問診と所見2(青年)

日向:……零君?話、聞いてますか?


限前:(だから別段不思議でもなかった。自分の身体じゃないんだから、知ったこっちゃない……と。)


日向:……零君!しっかりしてください!私の声が…聞こえますか?


(まさか……意識障害が?)


限前:……僕は……どうして───?


(零は一筋の涙を流すとそのまま倒れこんだ。すぐに日向は零の容態を確かめるとベッドに寝かせた。)


日向:……零君?貴方は何を抱え込んでいるのですか。


私が存じているのは…貴方が院長のご子息だと言うことだけです。そういえば、昨日仰ってましたよね……お父様には言わないでくれ、と。


だから私が今こうして診ている訳ですが…。どうして実のお父様に、ご自身の容態を知られたくないんですか?


………下手をすれば、命に関わるかもしれないと言うのに。


限前:(このまま…………逝くのも…

悪くは、ないか…………


本当は、"あの人"の前で……

逝きたかったけど…)


?:失礼、日向君。零を知らないか…?姿が見えないんだが。


日向:……!院長、零君は今ここで仮眠を取っています。どうも昨日、多忙ゆえに休めなかったそうなので…


院長:そうか、うちの零が手間をかけたな………。起きたらこの資料を渡しておいてくれ。来週の発表資料、申し分ないと言っていたとな。


日向:……はい。了解しました。


(院長は零を省みる事もなく立ち去った)


(……つい、誤魔化してしまいましたね。何故か真実を明かしてはいけない…そんな気がして、ついあんな嘘を…)


(日向は悩みながら、零の治療をしていた。どれだけ悩んでも、結論など出ない。


事情を知らない者に、家族の問題を解決に導くことは不可能なのだから。


今の日向にできるのは…ただ零の意識が戻ることを待つだけ、だ。)

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