第一章 第12話「決行前夜」
「ふぅ…」
「少し心苦しいがほぼ決まりだな…」
とつぶやきながら支部長室の前に立ちノックする。
「支部長!戻りました!」
「…入れ」
「はい」と言って支部長室へ足を踏み入れるとそこには
「あの蝶がウィルスマーカーにつくられた
少し興奮気味になっている、これは帰ってくるタイミングを間違えたようだ。
小さく「失礼しました」といって一旦部屋を出ようとする。
「待て、重要な話だお前もそこで聞いていろ」
「はい!」
引き止められてしまった…
そのまま支部長は話を進める。
「
淡々と支部長は続ける。
「分身を作る
「…今回の蝶はその弱点を補うような能力だった…」
「そうだ、しかもその蝶は発見されないように岩の下に隠れていた…いや“隠されていた”あの蝶が自ら岩の下へ入るのは困難だろうからな」
ここまで聞いてなんとなく何があったかは分かった、しかしひとつ俺には疑問点があった。
「すいません、支部長。仮にその蝶がウィルスマーカーがつくったものだとすると意図的にそのような能力を付けられるものなのでしょうか?」
「できる…そうだな」
と言って清水を見る。
「…はい、できます。正確には超高度な技術を用するので複数人のウィルスマーカーでの能力行使かそれと同等の機能を持った装置か何かがあれば可能です。」
「なるほど…」
今ので俺は確証を得た。
「で、そっちはどうだったんだ?」
待ってました、と俺は調査の成果を話す。
「はい、まず結論から言うと
清水が少し反応を見せる。
「ただ大門の研究所へ入ったところ、様々な情報が手に入りました。まず、大門は今息子3人を連れてどこかで研究をしていると言うこと。そして、大門はウィルスマーカーの研究をしていたこと、なんと何十人のウィルスマーカーの名前が載った名簿を持っていました、残念ながらこれだけで犯罪になります。必要なくなったのかそこに置きっ放しでしたが…」
そして俺は先ほど確証を得たことを話した。
「最後にこの写真を見てください。おそらく装置の設計図の一部です。はじめは何か分からず関係あるのか不安でしたが、さっきの清水の言葉ではっきりしました。」
「なるほど、それがウィルスマーカー複数人の能力と同等の機能を持った装置の一部と言うことか」
清水は下を向いたまま黙りこくっている。
「清水、お前も腹を決めろ…今のではっきりしたんじゃないか、少なくともお前の師である大門クニヤスが人為的に
主犯格ではなく“関与”か…ああ見えてやはり支部長はやさしさがある。
「清水、真実は本人から聞いてこい…捜索は国の機関に任せた方が速いだろう、ひとまず…」
と言ったところで清水が下を向いたまま口を開く。
「…支部長、私に心当たりがあります。」
◇◇◇
護衛の任務から3日、一度
「女子2人は買い出しに行ったし、ダイチも街の散策にいったし、あのバカは寝てるし…」
訓練所の真ん中に寝転がる。
「もうちょっと忙しいと思ってたけど案外暇なのかもな」
その時、訓練所の扉から1人の男が入ってきた。
「おっ暇そうだな〜」
「
第2隊の安堂リクだ、ハヅキの特訓の時にいいアドバイスをしてくれた。
「リクでいいよ」
「じゃあリクさんで」
リクさんは俺の横にどかっと座った。
「お前も暇なのか?」
「はい、みんな用事があるみたいで1人なんです」
「奇遇だな、俺もだ」
少しぼーっとした後急にリクさんが立ち上がった。
「ちょっと手合わせしないか?」
「え?」
「ぼーっとしてるよりカラダ動かしたほうがいいだろ?」
そうして、唐突に俺、
「
彼の気術ヴァイタリティは確か“
「
そして俺も気術“
「先に言っておくけど最初から本気でいくぜ」
「…どうぞ」
ニッと笑うと一瞬で間合いを詰めてきた、咄嗟に受け止める。
速い、想像よりも確実に速かった。
うまく弾き返す、数m後ろへ下がったと思うとまた凄い勢いで攻めてきた、攻撃的すぎる、猪突猛進、さながら猪のように突っ込んでくる。
