第一章 第7話「初任務 その2」

「いくぞ!」


郷田ごうだ隊長の合図で俺たち6人はそれぞれの敵に向かった。


「まず全員で1発ずつかまそうぜ!」


俺はみんなに提案する。


「いいよ!」


「了解!」


インカムから声がした。


〈みなさん、弱点と思われる箇所が分かりました。下腹部に気力ヴァイタルが薄い箇所があります、難しいですがそこが狙い目です。〉


「「「了解!」」」


そして、俺たち3人は気術ヴァイタリティを発現させた。


「おいで!リヴァイア!」


龍の形をした、水の自然の怒りナチュラルビーストがアオイの腰につけていたビンから現れた。


避雷針ライトニングロッド!」


ダイチの周りに電気を纏った大きなはりが無数に現れる。


豪炎ごうえん!!」


俺も炎を纏い4つ腕のゴリラに向かう。奴もこちらに気づき応戦してきた。

それを見たダイチが針を飛ばし、ゴリラの体に突き刺した。


雷鳴ライメイ!」


とダイチの体からその針へ稲妻いなずまが走った。奴の体に電気が流れ、動きが少し止まる。

その時を逃すまいとリヴァイアとともにアオイがゴリラの顔面めがけ突っ込んだ。

チラッと聞いた話だとリヴァイアと近くにいればいるほど、気力ヴァイタルが共鳴してリヴァイアの能力が上がるらしい。


リヴァイアは水にならず龍の形を保ったまま奴の顔面に頭突きを食らわせた。


しかし、奴も倒れまいと1本の腕で耐える、そして残りの腕を今まさに攻撃しようとしていた俺に振るってきた。


「当たるかよ!!爆蓮花ばくれんげ!!」


俺はその間を縫うように降下しながら攻撃を当てる。そして、下腹部にさらに技を打ち込む。


紅蓮牡丹ぐれんぼたん!!」


燃え盛る炎の花が開く。

やはり、弱点だったようで叫び声をあげながら奴は吹っ飛んだ。


俺は炎を地面に叩きつけ着地の衝撃を和らげた。アオイとダイチはリヴァイアに乗って降りてきた。


「どうだ?」


「消えてないってことはまだでしょ」


〈みなさん気をつけてください。敵は今の攻撃でかなり興奮しています。〉


「ホアアアアアッ!」


奴が飛び起き、こちらへ走って来た。


「げっげんきだね…」


「倒しがいがあるってもんだな」


「そんな呑気に喋ってる暇ないよ」


見ると、勢いそのままに奴はタックルをかまそうとしている。

俺はダイチを見る。


「俺は思うに今、新人5人の中で一番火力を出せるのはダイチ、お前だと思う。」


「え!?」


「だからトドメはお前に任せる、俺たちはあいつをどうにか止めて隙をつくるからそこへ全力で電撃を食らわせてやれ」


「ちょっちょっと僕が一番火力出せるってどういうこと!?」


「俺の勘だ」


ニッと笑って見せる、俺はそのままゴリラに向かって走り出した。

アオイもそのあとに続く。


麗未うるみさんまで!」


「あのバカの勘、割と当たってるかもよ」


「そっそんな…」


タックルしてくるゴリラを止めるべく、さらに強い炎を纏う。


「…劫火ごうか


炎が唸うねる。


「イラプションッ!」


俺は拳を地面に叩きつける。

すると、目の前に迫っていたゴリラの足元から噴火の如く炎が噴き出した。

勢いに乗っていた奴は、足元をすくわれ盛大にこける。しかし、燃えながらも立ち上がろうとする。


「熱いだろ?冷やしてやろうか?」


と更に上からアオイとリヴァイアが攻撃をしかける。

リヴァイアが激流となって奴へ襲いかかる。滝のような勢いで奴を地面に叩きつけ、腕を締め上げる。


「「今だ!!ダイチ!」」


「もうっ!」


と言いながらもダイチが奴に迫る。

一瞬で空気が変わった…そして、晴れていた空にいつの間にか雷雲が現れゴロゴロと音を立てる。

ダイチが体に雷を纏い蒼白く発光する。バチバチと空気中を電気が走りだした時、一瞬あたりに静寂が訪れたかと思うと…


「…神業かみなり


ダイチが言葉を放った瞬間、雷雲から轟音とともに凄まじい雷撃が降り注いだ、その雷はゴリラの脳天を直撃する。

そしてそのまま気力ヴァイタルの粒子となって消滅した…


◇◇◇


〈皆さんお疲れ様でした。Aチームと合流して帰投してください。〉


「了解です。」


とインカムの通信が切れる。


発花たちばなくん、なんで最後ぼくにやらせたの?」


「ん?そりゃあさ、朝から見ててお前サポートばっかだったじゃん。隊長のときも攻撃してるようでリヴァイアの回復待ってたし、今もまず自分よりみんなが攻められるようにってやってたろ?」


