第6話 おねしょ編4

男の子は、風呂で体を綺麗にしたあと、

着替えて私の前に現れたが、ずっと黙りこんでいる。

顔を赤くして、ずっと下を向いている。


お漏らししたことが、だいぶ恥ずかしかったのだと思う。


しかも、親でもない、昨日知り合ったばかりの、

よくわからないお姉さんに、そのお漏らしを見られてしまったのだから、

子供心にも、どうしようもなく気まずいと思う。


私は、そんな状態の男の子に、優しく声をかける。


「朝ごはんにしようか? ちょっと冷えてると思うけど」


朝ごはんはすっかり冷めていた。

あたためなおしてもよかったのだが、いまさら面倒だった。


「うん」


男の子は、短く答える。

さっきよりは、いくぶんか落ち着きを取り戻した返事だった。


朝ごはん中も、男の子は何も話してくれない。

ぼそぼそと食べているだけで、何も発さない。


「少し冷えてるけど、大丈夫? おいしい?」


「うん」


短い返事。


「ねぇ、きょうから、一緒の部屋に寝てもいいかな?」


私は、男の子にそう伝える。


「えっ」


男の子は一瞬とまどっていたけど、

少し待って「うん」とうなずいた。


昨日来たばかりの家政婦お姉さんと一緒の部屋。

戸惑うと思う。

でも、これが一番の最善策だ。


お漏らしした原因はいくつか思い当たる。

怖くて、ひとりでトイレに行けなかった。

両親不在のなかで、とても心ぼそく、ストレスもあった。


それなら、いつでも一緒にいて、

いつでも一緒にトイレにいけるほうが安全だ。


トイレのことまでは話さなかったけど、

男の子も、どういう意味で「一緒に」と言ったかは

たぶんわかっていると思う。


「じゃあ、きょうの夜は一緒だね。うふふ」


私は、満面の笑みを浮かべて、男の子の頬をつんと指した。


そうすると、男の子も、ようやく少しだけ笑顔を見せてくれた。

安心してくれたかな?

お漏らしはもうさせないからねー。


なんて、私は思った。

まあ、してもいいけどね。お漏らし。

お漏らし姿の男の子と、泣き顔を見るのは、最高のご褒美だ。うふふ。


でも、毎回風呂に入らせて、ベッドをお掃除するのは嫌だ。

けっこうな重労働だからだ。

お漏らしの代償は重いのだ。



つづく

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