仲間
第13話 仲間 前編
次の日の昼休み、つばさは昨日の出来事について興奮気味に静香に話す。こんな話、オカ研メンバー以外には話せない。
「どうしてつばさちゃんが狙われたのかなぁ?」
「だよね? 静香には何か心当たりない?」
「ないよ~」
「……」
静香の頼りない返事につばさの話す気力も失せる。なので、ここはもっと偉い人と話さねば! と、彼女は部長に直接会いに行く事にした。
「ねぇ、部長のクラスって何組?」
「会いに行くの~?」
「うん、部長なら何か分かるかも知れないし」
「今日は仕事で遅いんじゃないかなぁ?」
静香は部長についての新情報をさらっと口にする。この返答につばさの動きが固まった。
「え? 仕事してるの? 部長」
「うん」
静香の話によると、部長は占い師や必要に応じてお祓いの仕事などを毎週火曜日と木曜日にしているとの事。なので毎週2日は基本的に学校を休んでいるらしい。
それで大丈夫なのかと聞くと、色々あって大丈夫なのだとか。その理由を静香は知らないらしい。この話を聞いたつばさは何故部長がいつも毎日暗室にこもっていたのか、その理由が分かった気がした。
きっと、アレはその仕事で必要な何かをしているのだろう。
こうしてつばさは会長の秘密を知った。知ったところで何の役にも立たない様な気もしたけれど……。彼女が感心する中、静香は話を続ける。
「でも、ちゃんと放課後には部室に顔を出すんだから部長はすごいよね」
「そ、そうだね……」
彼女の何も疑っていない無垢な反応につばさは微妙な表情を浮かべる。と、言う訳で部長にはすぐに会えないと分かって、つばさは仕方なく放課後まで大人しく授業を受ける事になった。
けれど、頭の中は昨日の出来事で一杯になっていて、当然のように授業内容は上の空であった。
放課後、つばさはオカ研の部室に走る。それを見た仲良しメンバー達はつばさが変わってしまったと言い合っていた。
とは言え、飽きたらきっと戻ってくると言う想いも強く、誰1人として態度を変える友達はいなかった。何故なら、つばさも放課後以外はこの仲良しメンバーといつも通りの付き合いをしていたからだ。
出来れば早く自分達のもとに戻って来て欲しいと言うのがメンバー達の本音。
けれど、それでつばさを縛るのも違うと思っていたので、誰も口には出していない。彼女達の想いはいつかつばさに届くのだろうか?
オカ研の部室につくと、そこでは健とゆみこが分厚い本を読んでいた。本の題名は『魔術大全』。それを見たつばさは何やらかすつもりなのかと、軽い戦慄を覚える。
つばさは熱心に本を読むゆみこにそれとなく尋ねた。
「部長は?」
「……」
ゆみこは本に夢中で話しかけても何の反応も返ってこない。同じ質問を健にもしてみるものの、反応は同じだった。
仕方がないので、つばさは自分で暗室の方に歩いて行く。彼女がこの暗室の中に入るのはこれが初めてだった。手でカーテンを開けて中に入ると、そこは一切が闇の世界。
天井から床までしっかりカーテンで区切られたこの空間は、昔悪霊が祟っていたと言う噂そのままの雰囲気を真空パックしているかのようだった。
「ぶちょー、いませんか~?」
狭い空間なのだからいたらすぐ分かるはずなのに、つばさは思わず声をかけてしまう。暗室によって作れたこの人工の闇の世界はどこか異世界に通じているような、そんな独特な雰囲気が漂っていた。
しばらく待ってはみたものの、当然のように返事は返ってこない。どうやらまだ部長は部室に来ていないようだ。
暗室から出て、つばさはそこら辺にある魔獣に関係ありそうな本を片っ端から読んでいった。真剣に読んでいたので、あっと言う間に時間は過ぎていく。
そう、いつの間にか部長が教室に入って来たのにも気付かない程に。
日が西に傾いて、夢中になって本を読んでいたつばさも我に返る。当然、部長は教室に来ていないと思い込んでいた彼女はもうあきらめて教室から出ていってしまった。
本当はあの暗室の中にいると言うのに――。
「はぁ……。無駄骨だったなぁ」
つばさはそう言いながら廊下を歩いていく。
その頃、健とゆみこは相変わらず仲良く本を読んでいた。黒魔術とか実戦するつもりなのだろうか? ま、彼らの事は置いておこう。
帰るなら静香と一緒に帰れば良かったのだけど、今日はそんな気分ではなかったのでつばさは1人で帰る事にした。帰り道、繁華街に寄ってウインドーショッピングを彼女は楽しむ。この時のつばさの心は物欲で満たされていた。
「ああ~っ。あれもこれも欲しい~っ!」
最後に寄った書店を出ると、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。その様子で現在時刻を察した彼女は急いで家に向かって走り出す。
「今日も遅くなったらまた怒られちゃう!」
走り始めて15分後、本来ならもうそろそろ見覚えのある住宅街に出るはずなのに、一向にその見慣れた景色が見えてこない。
「ハァハァハァ……。おかしいな?」
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