苦悩2(中年)

キモナシ:それってさ、黒之主君は誰に言うの?


限前:…………俺と、楓。両方だから悩んでんだ。俺だけなら聞き流せるが………


不可抗力で頼った楓まで責められるのは俺が赦せねぇ…そう思ったら……


キモナシ:手を出せなかった、と。


限前:あの後事の顛末を聞いた楓に言われたよ。


"限前さんは悪くないです!黒之主が気にしすぎなんですよ…。あたしは限前さんの事、疑ってませんから…避けなくていいんです!"


…………ってな。思わず言いそうになった言葉を飲み込んだぜ。


"馬鹿野郎、患者が医者に気を使わなくていいんだよ。"


お門違いだと分かってる。むしろ疑われる成りをしてる俺が悪いんだからな。


キモナシ:…………うーん…"疑われる成りをしてる"、か。本当にそれだけかな。


限前:どういう事だ?何か引っ掛かる点でもあんのか……


キモナシ:あるよ。黒之主君、この前人斬りイド君と大捕物やってたんだけどさ………


限前:…………あ。あの人斬りがこっぴどく刺されてたっけな、俺も処置にあたってたから覚えてる。


んで、それがどういう関わりがありそうなんだ?


キモナシ:どうもさ、まだ黒之主君の物語は現在も続いてるらしいんだ。その話の流れで昔の楓ちゃんがイド君に想いを寄せたのに嫉妬してるって。


限前:それ、誰情報なんだよ………(本人がわざわざ言うわけ……ねーな)


キモナシ:むふふ……話のソースはバカ弟子なんだよね。あの時側で見てたから、これ以上ない証人だと思わないかい?


限前:別に疑うつもりはねーが…ある意味災難だったな、日向も。(安っぽい昼ドラ並の泥沼展開…だな)


(零は修羅場に立ち会ったであろう日向の様子を想像すると眉をひそめた)


キモナシ:……で、ここで本題。黒之主君はそれ以来…楓ちゃんに近づく悪い虫を遠ざけようとしてるんだって。


もう力は黒之主君が継いでるから昔程は他人に狙われなくなったんだけどね、やっぱり不安そうだってさ。


ほら、楓ちゃんって気さくというか…こざっぱりした性格だろう?無意識に人を側に集める感じじゃん。


限前:……確かに。初対面の俺でも雑談が捗ったからなぁ…


キモナシ:だからさ、多分嫉妬されてるんだよ。あの子もまあまあ口下手というか…人付き合いが苦手というか。


限前:せめて俺だけならなぁ。どうにか………うーん…


キモナシ:ちなみにさ、黒之主君と直接話そうと思ってるなら逆効果かもね。


限前:……ダメか、やっぱり。


キモナシ:とりあえずもう少し様子を見て考えてもいいんじゃない?さっきも言ったけど、まだ物語が続いてる以上…結論を急ぐのは良くないと思うのよ。


限前:そう、か。………ありがとよ、キモナシ。避けられてる手掛かりが分かって良かった。


キモナシ:いいのいいの。困ったときはお互い様、さ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る