鏡の中女神様
にゃべ♪
女神誕生
え? 嘘、私?
第1話 え? 嘘、私? 前編
ここは瑞穂乃町。まあ、どこにでもあるような普通の街ですな。それで、そんな普通の街の中にある私立五十鈴学園中等部に通う中学2年生、日の宮つばさがこの作品の主人公です。この話はある日の放課後からスタートします。それではどうぞ。
「ま~た部活さぼっちゃって! い~の? つばさ!」
「ん~? だって私の求めたのと違うしぃ~。あのテニス部~」
「ま、私らは遊べるからその方がいいけどね~」
つばさは、親友3人と楽しそうに会話しながら帰路についていた。いつも仲良し4人組は全員同じクラスで、休み時間とか放課後はよくみんなでいる事が多い。
勝ち気な竹内あやねに、頭のいい柊さやか、何にでも口を突っ込む吉道ゆかりの3人との仲は小学部からの腐れ縁と言ってもいいだろう。ただ、全員が同じクラスになったのは中2になって初めての事。だから余計に仲良くしているのかも知れない。
そんな訳で、その日の放課後もつばさ達は他愛のない話をしながら楽しく下校していた。途中まではいつものように学校であった事などの雑談で盛り上がっていたのだけれど、その流れに飽きたのか、あやねが突然他のみんなに向かってとある提案をする。
「ねぇ、たまには違う道で帰ってみない?」
「ん~? その道ってちゃんと帰れる道なんでしょうね?」
その提案に早速ケチがついた。さやかからのツッコミだ。4人の中でも一番賢い彼女は、とにかく堅実派で確実な事しかやろうとしない。この堅物の説得に、あやねは情に訴える作戦に出る。
「さやか~、たまには冒険も必要だよ~」
「冒険? どうせ何も考えていないんでしょ? 却下」
「つばさはどう? 行くでしょ?」
さやかに拒否されたあやねは今度はつばさに同意を求める。次の瞬間、選ばれなかったもう1人が突然怒り始めた。
「こら~、何で私には聞かんのじゃ~!」
「だって、ゆかりはいつでもみんなに従うじゃんか!」
「んでは、つばさクンの意見を聞こ~か!」
そう言う話の流れになって、改めてゆかりからつばさに話が向かう。イエスマンのゆかりだけど、多数決の場合は数の多い方につきたいタイプ。お互いに付き合いが長いので、そんな彼女の性格はみんな知っている。
と言う流れで、4人が話し合って意見が別れた時、ジャッジを決めるのは大抵つばさの役割になっていた。
3人からの注目を一斉に集める中、彼女は顎に手を乗せてしばらく考え、それからニコッと笑いかけた。
「い~んじゃないの? たまには違う道で帰ったって。それで何か新しいお店とか見つかるかも知れないし、第一、この街で迷ってもたかが知れてるよ」
「そだね。確かにこの街で14年過ごして来たし、大抵の場所には行ってるし」
さやかもつばさが賛成したので、あやねの話に従う事にしたようだ。
4人組の中でつばさの意見は強い。考えるより先に行動してしまうあやね、考え込んですぐに行動に移せないさやか、どんな意見でもすぐに乗ってしまうゆかり。
その中で全体を見渡して公平な意見を言えるのはつばさしかいないと言う事になる。
ま、そのつばさだって結構いい加減な方なんだけど。
「でね、実はいいお店見つけたんだ~♪ ついてきて!」
あやねはそう言うと、いつもと違う方向に楽しそうに歩き出した。残りの3人はホイホイとそれについて行く。
太陽が少し西に傾きかけた頃、そのお店は4人の前に現れた。初めて見るのに何か懐かしい、そんな雰囲気のお店だ。店の玄関には可愛い人形がドアの両脇に飾られていて、アンティークショップのような趣を醸し出している。
と、そこでさやかが疑問を口にした。
「ここって、ちょっと前まで駐車場じゃなかったっけ?」
「何言ってんの? ここは初めて来た場所だよ」
彼女の疑問にあやねが反論する。
けれど、さやかはさやかで、そう言えるだけの根拠を持っていた。
「あやねは知らないだろうけど、私塾の帰り道よくここの側通るんだから!」
「夜中だったから分からなかったんじゃないの?」
「そんなはずないって! 大体夜中だって電気くらい付けるじゃない普通!」
喧嘩ごしになる2人。さやかは考えて行動するタイプなので、依怙地になり易いところがあった。
「まぁまぁ喧嘩はやめよ。取り合えず入ってみようよ!」
つばさはそんな2人をなだめ、店に入ってみる事を提案する。そこでゆかりはあやねに声をかけた。
「あやねはここ入った事あるの?」
「実はまだなんだ。ここ昨日見つけて、今日みんなで入ろうと思ってさ」
こうして、4人はそのお店――看板がないので名前は解らなかったけど――に入っていく事になったのだった。
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