ!
もう二度と!チートスキルは使わない!
今この場に、誓をたてる!
「俺は!!絶対に!!チートスキルを使わねええええ!!」
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