第一章 第3話「影炎」

俺たちは獣王ビーストキングを発動させている郷田ごうだ隊長を改めて見る、凄まじい気迫だ。

隊長が口を開く。


「2人の噂は聞いてるぞ、学生時代その強さから「影炎えいえん」と呼ばれ恐れられていたと」


「恐れられてたのか…」


「やっぱそこそこ有名なんだな俺たち」


そう、学生時代俺たち2人のタッグは最強と噂されていたのは知ってる。

大会で優勝を何度かして、サブサイドの自然の怒りナチュラルビーストの討伐も手伝ったこともある。おそらくそんなことが積み重なって、隊長が言ったように「影炎」という異名まで付いた。


「さぁ思いっきりかかってこい!」


隊長がそう言うと俺たちは気術ヴァイタリティを発現させた。


機械籠手ガントレット盾角たてづの”、アンド“緋焔ひえん”!」


俺は右腕を「盾角」という盾型の機械籠手で覆い、左手に緋焔という刀を持った。


豪炎ごうえん!」


ショウスケは燃え盛る業火を体に纏う。そして、


「「リンク!」」


俺たちが使った“リンク”、それは、2人で意思を共有し、お互いの気術をお互いに使い合う技術だ。

ショウスケは俺の影を燃やし「黒炎こくえん」を生み出し、俺はショウスケの炎を貰い「緋焔」に宿す。

この刀「緋焔」はショウスケとのリンクのための刀だ。ヒートポンプの原理を参考にしていて、炎を貰わなくても超高温にまでもっていける。少し刀身が大きくなってしまうのが俺はあまり気に入ってないのだが…


「いくぜ!ヒロト!最初っから飛ばすぞ!」「わぁってるよ!そうしないと勝てなさそうだしなぁ」


「なるほど…リンクか、なかなか高等な技術を使う」


俺たちは隊長にむかって駆け出した。


「来い!」


「「おおおおおおお!!」」


まずショウスケの炎の一撃。しかし、当然のように受け止められる。

受け止められた事を確認した俺は、すかさずその後ろから飛び出し刀を振り降ろす。


「はああああ!」


しかし、刃が通らない。


(この気力の塊ビーストキング、硬ぇ!)


一気に振り払われる。


「「くっ!」」


隊長が動く。

少し腰をかがめたかと思うと凄い勢いで突進してきた。

それを右腕の盾角で受ける。

重い、とにかく重い一撃。一瞬耐えられるか不安だったが耐えられなくはない、そう思った瞬間衝撃が走る。


「なっ!!」


後方にぶっ飛ばされた。物理と衝撃波の二段攻撃。ショウスケがなんとか受け止める。


「大丈夫か?」「ああ、流石に一筋縄ではいきそうにもないな」


そこへ、さらに隊長の追撃。飛び上がり、拳を振り降ろしてきた。


「「容赦ねぇなぁ」」


と左右に避ける、今まで俺たちがいた地面には隊長の拳がめり込んでいた。

避けたそのまま空中へ飛び上がり背後を取る。

息を合わせ、技を撃ち込む。


「「こく…」」


蓮花れんげ!!!」


黒蓮花、連続で爆撃を放つ“蓮花”の黒炎バージョン。全発当たれば相当な威力だ。


滅刃めつじん!!!」


黒滅刃、刀の刃を2倍の大きさにしてフルパワーで振り降ろす“滅刃”の黒炎を纏ったバージョン。こちらも相当な威力。


それは見事に背中に命中する。

流石にダメージをくらったのかフラフラと立ち上がる隊長。

まぁいくらなんでもくらってなければ心が折れる…というか立ち上がった時点で若干折れてはいるが。


「今のは効いたぞ〜」


と凄い気迫でこちらを振り返る。

そして獣王が1.5倍ほどに膨れ上がった。


「まだまだ」「ここからですよ」


とこちらもさらに火力をあげる。

ショウスケはさらに炎の火力を上げ、俺のサポートと黒い炎の刃を作り出す。

俺もさらに影の量を増やしショウスケのサポートと武具のクオリティを上げる。

緋焔もフルパワーで発熱させる、黒い刀身が赤熱し黒い炎に包まれる。


(おっと、少し熱くなってしまった…。ふむ…影炎の実力はこれからのようだな…)


突然、隊長が気術を解いた。


「「え?」」


「今日はここまでだ、忘れたか?まだ朝礼だぞ?」


「「あっそういえば」」


「お前らも気術を解け、あとリンクもな」


「「はい」」


まだまだ今日やることは沢山あるからなぁと隊長は見ていた3人も集める。


光丘ひかりおかは見てるだけだったが、今後の任務でその実力を見せてくれればいい」


「はい!」


「さて、朝礼というか実力拝見はここまでだ。少し休憩をはさんで、施設を見て回るからなー、10分後またここで。では解散。」


と言うと隊長は行ってしまった。


◇◇◇


第1訓練所をでると黒髪ロングの女性とピンクの髪のツインテールの少女がいた。斎條さいじょう支部長と北潟きたかた司令長だ。


「なんだ、ずいぶん熱くなってたじゃないか」


「見てらしたんですか…」


「ほんと新人達を潰しちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしながら見てましたよ〜」


と北潟司令長がぴょんぴょん跳ねながら言う。


「さすがにその辺の加減はできますよ」


「どうだ今年の新人は?」


「ええ、かなり期待できるでしょうね。影炎の2人はもちろんですがあとの3人もかなり実力はあるようですし」


「そうか…それは楽しみだ」


「それではまた新人を連れて伺いますので」


とひとまずそこを後にした。


◇◇◇


「お2人とも凄かったですね!!」


と隊長が行くやいなや速坂はやさかダイチが目を輝かせながら話しかけてきた。


この子、気が弱そうかと思っていたがそうでもなさそうだ。そういえば隊長との手合わせでも結構攻めてたっけ。


「リンク!初めて生で見ました!」


「おっおう、ちょっと興奮しすぎだ…」


うむ、好奇心旺盛だというのはわかった。


「しかし、サブサイドの第1隊隊長が俺たちを知ってたのは嬉しかったな、なぁヒロト」


「そうだな、そんなに有名になってる感じではないと思ってたが」


「よく言うよ、あたしらの時代であんたらを知らないやつの方が少ないよ。けどほんと噂通りのコンビネーションだね、うちのリヴァイアが全く敵わなかったのに」


麗未うるみアオイも話に加わる。


「麗未さんもビーストとのコンビネーション、バッチリだったよ」


「そう?リヴァイアとは結構長いんだ、ありがと。あとみんな、あたしのことはアオイでいいよ、タメなんだし。」


「じゃあ、アオイちゃん!」


とハヅキが後ろから抱きつく。


「アオイちゃんほんと綺麗な髪してるねぇ〜しかもいい匂〜い」


「んなっ!ちょっ!」


女子2人がキャッキャしてる。


((( いいぞ、もっとやれ )))


今、ショウスケとダイチとリンクした気がした…


そうして、他愛のない話をしながら10分の休憩時間を過ごした。

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