お試し探索開始
その後ケーキとアイスとフルーツめちゃ盛りを持って佳奈美と雅が戻ってきた。
結果再び大消費合戦が始まる。
そしてやっぱり神流先輩は手伝ってくれない。
それでも3人で協力して何とか食べ残し無し状態まで片付けた。
おかげで動くと色々逆流しそうな状態だけれども。
そんな訳で店からタクシーを呼ぶ。
もう駅まで歩くのすら辛かったからだ
結果無事に学校まで帰ってこれた。
でも先輩には言いたい事が色々ある。
例えばタクシーで女子3人男1人なら僕が前席だろうとか。
でも先輩が我先に前席をキープ。
そしてぐったり状態の佳奈美と雅に後席中央は危険な気がした。
だから少し動ける佳奈美を後席奥へ押しやり、僕が中央、雅が左側に座る。
そしてタクシーに揺られること約20分、苦しい時間を過ごさせていただいた。
自分が食べ過ぎで吐きそうなのはまだいい。
問題は佳奈美と雅が容赦無くこっちにもたれかかってくる事だ。
佳奈美はまだいい。
せいぜい僕の腹に横倒しになってぶつかってくる程度。
結果奥の胃の中身が逆流しそうになり口を押さえる程度だ。
これはまあ苦しいが何とか耐えられる。
問題は雅、彼女がもたれかかると思い切り胸の感触が肩に伝わってくるのだ。
柔らかくて、そのくせ妙に振れた部分が熱く感じる。
これはまずい。
ただでさえ食べ過ぎで苦しいのに生殺し感覚まで加わる訳で。
健全な青少年には非常に辛い。
自分の心臓の動悸が胃袋を刺激して二重に辛い。
結果タクシーを降りた僕はもうボロボロ状態だった。
それこそ全方位、色々な意味で。
外目にもよほど酷い状態だったのだろう。
寮に入るとき思わず寮監の先生に心配されてしまった。
こういう事態はもう勘弁して欲しい。
そう思いながら自分の部屋に何とか辿り着きベッドに倒れ込む。
◇◇◇
さて。
休日でもこの学校は朝から開いている。
図書館や大学部等もある関係だろうか。
昨日の今日で全然爽やかではない土曜日の朝9時ちょうど。
僕らは昨日購入した探検グッズを装備して理化学実験準備室に集合した。
ちなみに佳奈美は昨日購入した銀玉鉄砲も装備している。
残念ながら購入を阻止できなかった一品だ。
「さあ、地下帝国でも異世界でもどんとこいなのですよ」
「今回はお試し程度までだがな」
そう言って神流先輩は床の蓋を開ける。
下は真っ暗だ。
「帰りにここを上るのが面倒だから、こういう物を用意してある訳だ」
先輩は薬品棚の下の隙間から長い木の棒を引っ張り出した。
よく見ると縄ばしごになっている。
長い木の棒部分を穴の上に引っかけ、縄ばしご部分を下に垂らす。
「これで準備完了だ。私から行くぞ」
そう言って先輩は両手を穴の両側にかけ、一気に下へと降りていった。
「さあ、次は誰だ」
「私が行くのです」
という感じで佳奈美、雅と降りて最後に僕だ。
降りてみると思ったより広い空間だった。
幅2メートル、高さ2メートルちょっと位の通路。
右側に電線らしき線とかパイプだとかが前後方向に伸びている。
「ここはまだ地下道と言うより建物の地下だけれどな。それでは行くぞ」
「その前に、ここの出口、このままにしておいて怒られないんですか」
ちょっと気になったので聞いてみる。
「大丈夫だ。別に学校側から怒られた事は無い。そもそも立ち入り禁止とは書いていないからな」
神流先輩のいい加減な返事。
それならまあいいか。
そう安直に考えて、僕も佳奈美や雅の後を追って地下道を歩き始める。
地下道そのものに照明は無い模様。
しかし神流先輩所持の電池式ランタンがかなり明るい。
おかげで視界には困らなかった。
ランタンの動きで影が動くのがちょっと怖いけれども。
しばらく歩くと天井が急に低くなる。
僕が何とか身をかがめないで通れる高さ。
だから大体180センチくらいだろう。
「ここから高校校舎の建物外だ。すぐ地下道本坑につく」
神流先輩は僕より身長が高いので腰をかがめている。
「何か本格的に探検という感じになってきたのです」
悔しいが佳奈美の気持ちが良くわかる。
僕もそうだからだ。
低くなった場所から僕の歩幅で50歩程度、左右に伸びる地下道に合流した。
また天井の高さが元に戻る。
「この右方向は中学部の教室棟までで行き止まりだ。脇道も含めて全て調査済みで不明場所は無い。だから左に行くぞ」
そんな訳で左へ。
しばらく歩くと右方向への分岐があった。
理化学実験準備室方向への分岐と同じように電線やパイプが別れている。
「ここは講堂への分岐だ。講堂裏の楽屋にある蓋の下まで行ける」
「何か随分歩いた気がしますけれど。それでもまだ講堂なのですか」
「地上だと高等部から講堂まで1分もかからないですよ」
雅も佳奈美も随分歩いた感じがしたらしい。
まあ僕もそうだ。
「見通しきかないから1歩も短くなるしな。地上の数倍距離を感じるんだ」
先輩はそう説明してくれる。
なるほどと思うけれど、やはり距離感は変わらない。
さらに歩いて高等部教室棟分岐、図書館分岐を過ぎる。
「何かなかなか進まないのですね」
「まあ探検なんてこんなものさ。さて、ロードオブザリング到着だ」
十字路だ。
先程までの分岐と違うのは、左右方向もこの地下道と同じ大きさである事。
それにしても何故
疑問はさっさと聞くに限る。
「何か指輪物語に関係する場所なんですか」
先輩が首を横に振った気配がした。
「いや、大学講義棟をや人文教育棟をぐるっとまわる
駄洒落かい!
そう思った時だ。
「何か音が聞こえないでしょうか」
そう言われると何か水音と足音のような音が……
「やっぱり出たか」
神流先輩、主語を言わないところがすごく嫌だ。
「何が出たのですか」
雅の不安そうな声。
そう、それを言ってくれ。
「地下道探検につきものの、アレさ」
だからちゃんと言ってくれ。
音は次第に近づいてくる感じだ。
じゃばじゃば、ハアハア。
息づかいまで聞こえる気がする。
そして右側から何か光のようなものが見えた気がした。
あれは!
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