第二章 第7話「三人目」
報告を終え、俺たち第4隊は昼食を取りながらアオイの話を聞いていた。
「でね、アズサさんに“お前はリヴァイアを信頼できてない”って言われちゃって…ん〜みんなには言ってもいいかな、実はあたしねリヴァイアと出会ってすぐにリヴァイアを暴走させかけた事があったの…まぁ原因はあたしの管理不足なんだけど」
アオイはグラスの水を覗き込みながら話を進める。
「それでその時に友達をケガさせちゃって、そのトラウマが今も残ってたんだね…あたしは心のどこかでリヴァイアに恐怖を覚えてたのかもしれない…」
そこでスッとアオイの声のトーンが変わる
「でもすごいね、アズサさんはそれを見破ってあたしに気づかせてくれた、面と向かってハッキリ信頼できてないなんて言ってくれた…アズサさんがいなかったらずっと気づかないままだったかもねっ」
「第1隊がそれだけすげぇってことだな」
「そうだねっ」
「何はともあれ、これで
アオイは精神的な変化が発現のトリガーになったみたいだし、そのあたりが重要なのかもしれないな…てなるとショウスケはなんでだ?ほんとに“勝ちたい”って気持ちだけで発現できたんだろうか
「第1隊の人たちも任務行ってるみたいだし僕たちだけで特訓でもしてようか」
「そうだね、頼りっぱなしっていうのも良くないと思うし、ちょっとでも私たち自身の
ハヅキが立ち上がり拳を目の前に突き出す。
「じゃあとりあえず解散で、各々やりたい事もあると思うしな」
そうして俺たちは各自訓練所へと向かった。
ー第1訓練所
「光を…奪う…」
私は未だその言葉の意味が分からずにいた。
「あーー!もうわかんない!」
私はその場にうずくまる。
「…精神的要因が必要なんだとしたらあんまり考えてもしょうがないのかも…」
私は小さくため息をつき、立ち上がる。こういうすぐ切り替えられるところは自分の良いところかもと自分で自分を褒めながら
「こんな感じかな…」
気弾たちを操作する、1つの気弾が小石を宙に浮かせそれを別の気弾が弾く。
昨日、イズミさんが提案してくれた新技、防御と攻撃の両方を兼ねたその名も“クロスバレッズ”
使い捨てじゃなくて永続して周囲を飛び回り、かつ太陽光があるところでは光を吸収してより強くなる技、たぶんこれが私の基本型になると思う、月永くんの“
「1人じゃあんまり練習にならないな…」
誰のところへ行こうかと考えた時に真っ先に浮かんだのは月永くんだった…
「うぅ…」
頭に浮かんだ月永くんの顔を振り払い、いや、今は迷惑かも、と何かと自分の中で理由をつけて私はアオイちゃんのいる第2訓練所へ向かった…
ー第2訓練所
「アオイちゃ〜んいる〜?」
私はアオイちゃんを呼びながら第2訓練所の扉を開ける。
「ん?どうしたのハヅキ?」
「いやぁ1人じゃ練習にならないな〜と思って」
「いいよっ付き合ってあげる、それにあたしもリヴァイアとだけじゃ気力切れが怖くて
「私との練習ではできれば発動して欲しくないけど…」
あんな圧倒的なの私なんか相手にならないんだろうな…
そうして、私とアオイちゃんは実戦形式で練習することになった。
「こうやってハヅキと面と向かって闘うのはじめてだね!」
「ちょっとは手加減してよ?」
お互い気術を発動させる。
「クロスバレッズ展開!」
「
アオイちゃんは早速攻撃を仕掛けてくる、アオイちゃんの周囲にいくつか現れた水の球からビームが発射される。
私は3つの気弾を三角形に集め結界を張る。
「防御は最小限に…すぐに攻撃に転じるっ」
ビームを防いだのを確認するとそのまま攻撃へ移る。
「ホーリー・レイ!」
2本の光のビームをアオイちゃんへ向けて放つ。
アオイちゃんは即座に槍を出現させ、その槍でビームの軌道を変え凌ぐ。
「いくよ!ハヅキ!」
そう言うとアオイちゃんとリヴァイアは私との距離を一気に詰める。槍の猛攻。私はそれを3つの気弾で弾き返しながらカウンターを狙いにいく、しかし
「っ!!」
そう、アオイちゃんにはリヴァイアがいる。完全に空いていた脇腹めがけリヴァイアの尻尾が襲いかかってくる。
「
ギリギリで光球を展開し体への直撃は防ぐ、けど私はそのまま吹っ飛ばされる。
「ハヅキ、大丈夫?」
「ま、まぁこれくらいは…」
私はすぐに立ち上がり攻撃態勢に入る。
どうにか、動きを止めて一気に
「
アオイちゃんとリヴァイアをまとめて結界の中へ閉じ込める。その瞬間、いくつもの術式を展開する。
「何これ!出れない!」
アオイちゃんは槍を突き立てたり、たいあたりしながら結界を壊そうとする。
「360度全方位光弾!展開!」
内部結界の周囲に数えきれないほどの光弾が現れる。
「発射!」
そして、その光弾群を放つ。
