第4話 おねしょ編2

「朝ごはんできたよー。

 ごはん一緒に食べようよ!」


月曜の朝が来た。

私は、珍しく早起きし、朝食を作り終えて、男の子を呼ぶ。

反応がない。まだ寝てるのかな?


しばらく待つ。来ない。反応もない。

このままでは、朝ごはんが冷めてしまう。


まあ、夏休みだし、少々寝坊してもいいんだけど、

寝坊という悪い習慣を、男の子に身につけさせたくはない。

早起きさせよう。そうしよう。


私は、男の子の部屋の前にまで行って、声をかける。

それでも、なかなか出てこない。

うーん。


意外とお寝坊さんなのかな?

大丈夫かな?

生きてるかな?


男の子の両親から、寝坊する子だとは聞いていないけれども。

気になる。


私は、男の子がなかなか部屋から出てきてくれないので、

ドアを開けることにした。


でも、いきなり開けることはしない。

小さい男の子にだって、プライベートはあるのだ。

何かしてるかもしれないので、ノックぐらいは必要だ。


トントン。ノックした。


「起きてますかー?

 お姉さんと朝ごはんしましょう。

 お寝坊さんはだめですよー」


ドアの向こうに明るく声をかける。

かすかに声が聞こえてきた気がする。


いや「声」というよりは……。

音?というか、反応?というか、

何か反応はあったのだが、それが声か音かははっきりしない。


とにかく、ドアの向こうには、男の子がいることはわかる。

ようし。いいや、もう、開けてしまおう。


「開けるよー?」


ドアノブを回し、ドアを少しずつ開けていく。


「おはよう。起きてる?」


「うん……」


「あれ? 起きてるねー。

 お布団から出られないのかな?」


男の子は起きていた。

でも、ずっとベッドの中に入って、布をかぶったままだ。


起きてるのに、どうして動かないんだろう?


「起きてる……けど……でも」


男の子の声は元気がない。

ん? どうしたのかな?


もとからそんなに元気のない子だけれども、

きょうはとくに元気がない。

どうしたのかな? 気になる。


男の子の寝てるベッドに近づく。

少しだけ、変な匂いがする。

あっ。嫌な予感……。


おそらくベッドの中は、今ごろ、大洪水になっているのだろう。

でも私は、いきなり、男の子の粗相(そそう)を指摘することはしない。


男の子が傷つくし、たぶん大泣きするからだ。

男の子の泣き顔を見るのは、私にとって至福の瞬間なのだけど、

さすがにそこまでするほど外道ではない。


「ねぇ、手を出してくれるかな?

 起こしてあげる」


男の子は、しばらく黙っていたけど、無言で、ベッドから右手を出す。

手から少し匂いがする。もちろん、いい匂いではない。

お股をおさえている途中で漏れてしまったんだろうなぁ……。


私は、男の子の手をとり、


「きょうは、特別に、朝のお風呂に入りましょう。

 いいかな?」


特に理由も告げず、風呂に入るよう提案した。

粗相で汚れた部分などを、いったん洗って綺麗にするためだ。


男の子は、無言で頭を縦に振った。


いまから風呂になんてゆっくり入っていたら、

朝ごはんが冷めてしまうけど、

汚れたままで朝ごはんを食べさせるわけにはいかないし。


というわけで、私は、男の子をお風呂に入れさせることにした。


つづく

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