第一章 第17話「動く山」
巨大なヤモリの形をした怪物は山だった場所を8つの足で踏み均す。
そのせいで今さっきまで大きな山だったものがまるで幼子おさなごが作った砂の山のように見えてしまう。
「俺たちの初の大きな仕事だな!」
「
「なんか5人とリヴァイアでこうやって並ぶの久々な気がするね」
「アオイちゃんも!」
「でもここであいつ倒しゃあ俺たちそこそこの有名人になれんじゃね?」
「
「当たり前だろ、俺をなめるなよダイチ」
皆、日常の何気ない会話のように話す。
「全員準備いいな?」と5人で顔を見合わせた、そして、俺とショウスケが走り出しその後に3人が続く。
その時インカムに連絡が入る。
〈月永くん、あの
「了解です」
〈ご武運を…〉
俺はショウスケを見てある提案をする。
「ショウスケ、“リンク”を使おう。力を分散させるより一点集中したほうがいいだろうし、それにお前さっきまでぶっ倒れてたんだから俺の影使わないとまともに動けねぇだろ」
「最後の“まともに動けねぇ”っての以外は賛成だな」
「いらない心配だったか?」
と言いながら俺たちは“リンク”を発動させる。
「「リンク!!」」
俺はショウスケの炎を
そして、2人の動きがシンクロし始める。
「狙うは脳天!」「フルパワーで行くぜ!」
同時に踏み込み、飛び上がる。
デカブツの頭上まで到達し、見下ろしながら狙いを定める。
しかし、そこへ奴の背中から突如生えてきた触手が伸びてくる。
「シャイニー・レイ!」
すかさずハヅキがそれを止める。
「「ナイス!」」
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」
きみの悪い声を上げ威嚇してくる。
だが俺たちはそれに臆することなくやつの顔面へ迫る。
「「
俺とショウスケは凄まじい黒炎を纏いながら拳を振り上げる
「「
見事にヒットした音と衝撃が周囲に響く、そして容赦無く奴の頭が地面に叩きつけられる。
「「よぉし!」」
相当なダメージだったらしく、よろよろしながら頭をあげる。
そして奇声を上げながら何本もの触手を伸ばし俺たちを攻撃してくる。
だがそれをも許さず、ダイチが半分以上の触手に針を刺し電気で灼き、残りを“
俺たちは完全にこいつを封じていた。
「案外簡単にいけそうだな」「油断するのは早い、あまり弱ってるように見えないからな」
そう、その言葉通り油断するのは早かった…
奴は足の位置を変えたかと思うと一気に前方へ飛び跳ねた。
「「やっべ!」」
まだ奴の前方の空中にいた俺たちは急いで炎を使いすんででかわす。
しかし、その衝撃でインカムが外れる。
「あっ!」
地面に落ちたインカムは何の反応もしなくなっていた。
「ちょっとまずいかな…」
これで完全に自分たちでどうにかしないといけなくなった訳だ…
そして、何百mか飛んだやつは触手を出しながらこちらを向き始める。
「2人とも大丈夫?!」
「ハヅキ!あまり俺たちと直線上に並ぶな!できるだけ離れろ!」「あいつの狙いは今は俺とヒロトみたいだからな!」
そう、奴は確実に俺たちの方へ向いていた。
「「来るぞ!」」
そう言った瞬間、奴は触手も使って地面を蹴り真っ直ぐに俺たちへ向かってくる、パカっと口を開けながら…
「俺らを食うつもりかよ」「なめやがって」
恐らく奴の攻撃は受け止めることもかわすことも難しい、ならどうするか…
「「そらす!」」
俺は両手に
奴との距離が50mほどになったところで俺たちは技を繰り出す。
「「【黒炎】イラプション!!」」
地面に向かって拳を叩きつける、そして奴の顔の少し右側に火山の噴火の如く黒炎が噴き上がる。
それを喰らった奴の軌道は逸れ、俺たちの右側を通過して行った。
そして、それによって上手く着地できなかったらしく転がりながらなんとか体勢を戻している。
奴は気づいてないだろう、何故俺たちはお前を右へ逸らしたのか…
そう、奴が気付き触手で応戦する間も無くそこにいた3人が攻撃を仕掛ける。
「
「
「スパークスピアー!!」
気弾の雨に水の槍と咆哮、そして電撃の同時攻撃に巨体がよろめく。
それに耐え切れなかったのか奴は触手で軽くジャンプして俺たちと距離を取る。
軽くとは言っても着地時にはかなりの振動が起こるのだが…
「ひとまずは優勢を保ってるけど…あいつがどれだけ温存してるかわかんないね」
「アオイの言う通りだな正直なところ次、どんな動きをするのか分からない…」
「結構攻撃はしてるのにね…」
俺は奴を見る、先ほどから動かず睨み合っている状態だ…次はどう来る?と俺は奴の足が少し地面にめり込んでいることに気付く…
「…!まさか!地中から!?」
まさかと思った時にはもうすでに遅く、俺たちはその瞬間に地中から飛び出した触手に打ち上げられていた。
「みんな大丈夫か!?」
全員がなんとか多少の防御は出来ていたものの5人ともが吹っ飛ばされてしまった。
そして、その触手はもうそこにはなくまた地中に潜っているようだった。
「このままじゃラチがあかねぇ」
また触手が地中から飛び出す。今度は喰らうことなく剣で弾く。皆も2発目は凌いだようだ。
「
俺は空中から攻めるべく、
俺は飛び上がり、奴へと向かう。
それに気付いたのか、奇声を上げた後次々に俺に向かって触手が伸びる。
しかし、下からも正面からも勢いが衰えることなく触手が迫る。「捌き切れない!」と思った瞬間、激流がそれらを薙ぐ。
「1人じゃ無理でしょ!!」
アオイとリヴァイアだ。
「ああ!そうだな!」
見るとダイチとハヅキも触手を相手にしながら奴へと向かっていた。
「ショウスケは?」
あいつがいない…地面を見下ろし姿を探す。俺の少し後方の辺りにショウスケはいた。だが、膝をつき俯いているようだった。
「あいつ…まさか…」
俺の脳裏に“気力切れ”の言葉が過ぎる。
しかも、そこへ触手が迫りさらにはショウスケはその触手に背を向けている。
「まずい」俺は急降下しショウスケの元へ向かう。
「速いっ!」
そう、このままでは確実に触手のほうが先にショウスケへ到達してしまう。
そして、今気付いた…ショウスケとの“リンク”が切れていることに…
「ショォオスケェェ!!!!」
俺は力一杯叫び危険を知らせるしかなかった…
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