一撃をかわすと俺も攻撃を撃ち込む、しかしすんででかわされた。
そしてお互いが剣を振るい、撃ち合いに発展する。両手剣での撃ち合いとは思えないスピードで剣を交わす。一撃一撃が重い、だんだんと手が痺れてきた。
俺は一旦距離をとる。
「やるなぁ」
「リクさんも」
お互い額に汗がにじむ。
「
リクさんが剣を変える。細身の刀身、まさにレイピアだ。
「
俺も細身の剣に持ち替える、グライダーなどで使われる乱流翼を参考にしたものだ。空気の剥離をなくすことで空気抵抗をほぼゼロにできる構造になっている。
先ほどよりも速いスピードでリクさんが間合いを詰める。そして俺もそれに応じる…またも激しい撃ち合いとなった。
訓練所に剣がぶつかり合う音が響きわたる。
両手剣の時よりも素早い攻防、一歩間違えば確実に負ける。
そんな時、訓練所へ誰か入ってきた。
「おおぉ、またタイミングが悪かったか?」
ピタッと俺とリクさんは動きを止める。
「
「何かありましたか?」
とその後ろに思いがけない人がいた。
「「しっ支部長!?」」
「なんだそのよくないものを見たような反応は」
「い、いえ…すいません」
「まぁいい、今いるのはお前らだけか?」
「「はい」」
「ひとまず新人と2隊を全員集めろ、重大な任務だ」
ー30分後
「これで全員です」
俺とリクさんはメンバーを呼び戻し、第1訓練所に集まってもらった。
「これから重大な任務を言い渡す。」
全員が支部長へ注目する。
「清水メグミの師である大門クニヤスの確保だ」
一瞬ざわつく、あの記事で見た人か…
「大門は人為的に
人為的に作られた…確かにウィルスマーカーは植物に
「新人と清水が大門の確保、2隊がそのカバーにあたれ!何か質問はあるか?」
1人が手を挙げる。
「なんだ
「先ほど“確定した”とおっしゃいましたが見分けがつくものなのですか?」
「ああ波長を見れば一発だ。自然に発生したものはそれぞれ波長が違う、だが人為的に作られたものは波長が全く同じなのだ、大型、蝶、他数件の
「なるほど、ふむふむ」
長内と呼ばれた人はメモ帳を取り出しせっせと記帳している。
「他、無いなら以上だ!」
そして隊長が口を開く。
「明日決行だ準備しておけ!」
「はい!」
解散したあと軽く自己紹介が行われた。
「第2隊隊長の長内ジュンイチです。気術は“
この人が隊長だったのか…よく見ると腰にショットガンのような銃を4つもぶら下げている。
大人しそうな割に少し物騒だな…
「私は
あの時リクさんを呼びに来た人だ、綺麗な白い髪をしている。
「ぼ、ぼくは
まさかのボクっ娘だと!?見た目も小柄で気弱そうだ。現にユキさんの後ろに隠れてしまった。
「この子すごいのよ?一級付与術使えるんだから」
いっ一級付与術!?確かあらゆる物質に属性を付与できるってやつじゃないのか!?
「で俺は安堂リク、そこの2人は知ってるだろうけど気術は“
そして、第2隊の先輩と少し話をした後それぞれ部屋に戻っていった。
「っとヒロト!」
「はい?」
リクさんだ。
近づいてきたかと思うとおもむろに気術を使う柄を取り出し、俺の頭をコツンっと叩いた。
「なっなんですか?」
「今の一本で今日の勝負、俺の勝ちだな」
「なっ!ちょっ!」
ニッと笑って走って行ってしまった。
ちょっと!と言いながらリクさんを追いかけ訓練所を後にした。
◇◇◇
「全然眠れない…」
時計を見るともう日を越えていた。
「大門先生が
考えれば考えるほど意味が分からなくなってきた。
「あの先生に限ってそんなこと…」
何か理由があるんだ、何か大きなことを抱えててそんな事をしてるに違いない。
私は自分にそう言い聞かせるも、今日は全く眠れなかった。
そして決行の時間となる。
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