「うっ…」


「だからお前の全力がどんなもんか見てみたかっただけだよ、さて合流しようぜ〜」


と俺は歩きだした。


「あたしも最後のはよかったと思うよ、さっ行こ」


「そうだね、ありがとう」


そして俺たちはヒロトたちと合流した。


◇◇◇


「よし、3人も無事任務完了だな!」


「余裕ですよ!」


「はっはっは!その調子で頑張ってくれよ!それと、残念なお知らせがあってだな!」


え?とみなが隊長を見る。


「帰りは歩きだ!」


「ええええぇ!」


どうやら、今支部に人がいないのと現場が近いため歩いて帰投せよと連絡があったようだ。


「まあまあ、トレーニングだと思えばいいんだ。さて帰るぞ」


俺たちは顔を見合わせしぶしぶ歩いて帰った。


ー1時間後


「言うほど遠くなかったがさすがに疲れたな」


と俺はみんなを見たが、女性陣2人はもう無理〜とへばっていた。


「よし、今日はもう終わりだ、みんなゆっくり休んでくれ。ただ夜中に自然の怒りナチュラルビーストが出た場合は叩き起こさせてもらうぞ」


最後の一言いらなかったと思うが、まぁ今人がいないからしょうがないと言えばしょうがないか…


そして、俺たちはそれぞれ寮へと向かった。


◇◇◇


「今日は疲れたね〜」


「ほんとどうにかなりそうなぐらい忙しかったね」


私たちは寮へ向かっていた。


「ん?大浴場だって、ハヅキ一緒に行かない?」


「いいね〜1回部屋よったら行こうか」


そして、着替えを持って大浴場に向かった。

大浴場の一角にある露天風呂に私たちは入った。


「はぁああ〜気持ちいぃ〜」


「露天風呂なんて久々に入ったよ」


夜空を見ながら疲れをとる。


「アオイちゃんほんとに髪綺麗だね」


「そう?ありがと、一応手入れとか大変なんだよね〜…」


とアオイちゃんがじっと私を見つめる。


「ところでお嬢さん、着痩せするタイプでは?」


「へ?」


スッと後ろに回られ胸へ手が伸びる。


「ちょっちょっと///」


「ほうほう、これはCぐらいかなぁ?ちょうどいいサイズ…」


「もうっ///」


と手をはらう。


「もうちょっといいじゃん、あたしのも揉ませてあげるからっ」


「いいってぇ、アオイちゃんのほうがあるんだから自分の触っててよぉ」


「自分のじゃあつまんないでしょ」


少しの間そんな感じでアオイちゃんとキャッキャしてから自分の部屋へ戻った…


◇◇◇


「さすがに今日は疲れたな〜」


「初日のくせに濃密すぎるんだよ」


「しょうがないんじゃないかな、最前線だし…」


男性寮に向かう3人。

ショウスケが風呂の方を見て言う。


「なぁ、みんな風呂どうするんだ?大浴場あるらしいぜ、行かね?」


「今日はいいよ、自室の備え付けのですましてすぐ寝るから」


「そうだね、ぼくも今日はいいかな」


と俺とダイチは遠慮する。


「そうかじゃあまた今度だな」


こいつ炎を使うからか熱いものが好きで、いつもああいう大浴場とかの熱い風呂に入りたがるんだよな。


「じゃあ明日」


と俺たちは自室へ入った。


…後に大浴場いけばよかったと嘆くのは言うまでもない。


◇◇◇


俺、清水しみずメグミ、支部長、司令長で会議が行われた。


「今回なぜあんなところに大型の自然の怒りナチュラルビーストが発生したのか、だが。あそこにたまたま気力ヴァイタルが溜まった植物が生えていたとは考えにくいんだな?」


「はい、発生した周辺と狭い範囲ですが都市部から発生地点までを歩いて確認してきましたが、発生原因の植物は1つも生えていませんでした。」


「つまり、誰かが意図的にあそこへ発生させたということですね、それについては清水さん、ウィルスマーカーとしてどう見ますか?」


「……」


「清水さん?」


「え?あっはい、恐らくはウィルスマーカーの能力を使ったものかと思います。ただそんな高度な技術を持った人がこの周辺にいたというのが驚きですね。」


「確かに、植物に気力ヴァイタルを付与できる人間はサブサイドか国の機関に身を置かなければならないという法律がありますからね。」


皆が考え込む。


「ふん、ここで考えてもしかたない、ひとまずはここまでにしよう。清水がみつけたゲートの件もあるからな、それでは解散。」


会議は支部長によって閉められた。あの人、会議嫌いなんだよな…

少し清水が気になったが、調査から戻ったすぐで疲れていたのだろう、そう思って俺も今日は休むことにした。

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