マホ研?
第7話 マホ研? 前編
「私ね、よく何かに意識を乗っ取られるの」
「そ、そうなん?」
校舎から飛び降りた少女を救ったつばさは、危なっかしいのもあってその彼女と行動を共にしていた。その子の話によれば、さっきみたいに自分の意志と無関係に行動してしまう事は珍しくはないらしい。
そんな特殊な事情を、つばさは唖然としながら聞いていた。
「でも、校舎から落ちたのは初めてかも……」
「今までも色々あったんだ?」
「あったよ~、だからオカ研に入ったんだよ」
色々あった末にオカ研に入部して、それでも何も変わってないんじゃ意味がないんじゃ……と、つばさは呆れる。
で、2人が話している場所はどこかと言うと、実はオカ研の部室だったりして。彼女が行く所があるからと言うのでついて行って、辿りついたのがここなのだった。
この子もオカ研部員のようだから、部室に来るのは当然の行動なのかもだけど。
彼女の名前は星野静香。幼い頃から稀に霊に取り憑かれ、そうなる度に今回の様な騒動を起こしていたらしい。
「オカ研に入ったら、前より一層霊が寄って来る様になっちゃった♪」
彼女はそう笑顔で話す。どうやら馴れっこになって感覚が麻痺しているようだ。
「静香の場合、オカ研に入部したのって逆効果だったんじゃないの?」
「ううん、ここに来て助かってるよ。世の中色んな人がいるんだなぁって分かったし、ここの人達はいい人ばかりだし」
「いい人、ねぇ……」
その言葉につばさは部室を見回した。そこにいるのは元気な男子と不思議ちゃんの中1コンビ。後は暗室の中に部長もいるのかも知れない。オカルト好きな人が集まっているのだから不思議な事に関しては寛容ではあるのだろうけど、部員達の事をまだ詳しく知らないつばさは彼女の言葉に半信半疑だった。
「先輩は凄いっス!、尊敬するっス!」
2人の会話に勢いよく割って入ってきたのはこないだのチビだ。こいつは何でも信じ込むタイプだな。将来ヤバそう……と、つばさは心配になる。
今、オカ研の部室で部員達が何をしてるかと言うと、何やら同人誌の様な本を作っているようだ。そもそも、この部室で行うオカ研部員達の活動と言うのが、主に執筆活動とか研究活動とからしい。
そんな雰囲気の中、ずっと話に夢中で何もしようとしていない話し相手につばさは疑問を持った。
「静香は何か書かないの?」
「私の原稿はもう出してるよ、あとは健君だけ」
「そうなんだ」
彼女が余裕なのは既に自分の仕事を終えていたからのようだ。静香は更に話を続ける。
「でも、部員全員が集まってる時に来たらみんなを紹介出来たのに残念だよ」
「いや、前にみんなには会ってるから」
つばさはその勢いを受けて慌てて遠慮する。あんまり深くこの世界に関わりあいたくなかったのだ。彼女自身も占いとかなら少しは興味があったものの、周りがこんなもっと深く信じ込んでいる人間ばかりだと、どこか別の世界に連れていかれそうだと言う先入観があった。
「部員はもう1人いるっスよ!」
2人で話している最中に、また健が話に割り込んできた。どうやらさっきのつばさの言葉が引き金になったらしい。その話によると、中等部のオカ研部員は総勢5人なのだとか。
彼の話を補足しようと、今度はゆみこまでがこの話に参戦する。
「その人は部長と同じ3年生で、毎日ネタを探して走り回ってるんです」
「部室にはほとんど顔を出さないんだけどね」
このゆみこと静香の話を総合すると、その残りの部員はレキャラ的な存在らしい。謎の先輩の話は、困惑するつばさを置き去りに更にヒートアップする。
「会報でも一番多くの記事を書いてるんです」
「知識は相当なもんだよね」
「尊敬するっス! 目標っス!」
3人はそれぞれにもう1人の先輩部員について熱く語ってくれた。
――頼んでもいないのに。
それでも、もう1人物好きがいると言う事だけはつばさにもよく分かったのだった。きっと彼らの知り合い以外、ほとんどの生徒は彼らの事を知らない事だろう。
何回かこの部室に足を踏み入れているものの、つばさは一度もここで部員以外の生徒の存在を確認していない。
と、言う事は多分、このオカ研には顧問の先生もいないのだろう。部室になっているこの教室だって普段使われていない教室だし、追求すると色々と深い闇があるのかも知れない。それに、部活動と称して学校で堂々と同人誌を作っているし。
この光景を見たつばさは、好き勝手出来ていいなぁ……と、ちょっと羨ましくも感じるのだった。
いつしか彼女は段々この怪しげな部活に興味を持ち始めていた。実はつばさはいくつものクラブに掛け持ちで入っており、現在そのどれもに飽きて来ていたのだ。
掛け持ちの内訳はテニス部、放送部、新聞部、演劇部。1年生の頃はどれも真面目にやっていたのだけど、2年生の今はハッキリ言って幽霊部員となっている。
やはり色んなものに手当たり次第手を出すのはマズかったかな? と反省したりする今日この頃だったりするらしい。
見たところ、原稿書きのノルマが残っているのは健だけのようだ。そこに興味の出てきたつばさは部員達に向かって質問する。
「んで? 原稿が書けた他のみんなはここで何やってる訳?」
「興味ある?」
ここで部長までが声をかけてきた。まさか彼女が暗室から出てくるとは思わなかったので、つばさは勧誘されないようにと少し警戒しながら返事を返す。
「少し、ね」
「普段はみんな好きな事をやってるよ。決まってるのは定期的に自分のした事を報告する事だけ。後は思い付きで実験したり、取材したり、こうやって外部の人の話を聞いたり、相談に乗ったり……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます