第二章 第8話「アーティファクト」
ダイチが
「ゆくぞ、月永」
「はいっ」
今日も地下の訓練所へ西園寺さいおんじさんと向かう。
「もう日がない…今日、我はお前を殺す気で相手をする…お前も我を殺す気でこい…」
突然物騒なことを言うなこの人は…
「わかりました…そのかわり、怪我しても知りませんからね…?」
「どの口が言うか…」
俺も対抗心を燃やしながら、訓練所内で対峙する。
「自傷レベル2…ブラッドサイス…」
西園寺さんの手が血で染まり、それが徐々に大きな鎌の形を成していく。
「七天抜刀・夜天【
一瞬の静寂…そして俺は西園寺さんへ駆け出した。
大鎌と剣の激しい撃ち合い、刀身がぶつかるたび空気が震える…
一見互角のように見えるかもしれないが俺は西園寺さんの攻撃をほぼ防いでいるだけ、腕は痺れ、刀身が徐々に悲鳴をあげる…
全く隙がない…それに加えて鎌の動きがトリッキーすぎる、読みづらくてしかたない。
俺は一旦距離を取ろうとする、が、西園寺さんはそれをも許さなかった。
バックステップで後方に下がるがチャンスとばかりに踏み込んでくる。
その一撃を受けたことで迦具土は粉々になり俺は吹っ飛ばされた。
「んぐっ!!」
立ち上がろうとするがすでに目の前には鎌があった。
「
西園寺さんのそれは俺の敗北を意味する、戦場ならば死んでいるぞと…
そして、俺に背を向け最初の位置へ戻っていく。
「さて…続けるぞ…」
俺はすぐに立ち上がりまた死神と対峙する。
「迦具土でダメなら…」
俺は剣を切り換える
「
俺は一気に出力を上げ刀身を赤熱させる。
確かに迦具土よりは脆い…けど熱で怯ませられれば…!
またも激しい撃ち合い、先程とは違い火花が多く飛び、時折炎がチラつく。
そして、タイミングを見計らい放熱しながら剣を振るう。これには西園寺さんも少し怯む、俺はそれを見逃さず即座に背後へと回り込む。
そして、そのまま緋天を背中へ振り下ろした!
「ハァ…ハァ…」
「今のはなかなか良かったぞ…」
しかし、西園寺さんは背をこちらに向けたまま俺の一撃を止めていた…
俺は思った、果たしてこの人に勝てる日が来るのだろうかと…
「一度休止を挟むか…」
「…はい」
俺が飲み物を飲んでいると西園寺さんが突然鎌を造りだしこちらへ放り投げてきた。
「!?」
俺はすかさず剣を造り防ぐ。
「なにしてるんですか!?」
「月永よ今の我の鎌の使い方は正しかったか?」
「へ?」
「鎌とは武器として生まれたものではない、それ故にこのような形状をしている、鎌を扱うには剣のように使ってもダメだ…本来の使い方…何故この形状になったのか、どうすれば本来の力を引き出せるのか…」
西園寺さんは俺の剣を指差す。
「剣も同じだ、正しい使い方をしなければ本当の力は発揮できん…我はとてもお前が剣を振るっているようには見えんのだ、ただ棒を振り回しているようにしかな…」
「本当の力…」
「立て…始めるぞ…」
俺と西園寺さんは対峙する。
正しい使い方…俺は昔剣道をしていた頃を思い出す、左手に鞘に収まった刀を造形し腰の横に持ってくる、右手で剣を抜き左手で柄をヘソの前で持つ、左足を引きかかとを少し上げる、重心は中心腰は正面に少し顎を引く…
ードクンッ
「良き構えだ…」
俺は妙な胸の鼓動を感じる…
「ゆくぞ…」
西園寺さんが迫る、一撃を受け止め切り返すがそれは防がれてしまう
撃ち合いが続く、しかし先程よりも俺は西園寺さんの動きが見えるようになっていた…が
「ぐっ!」
重い一撃、体が沈んでしまうのではないかと思うほどの…
そして次の攻撃で俺の剣は折れてしまった。
「ふむ…幾分かマシにはなったな…無駄も少なく剣の力を引き出せていただろう…あとは鍛錬だ」
そうは言われてもこうも剣を折られるのは精神的にくる…
「もし…剣が折れてしまうのを気にしているのであればそれは検討違いだ…」
心読まれたかと一瞬ドキッとする。
「確かに気力の差…それもあるだろう…だがそれ以上に我と月永の
俺は拳を握りしめる
「そう言われても俺は納得しませんよ…それを言い訳にはしたくないし、たとえその差があったとしても俺は差を埋めてみせます」
俺は鞘から剣を抜こうと柄を握る…
ードクンッ
まただ…この鼓動…
ードクンッ
剣を見る、その瞬間脳内に強い衝撃が走る…
「これが、失った気憶…!」
俺は一度剣を消す、そして腕を影で覆い始める、指先から肘のあたりまで影が侵食する、そして侵食が止まったところから炎のように影が吹き出し揺らめく…
足も同様にくるぶしのあたりまで侵食させ影を揺らめかせる。
「
「力を思い出したか…」
俺は柄と鍔つばだけを右手に造形し、手で輪っかを作っている左手にもっていく。
「七天抜刀…」
徐々に柄を左手から離していく、そうまさに鞘から剣を抜くように…
そして、刀身がなかった剣に刀身が生まれていく…
「夜天…“
「なるほど…剣の見た目はあまり変わっておらぬが、まるで雰囲気が違う…」
「いきますよ!」
間合いを詰める、鎌と剣がぶつかりあたりに衝撃波が走る、俺は鎌を弾き切り込んでいく。
まるで剣と一体になったような感覚…勝てる、そう思うほどに心地が良かった。
あの一撃、毎回俺の剣を折ってきたあの一撃が今放たれた。
俺は弾き返すぐらいの気持ちでそれを受け止める。
「ほう…」
そう、俺の剣はビクともせずそれを受けきったのだ、
俺は鎌を押し返し、反撃に移る。
それ以降、お互い大きな攻撃のチャンスを与えることなく撃ち合いが続いた。
ふと、西園寺さんが距離を取る、訓練を始めてから初めて西園寺さんが下がった…
「どうしたんですか!まだまだここからですよ!」
「もうやめておけ月永…調子に乗りすぎだ…」
少し呆れたように言われる
「え?」
その瞬間俺は足に力が入らなくなり、膝から崩れ落ちた
「あれ?」
そうか…もう気力の限界が来たのか…
「医務室まで肩を貸してやろう…」
「あっありがとうございます」
俺の記憶はそこまでで気がついたのは次の日の朝だった…
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