生と死を司る者

思考実験:鶏と卵(青年)

(二人は食事をとりながら討論している)

日向:これ、有名な思考実験なんですが…

限前:鶏が先か、卵が先か…？一体どういう意味なんですか。

日向:卵を産むことができる鶏が先にこの世に存在したのか、鶏に育つ卵が先にこの世に存在したのか……だそうです。

限前:……別にどっちが先でも良いんじゃないんですか？

日向:私はこの質問、さっき説明した額面通りには読まなかったんですよね。そして是非とも零君に伺いたかったんですよ。

限前:じゃあ、どんな読み方を？

日向:鶏は…これから死にゆく運命です。それに対して卵は…これからを生きる未来がある。これを、貴方なりの解釈で教えて欲しかったんです。生と死を見つめる今の貴方に。

限前:……………自殺未遂をしたあの時、俺はどちらかと言えば鶏でした。

絶望で全てを投げ出し、死をもって親の教育は間違いだと証明してやろうとしていたので。

だけど…諦めて医者を志してから、客観的に自分が手放そうとした生とは何か……考えるきっかけが得られたんですよ。

奇しくもあの鶏が、好奇心という卵を産んで…今の俺がいる。

だから俺の結論は…

"鶏が先"です。

日向:……ほぅ。まさかそんな命題通りの答えにたどり着くとは……もっと理論が飛翔して、額面とはかけ離れると思ってたんですが……実に興味深い。

限前:正直、俺も喋りながら驚きましたよ。狙ったわけではありません。

日向:もし狙っていたのであれば…相当頭が切れる人、ですけどね。