大事なこと(青年)
限前:………あの時と、同じ質問を返します。卯月さん、手近な病院で治療を受けるか…ダメなら俺に引き受けさせてください!
もう、あの頃の俺とは違う。医師免許も取りましたし…
俺は、俺を救ってくれた卯月さんを救いたいんです!
卯月:ふふ。今はまだ、貴方に頼むつもりはありませんよ、零君。貴方には……まだ足りないものが多くある。
限前:足りない……もの………?
卯月:医者としての自覚、そして経験を積みなさい。そして私に示しなさい…あの時の自分とは決別したと。それまで、私は貴方の患者になるつもりはありませんよ。
限前:医者としての自覚…。今の俺には、足りていないんですか?
卯月:そうですね…自分自身の体調管理もその1つ。激務にかまけて体調を崩しているようでは……医者、失格ですよ?
限前:(………つまり、俺が卯月さんの所に足しげく通うようではお話にならないと……そう言うことか?)
卯月:………おっと、あまりヒントを与えすぎてはいけませんね。後は私が過去に話した言葉を…よく思い返してみなさい。
自ずと、答えは導かれるはずです。
限前:………分かり、ました。今日はありがとうございました、失礼します。
(限前は部屋を後にし、1人卯月だけが残された)
卯月:………さて。零君が何を私に示してくれるのか…楽しみですね。
私は敢えて体調管理について触れました。本当に変わることが出来たのか、過去の自分と決別出来たのか、見せてもらいますよ。
(その頃、1人になった限前は…)
限前:そりゃ、そうか。病弱な医者に自分の命を預けようなんて…思わないよな。
そろそろ………良いだろ。"自己診断"できるようになったんだ、これ以上おんぶに抱っこされてたら…格好つかないな。
(それから半年が経過し、限前は卯月の下を訪れる事は無くなった。些細な風邪は自分で診断して、抱え込むことが多くなった)
……くっ…!咳し過ぎて脇がつりそうだ…!
(気を抜くと激しく咳き込む零。痛そうに脇腹をさすっている)
最近、滅法調子が良くないな…。診断は…間違いない筈なのに…何故だ?
(とうとう運命の日が訪れた。夜勤の当直中、限前は倒れてしまったのだ。キモナシからその報せを受けた卯月は、寝込んでいる限前の病室を訪れた)
卯月:………これが、貴方の導きだした結論ですか。やはり…何も変わってはいないようですね。
起きたら、話があります。"主治医"として……!
(病室で目を覚ました限前は、椅子に座ってうたた寝をしている卯月に気が付いた。ただ、それが何を意味するのか…その時点では全く理解していなかった)
限前:(………休憩に入った後の記憶がない。いつ仮眠したんだろう……?卯月さんが居るってことはそもそもここ、仮眠室じゃないよな…)
(零が身体を起こそうとした時、患者に装着されるべき生体監視機器が自分の身体に繋がれていることを知る。ようやく、自分が当直中に倒れてしまった事実に気が付いたのだ)
お……俺は、間違えたのか………?診断も、処置も…完璧だった筈なのに…。
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