第一章 第10話「護衛任務その2 森」

約3時間の旅を終え森の入り口に立つ6人。


「さてついたわ、そうそうインカムは誰かが持っててね」


と付けていたインカムを手渡す。


「じゃあ俺が…」


と俺が付ける。


「じゃあ行くわよ、護衛よろしくっ」


と森の中へ入っていくメグミさん。

その後に俺たちもついていく。


しばらくすると少し開けたところにでた。


「第2隊が言ってたのはこの辺りかしら…」


と言ってメグミさんが目に手をかざすと黒目部分が赤紫色になり淡く光る。


「なるほど、植物にほとんど気力ヴァイタルが溜まってない…自然の怒りナチュラルビーストが複数発生したのはここで間違いないみたいね」


「わかるんですか?」


「ええ、ウィルスマーカーの能力で植物にどれだけ気力ヴァイタルが溜まってるか視えるの、でこの辺りの植物には気力がほとんど溜まってないってことは最近解放したか自然の怒りナチュラルビーストがいたってことになるでしょ?」


「なるほど」


それを駆使して調査してるってことか…


「ある一ヶ所にかたまってたって言ってたけどどこかしら…」


メグミさんが少し散策しはじめた時だった。


「っ!」


「…ヒロト」


「あぁいる、しかもここまで気力ヴァイタルを感じられるってことは相当長生きさんだ」


メグミさんも気づいたようでこちらを見てうなづいた。「まかせた」という事だろうか


「どっどうしたの?」


他の3人は気づいてないようだ。


自然の怒りナチュラルビーストだ、恐らく中型か小型…近くにいる」


〈どうしましたか?〉


インカムに声が入る。


自然の怒りナチュラルビーストです。そちらで確認できませんか?」


〈すいません、こちらでは確認できてません。カメラを起動したまま行動して貰えますか?〉


「了解」


俺はインカムに付いてる小型カメラのスイッチを入れる。


「さて、女2人はメグミさんの近くにいてくれ、俺たちで周辺を見てくる」


「…いや、ダイチはここに残っててくれ、広い範囲のカバーが出来るはずだから」


「うん」


「じゃ、あたしが代わりに行こうか」


「気をつけてね3人とも」


「おう」


そして、俺とショウスケとアオイで周辺を索敵することにした。


別れて3人で自然の怒りナチュラルビーストを探す…

小型か中型…それは間違いないと思う、大型以上ならひと目でわかるし、恐らくこいつは第2隊が来る前からいたはず…あの人たちが見逃す訳がない。


「いない…」


気配はする、だが見つからない…あとの2人も見つけられてない、こうなると恐らく小型だろう。

小型…どこから来るかわからない、奇襲もありえる、そんな緊張感の最中さなか目の前を影が通り過ぎる…

蝶だ、手のひらほどの蝶が頭上を飛んでいる。


「蝶か…」


俺は捜索に戻ろうとする。がもう一度蝶を見る。

あの蝶、何かおかしい…飛びかたもぎごちなく、しかもあの模様…まるで自然の怒りナチュラルビーストのような…と目で追っていくと異様なものが目に入る。


「何だあれ…」


木の枝と枝の間、そこにその蝶が何百、何千匹と集まって1mほどの大きさの塊を作り出していた。俺は2人を呼ぶ。


「ショウスケ!アオイ!」


その時、その声に反応したのかその塊が動きを見せる。ザワザワとこちらへ向かってきた。それは障害物など気にせず木の幹を削りながら向かって来る。

俺は咄嗟に剣を造りそれにむかって斬りつける。

上手くかわし何匹かやったものの全く斬った感触が無かった。

その時、インカムに連絡が入る。


〈月永くん。北潟きたかたです。そいつらはただの分身のようなもので、本体は別にいるようです。恐らく本体はかなり気力ヴァイタルを吸収してるようです。〉


「本体の位置はわかりますか?」


〈すいませんがこちらではやはり確認できないのです。余程遠くにいるのか、もしくは…あっ!来ます!〉


また蝶の塊が襲って来る。


七天抜刀しちてんばっとう!」


俺は背面に7本の剣を展開する。

周りは森、ショウスケのようにもともと炎の気術士ヴァイタリストではないから緋天ひてんを使うと調整できずに周囲を燃やしてしまう…被害を出さず、こいつらを止めるには…


雨天うてん!」


俺は手に両手剣を持つ、そしてその両手剣が水を纏い始める。

氷天ひょうてん”の要領で刀身を冷やし、表面に結露させる。そして、その水に影を入れコントロールする。それを繰り返しだんだんと水の量を増やす。

