第21話 雨のお迎え編終
男の子は、またしても、驚くべき行動をとった。
気弱な彼にしては、ずいぶん大胆な行動をとったと思う。
なんと、傘もささずに、学校を飛び出して、大雨の中を歩きだしたのだ。
このまま濡れて家に帰るつもりか。
風邪ひくぞ。待てい!
待てい!と勢いのよい言葉を使ってみたけども、
実際は、うしろからコソコソ監視しているだけだ。
探偵またはストーカーのように。
めちゃくちゃ勢いよく追いかけてもいいのだけど、
これで男の子をあわてさせて走らせてしまうと、
突然飛び出してきた車とぶつかってしまうかもしれない。
ここらへんはそれなりに交通量が多くてね……。苦労するよ。
それに、うまく軒先を借りて、濡れないように注意して歩いてる。
なかなか工夫しているようだ。
それでもかなり濡れてしまっているようだけど……。
ああ、このままでは本当に風邪をひいてしまう。
心配だ。
でもそれと同時に、ちょっとワクワクしながら追いかける自分がいる。
男の子がこれからどんな行動をとりながら帰宅するのか、
とても気になったからだ。
あんなに気弱な子が、傘もささずに、
雨の町中を歩き回っているというだけでも
なかなか趣(おもむき)があるシーンだ。
そう思っているのは私だけかもしれないけれど。
しかし、だんだんと借りられる軒先や屋根も少なくなり、
ついに男の子は立ち往生してしまった。
あたりをきょろきょろ見回して、屋根になるような建物がないか
様子を伺っている。
うふふ。そろそろ私の出番かな?
学校から遠く離れたし、友達に見られることも、もう無いだろう。
私は、チャンスを伺い、男の子に声をかけてみる。
「やあ、また会いましたね」
男の子は、ぎょっ!という顔をした。
あとをつけられている、とは、みじんも思わなかったらしい。
本当に驚いているようだった。
寿命縮めちゃったかな? ごめんごめん。
男の子は、私が現れたので、逃げようとする素振りを見せたが、
雨宿りできそうな場所が見つからないからか、
足踏みばかりしている。
「もう雨宿りできる場所ないよー?」
煽る。
男の子は、慌てた様子のまま、動かない。
「大人しく、傘の中に入りなさい。
ここなら、もうお友達の目もないし、大丈夫だよ」
たたみかける。
「このまま濡れ続けたら風邪ひくよ」
駄目押しする。
男の子はついに観念したのか、こくりとうなずいた。
よーし。ついに観念したか。
その観念に免じて、お姉さんから傘をプレゼントしてあげるーっ!
あれ?
あっ! たいへんなことに気づいちゃった!
私の分の傘しかない。
どうしよ。
「あの、かせいふさん、ぼく用の傘は……?」
「あら? あらら? 私ったら、1本しか持ってきてない」
私ったら、ほんとドジ。
と言いつつも、実はわざとなんだけどね。
男の子の困る顔を見たかっただけ……。うふふ。
こうなったらもう相合傘をするしかないね(はぁと)
「君の傘わすれちゃったぁ。
もう私と一緒の傘に入っちゃおう。ね?」
私は、男の子の手をくいっと、ひっぱった。
男の子は、私と同じ傘に入るのを、嫌がっていた。
恥ずかしい、恥ずかしい、と言いたそうな顔をしている。
そのためか、相合傘をしても、私と男の子の間に微妙な隙間ができる。
わー。恥ずかしそう、
でも、あんまり傘の外側にいくと濡れちゃうよ。
男の子の小さな肩をつかんで、内側に寄せる。
「濡れちゃうよ」
「で、でも……」
かあぁっと男の子は顔を赤くする。
まだ恥ずかしいのかい?
「ここは、君を見ている友達はいないから、大丈夫だよ。
こんなに濡れちゃってまぁ」
ハンカチを取り出して、男の子の体をフキフキする。
肩、脚、頭……。こんなに濡れちゃってまぁ。
こんな小さい布切れじゃ、十分なフキフキにはなれないけれど、
ちょっとはマシになったかな? うふふ。
体を拭いているうちに、男の子は安心してくれたのか、
恥ずかしそうな素振りを見せなくなった。
やったぜー!、と年甲斐もない心の声をあげる。
だけど、男の子の体が乾いたわけではなく、
まだまだ濡れてるので、
帰宅したら風呂に入らせておかないとなー。と思った。
雨のお迎え編おわり(次回の編につづく)
ニセモノ家政婦、男の子にいたずらをする alphaw @harappa14741
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