第20話 女神の秘密 後編

「私達の最大の力は祈りの力。私達の願いの力、思念の力で世界を立て直すのです」

「ただ一生懸命祈ればいいの? それだけのために女神化をする意味があるの?」


 これはつばさからの質問。これに対しては、部長もかなりスケールの大きな理由を口にする。


「女神化した姿こそが私達の本来の姿。私達は世界を救う為に地上に降りた女神なの」

「そんなの急に言われても信じられないよ。それにそのメンバーの中に何で私が入ってるの? 何で5人しかいないの? 5人揃う事に意味があるの?」


 話を聞いたつばさは興奮しながら矢継早に質問を連発した。部長は鼻息の荒い彼女をなだめようと優しく話しかける。


「まあまあ落ち着いて、順番に話すから」


 そう話すと、部長は小さく咳払いをした。こうして落ち着いたところで、身振り手振りを加えながら本格的な説明に入る。


「まず、何故私達が女神なのか? それは前世からの記憶と言う他ないわ。いずれあなたにも過去の記憶が甦る日が来る。その時になれば自然に分かるわよ」

「じゃあ、5人って人数の意味もいずれは思い出すの? 前世って事は昔も同じ様な事をしていたの?」


 つばさは会長の口から出た前世と言う言葉に少し嫌悪感を覚える。未だかつて彼女はそんな体験をした事がない。胡散臭さを感じたのだ。会長はその質問に自分の話せる範囲での説明を続ける。


「5と言うのは聖なる数なの、世界の全ての基本の数が5。そこに大いなる意味があるんじゃないかな? 前世の事は私も詳しくは言えないけど、過去に何度か同じ様な事を試みた事があったのは事実みたいね」


 どうやら、部長は前世からの記憶でかなりの事を理解しているらしい。


「それで、どうやって世界を救うの?」


 具体的な事を聞きだそうとつばさは1人奮闘する。この質問にも明快な答えが既にあるらしく、部長は得意げに説明を続けた。


「具体的に言うとね、女神の塔と言うのがこの街のどこかに封印されてるの。それを見つけて発動させるのに女神の力が必要なのよ。私達が同じ時代にこの街に集まったのも、そう言う事があったからだと思う」

「女神の塔? それが発動すると世界を救えるの? そもそも世界を救うってどう言う事?」


 部長の口から出た新しい情報をもとにつばさの質問は更に続く。部長は彼女の顔をじっと見つめた。


「この世界は肉体の世界と精神の世界があるのね。精神の世界で設計図を作って肉体の世界で物を作ってると言う関係なの」

「え? 何それ?」


 つばさは急に宗教的な話になって理解が追いつかなくなる。唖然としたその顔を見て、部長は分かりやすく説明した。


「要するに、何かする時は何かしようと思ってからその行動をするでしょ? 何事も最初はその思いから始まっているのよ」

「な、なるほど……うん」


 この説明を聞いて、つばさも納得して表情を和らげる。話を理解してもらえたと言う事で、部長は今の状況の説明に入った。


「その最初の思いの世界、想念の世界が今闇に包まれているの。ここが悪い状態だと良い想いは闇に吸収されて悪い想いのみが伝わってしまう」

「じゃあ、私達にその闇を払う力があるって事?」


 なおもつばさは質問を続ける。部長も呼応するように話を続けた。


「そう、女神の塔の力を使えばね」

「何でその塔は封印されているの?」

「それは……、魔族に封印されてしまったのよ」


 封印の話をした時、部長は少し淋しそうな表情を浮かべる。ここでようやく敵の正体が判明した。話が核心にと近付いてきたきたと、つばさは興奮し始める。


「魔族! それが敵の正体ですかッ!」

「そう、女神の塔は願いを実現させる力を持つ。だから彼らもそれを狙ってるのよ」

「狙ってるなら何で封印を?」


 気がつけばさっきからずっとつばさばかりが質問していた。つまり中学生2人以外はみんなその事を既に知っているのだろう。で、もう1人の友人はと言うと、つばさがずうっと質問しているので、耳を澄まして聞き役に徹している。

 この質問を受けた部長は、敵である魔族についても話をし始めた。


「過去、彼らは何度も塔を狙い、それが出来ないと分かると今度は塔の力が発動する前に破壊しようとしたの。でもそれが出来なかったものだから誰にも使わせないように封印してしまったのよ」

「ふえ~。壮大な話ですね~」


 この話を聞いた静香はまるで他人事の様に感想を口にする。こうして大体の事情を話し終えたと言う事で、ここで店長が話を始めた。


「これで全員が今の状態を理解出来たね」

「店長も女神なの?」


 静香は会長の説明を聞いている間ずっと思っていた事をここで尋ねる。この質問を受けた店長は嫌な顔ひとつせず、逆に爽やかな笑顔を浮かべた。


「あはは、残念ながら僕は女神じゃないよ。僕は守護天使、君達が快適に事を運ぶ事が出来るようにサポートしていくのが仕事さ」

「天使? 背中に翼が生えてるの?」


 天使と言う魅惑ワードを耳にした静香は目を輝かせながら質問を続ける。そのファンタジーな質問を受けた店長はただニコニコと笑っていた。


「うん、またいずれ見せてあげるよ」

「つまり店長さんは私達の仲間って事ね♪」


 静香はそう言って勝手に1人で納得する。会長に任せていたら話が中々進まないと思った宏子は、早く話を進めようと自分から話を切り出した。


「では、これからの事を具体的に話していこうか」


 それからは早いペースで5人は今後の事を話し合う。とは言え、口を開くのは主に会長と宏子だった。そんな中、熱心に話を聞く静香に、疑問点には鋭い質問を浴びせるつばさ。そんな感じで話し合いは続いていく。

 ただ、メンバーの中でもまいだけはこの会議中、特に何も反応を示さなかった。もしかしたら寝ていたのかも知れない。目を開けて眠るとは中々に器用な少女である。


 そうして時間は飛ぶ様に流れていった。気が付けばすっかり辺りは暗くなり、お互いがお互いの事を理解したと言う事で、第1回の会議は終了する。


 まず、つばさ達女神がするべき事は女神の塔を捜し出す事と、襲い来る魔族を撃退する事。そして、次からはこのお店を拠点に活動する事が決まった。このお店は女神達が念じる事でその場所に出現すると言う、何とも便利な建物だったのだ。

 女神達5人が覚醒して情報が共有化されたと言う事で、今後はいつでも好きな時に利用する事が出来るようになったらしい。

 先はまだ長いながらも、自分の正体や目的が分かり、つばさは少し安心する。


 けれど、これからの長い激闘の日々を彼女達はまだ何も知らない。



(第一部・完)



――――――――――――――――――――――――――――――――――


以上が、ジオシティーズで書いていたこの作品の執筆分になります。第二部以降はまだ書いておりません。なので、続きはかなり先になるかと思います。構想自体はあるので、いつか続きを書いた時はまたよろしくお願いします。


第二部は女神の塔を巡る女神と魔族の戦いになる予定です。

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鏡の中女神様 にゃべ♪ @nyabech2016

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