そして、迫り来る蝶の大群に雨天を振り下ろす、何匹かの蝶を斬りつつ蝶達を水の中に閉じ込める。その時…


「えっ?」


突如、水でできた龍がそれを呑み込んだ。


「リヴァイア?」


見るとショウスケとアオイがこちらへ向かっていた。


「アオイ、大丈夫なのか?リヴァイアが食べたんだけど…」


「だいじょぶ、だいじょぶっリヴァイアがそんな簡単にお腹こわすわけないでしょ」


「そうなのか…まあ分身らしいし大丈夫なのか…」


リヴァイアを見るが何ともなさそうだ。

すると、インカムに連絡が入る。


〈お疲れ様です。先程言いそびれましたが、本体は遠くにいるか、もしくは“地下”にいます。〉


「地下…」


〈はい。地下に潜られると気力ヴァイタルの波長が遮断されて捉えられないのです。しかもこちらで全く波長が捉えられないということは、地下の密閉された所にいると考えられます。〉


「遠くにいるっていうことはないのか?」


〈そうですね、発花たちばなくん。それも一応考えられますが、もしそうならそのインカムから半径10km以上離れたところにいるということになります。それで分身があの攻撃力となるとそれは考えにくいですね。見たところ周囲の気力ヴァイタルを吸収してもいなかったようなので。〉


「もし遠くにいたらバカ強えってことか」


〈そうです。もし遠くにいるとしたら、第3支部総動員で行かないといけないレベルです。〉


「それやばいね」


〈これで私は一旦指示から離れます。御武運を。〉


「「「はい」」」


さて、どうするか…あっちも気になるし一旦集まった方がいいかもしれない。


「一度戻ろうか、あっちに何かあるといけないから」


「ハヅキもダイチもいるから大丈夫だろ」


「情報を共有しとかないと、それにあっちに本体が出たらもしもがあるだろ?」


そして、一旦俺たちは3人の元へ戻ることにした。


◇◇◇


月永くんたちが自然の怒りナチュラルビーストの捜索に行った後、私たちは周辺に警戒態勢を引いていた。


「周りを電気針で囲ったから地上からの進入はすぐ分かるよ。」


「ありがと、私はいつでも光球スフィアを全員に発動できるようにしておくから。」


と私はいまだ調査をしているメグミさんの様子を見にいった。


「何か分かりました?」


「う〜ん、この岩が怪しいんだよねぇ」


と目の前にある高さは膝ほどで約1mほどの大きさの岩を見て言う。


「何かおかしいんですか?」


「この岩の周りの植物だけ他とくらべて気力ヴァイタルが溜まってるの、もしかしたらこの岩に何かあるのかもしれない」


その時、遠くで声がした。


「ショウスケ!アオイ!」


「月永くんだ!」


何かあったのだろうか、速坂くんも周りを警戒している。

ふと見上げると少し上空を蝶が飛んでいた。


「何?あの蝶…」


フラフラと月永くんの声のした方へ飛んでいっている。


「メグミさん!あの蝶なんか変じゃないですか?」


「え?」


メグミさんを呼ぶ。


「あの蝶、気力ヴァイタルでできてる…」


「え!?じゃあ自然の怒りナチュラルビーストってことですか!?」


「そうだと思うけど…なんか変だね。さっきの月永くんと関係あるのかもしれない」


「攻撃してみます!」


と私は気弾を放った。

すると、なんとも呆気なくその蝶は消えてしまった。


「…あれ?」


「ふむ…あれは分身かなにかだろうね、となると本体がどこかにいることになるけど…」


メグミさんはあの岩を見る。


「もし、彼らも分身と闘っていて、司令部も本体を見つけられてないとすれば本体は密閉された空間にいる…そう、例えばこの岩の下とか…」


「え!?」


「どうしたんですか?」


「速坂くん、この岩どけられる?」


「はい」と言って速坂くんは電撃を岩へ放つ。

岩は吹っ飛び、そしてその下から1匹の蝶が現れた。


「やっぱり…しかも気力ヴァイタルの鱗粉を撒いて植物に気力を付与してる…」


気力を付与…つまりこの間の中型複数発生はこの蝶によるもの。恐らく初めは弱い自分を守るために本能的に鱗粉を撒き仲間を発生させていた。けど、生き延びてしまったが故に私たちに気付かれてしまった。


「キィィィィィィイイイ!!!」


その蝶は突然森に響き渡るような声で鳴いた。

すると何処からともなくフラフラと分身の蝶が現れ、本体に群がっていく。


私たちはその蝶と闘うべく戦闘態勢に入った。

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