「さすが、ハヅキ…なかなかやるね」
そう言いながらアオイちゃんは内部結界にトドメをさし身動きが取れる状態になる、けど、この光弾はかわせないはず…
「
その瞬間、周囲に衝撃が走り私の光弾は全て掻き消された。
「…青龍の鎧」
一度見たことはあるけどやっぱりその姿は美しくそして、恐ろしかった。
アオイちゃんの右手から大量の水が溢れ、その水が右腕を覆う。そして、その右手をこちらへかざす、危険を感じた私はすぐにクロスバレッズを防御態勢にする。
水が放たれる、クロスバレッズで受ける、けどその威力はハンパではなかった。
気付いた時にはクロスバレッズが後方へ吹っ飛んでいた。
「あれ?」
さらに三叉の槍が迫り、私の目の前でピタッと止まる。
「あたしの勝ちね」
「そっそれはずるいよ…」
アオイちゃんが変身を解く。
「いやぁこれがなかったら危なかったね〜」
アオイちゃんは笑いながら言うものの少し息が切れているようだった。
それから数時間、技の練習をしてその日は解散した、私は失った気憶のヒントをなにも得られぬまま…
◇◇◇
合同訓練まで1週間に迫った今日、未だ僕たち3人は失った気憶を発現できずにいた。
今日こそはと僕は霧ヶ峰さんと第3訓練所へ向かった。
失った気憶の発現には精神的要因が必要…今一番有力な方法だけどそれが正解かはわからない、麗未さんの時もそうだけど確かにそれは大きかったのかもしれない…けど結果的にはリヴァイアとの調和率の問題だったし…
「速坂っち、始めるっすよ」
「あっはい!」
とにかく僕も集中しないと…“全てを見透かし掌握する”…
「残り少ないっすからね、本気でいくっすよ」
そう言って霧ヶ峰さんが目の前から消える、何回かやってきたけど捕まえられたのは1回だけ…その時の方法でやるしかないか
僕は射程距離にある木全てに針を飛ばし、刺す。
そして、少しでも動きを感じられたところに一気に電流を流す。
「もっと情報が得られればいいんだけど…」
僕は目を閉じ針に意識を集中させる。
ひとつの針が振動を捉える。
「いた!」
その木周辺の針全てを放電させる…しかし、電撃が走った音だけが虚しく響く。
それから次々と振動を捉えては放電してを繰り返すが姿すら見えない。
ふと、あるひとつの針から異様に鮮明な周囲の情報が伝わってくる、その針の周辺に何がどのようにあるかどんな動きをしているかがはっきり分かる…
そして、その時遂に僕の脳裏にある記憶が浮かんだ。
「これが…僕の…」
ードクンッ
「失った気憶!!」
ードクンッ
僕は全ての針に集中する、まるでこの周辺を上から見ているような感覚…見える…霧ヶ峰さんがどこをどう動いてるのか…
「そこ…」
刹那、針から針へ凄まじい電撃が走る。予想以上に大きい電撃に僕自身も驚く。
しかし、それもかわされた…けど見えている、霧ヶ峰さんはギリギリでかわして地面へ降りた、9時の方向…3本木が並んでいるところへ向かっている。
僕は動き始める、電撃を放ちながら霧ヶ峰さんを追い込む。
「おっと、どうやら覚醒したみたいっすね」
「もう逃がしませんよ」
この訓練で始めて霧ヶ峰さんと対峙する。
僕は逃すまいと針で霧ヶ峰さんを囲む。
「この熱波を防げるっすかね!」
霧ヶ峰さんが熱波を放つ、すかさず針を集め僕の前で円の形を形作る。
そして熱波がぶつかる瞬間に放電し相殺する。
爆音…気づけば僕の背後はほとんど更地になっていた。
「やば…」
「わぉ!あれを防いだんすか!それは予想外っすね」
「…逃げないんですか?」
「これだけ俺を追い込めたんだから大合格っすよ!」
その時ふっと気が抜ける、途端目眩がして僕はそのまま倒れてしまった
◇◇◇
目を覚ますと僕はどこかのベッドで寝かされているようだった。
「おっ起きたか」
聞き慣れた声のする方へ向くと月永くんがいた。
「大丈夫そうか?」
「まぁなんとか…」
「なら良かった、もうすぐ飯運んで来てくれると思うからな」
ご飯…外を見るともうすっかり暗くなっていた。
「じゃあ俺も飯食ってくるから、ゆっくりしとけ」
「…うん、ありがとう」
月永くんは部屋をでて、僕は1人になった。
全てを見透かし掌握する…あれはそういうことだったのか…
超音波の反射原理、針に電圧をかけて超音波を発生させ、その反射で周囲を見る、そして結果的に大量の電気を帯びた針は攻撃力を増す。
さっきできなかったけど電磁波も絡められるみたいだ
僕は喜びを噛み締めながら立ち上がり「よしっ!」と両手を天井へ向ける。
その瞬間夕飯が届き僕は赤くなりながら慌ててベッドに戻るのだった。
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