苦悩1(中年)
限前:……俺もまだまだ、だな。医者の俺が患者に気を使わせてんじゃザマねぇよ………
(深いため息を吐くと険しい顔で棒菓子を噛み砕いた)
キモナシ:……どうしたの、零?珍しい顔しちゃってさ。
限前:………………ん?なんだ、今の聞いてたのかよ。ちょっと、な…
(零は哀しそうな楓の顔を思い浮かべるとまたため息を吐いた)
そもそも珍しい顔ってなんだよ。俺だって人並みに悩むこと位あらぁ。
キモナシ:まあまあそう怒らないの。"言葉のあや"ってやつさ。
それよりさ、良かったら聞かせてよ。自殺未遂したあの時くらい、険しい表情<かお>してるからさ。
……経過観察の一環、だよ。
限前:……それ、"良ければ"じゃなくて"必ず"聞かせて…の言い方だろうが。
(零は呆れた顔になるが、意を決して話し始めた)
どちらにせよ、誰かに意見を聞きたかったんだ。笑わずに付き合え。
キモナシ:うん、僕で参考になるなら喜んで。君が笑われるようなしょーもない事で悩む子じゃないのは、よく知ってるから。
限前:俺が悩んでんのは……黒之主と楓の事だ。最近黒之主の俺に対する風当たりが強くてな、楓に気を使わせてんだよ。
キモナシ:……ふーん?おっかしいな、前って別段仲は悪くなかったよね。
限前:ああ。だが……今の扱いそのものは別に理不尽だと思わねぇよ?年頃の妹分が心配で距離を置かせようとしてるのはよく分かる。
前からその感じはあったから、警戒されてるんだろうな………と割り切ってる。だけど、楓の具合が悪かったときな……俺は診察を躊躇った。患者が動けなくて苦しんでるってのに、
黒之主がどんな反応するかが気にかかって……手を出せなかった。
結局俺は日向ん所に連れてっただけで何もしなかった。
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