第二章 第3話「獣王と虎娘」
「なるほどなぁ」
イズミさんは腕を組みうんうんと頷く。
「サブサイドに入るために攻撃技を習得し始めたわけや、まぁなんでサブサイドに入ろうと思ったかは一旦置いとくとしてやなぁ…」
ニヤニヤしながら私を見る。
「うぅ…」
「とにかく、一回その技見してみ!話はそれからや」
と言うとイズミさんは少し離れて私と対峙する。
「ただし、うちの攻撃をかわしながらやけどな…」
するとイズミさんは気力を纏い始める。
手と足には鋭い爪、目は鋭くなり、獣耳と尻尾が現れる。そして前傾姿勢で構える、その姿はまさに虎…
「手加減はするからうちに攻撃あててみぃや」
イズミさんは床を蹴り私へ迫る。
私もそれに応じる。
「
数個の光の弾をイズミさん向けて放つ、しかし、当たり前のように避けられる。
すでに目の前までイズミさんは迫っていた。そして、爪を振り上げる。
「
私は防御に入る、光の球が私を覆った。
しかし、イズミさんの爪が光球に当たった瞬間、私を覆っていた光は消えた…
「え!?」
私は後ろへ飛び退く。
「何、今の!?」
弾かれるでもなく、割られたわけでもなく、消えた…跡形もなく光球が無くなった。
イズミさんはニヤっと笑ってさらに攻め立ててくる。
「
私はイズミさんへ外部からのアクションは通り抜ける結界を張る。
それを張った瞬間、360度全方位から光弾を放とうとする。
「まだまだやね…」
とイズミさんは動ずることなく軽く爪を振る。すると、また結界が消された。
そして、光弾もスルッと抜けられる。
あっという間に間合いを詰められた。私の顔の前でピタッと爪が止まる。
「うちの勝ちやで」
私はへなっとその場に座り込む。
「なんですか…その
「“
「術式解除…」
「せや、バリアや結界系の気術は元は術式やからうちには効かへんで、この爪で触れれば一発や。ただ
つまりアヤカちゃんなんかが良い効果を
そんなことしなくても十分強いのだろうけど
「さて、どう思った?」
と私に質問を投げかける。
「どうって…手も足も出なかったです」
「この爪がなかったら勝ってたと思う?」
「……思わないです」
実際その通りだった。
「ハヅキちゃんはサポート系の展開、詠唱はかなり早い、それは保証する。けど、それ以外が遅すぎるんや」
「うぅ…」
そうはっきり言われると凹む…
「ただ、それは当たり前のことでこれからどうとでもなるし、うちがどうにかしたる!」
今初めてイズミさんが頼もしく見えた。
「さぁ技の特訓やで!」
◇◇◇
激しい衝突音が響く。
「お前の本気はその程度かぁ?」
「まだまだぁあ!!」
燃え盛る炎と巨大な獣がぶつかる。
俺は飛び上がり郷田隊長目掛け技を繰り出す。
「崩れ牡丹!!」
しかし、郷田隊長はそれを受けきる。
「ぬぅうう!」
一旦距離をとる。
「マジでバケモンじゃんか…」
息切れし始めてる俺に対して全く体力の減りが見えない、なんなんだこの人は
「さぁどんどんこい!お前は闘いの中で進化するタイプだ!全て受け止めてやる!」
「おおおおおおお!!!」
受け止めてやる?そんなもん粉砕してやる!という思いで拳を放つ
「
「
拳と拳がぶつかる、いやその瞬間俺は後方に吹っ飛ばされる。
俺は負けじとすぐに地面を蹴りまた郷田隊長へと突っ込む。
全力で攻撃を叩き込む、防がれようがいなされようがひたすら叩き込む。ある瞬間、隊長に隙が見つかる、俺はそれを見逃さなかった。
足に炎を纏わせ隊長の脇腹へと渾身の蹴りを放つ。
「ほう…今のはなかなか効いたぞ」
そうは言うものの郷田隊長は余裕の笑みを浮かべていた。
「くっ!!」
「まだいけるよなぁ?」
「まだまだ足りない…もっと強く、速く、熱く!!」
ドクン…
俺はフルパワーで炎を練る。
ドクン…
その時突如ある記憶が頭に浮かぶ…
ドクン…
体が熱い、初めての感覚…
けど、これなら…いける!
「ほぅ…もう覚醒したか…」
俺を包む黄金の炎
「モード“
◇◇◇
「まだまだ遅いなぁ」
ハヅキちゃんから数発の気弾が放たれるがどれも遅く、弾き返せるほどの威力…最初よりは良くなってはいるもののこのままではこの上にはいけんやろな
さっきから気弾の雨だったりなんだったりを撃ってきてるけど簡単にかわせてしまう。
「今の状態じゃこれが頭打ちかもしれへんなぁ」
「どういうことですか」
「そのまんまの意味やで」
うちはこのままでは現状が変わらないと思い打ち明けることにした。
「もう本題に入ってもええかな…」
「本題?」
うちは能力を解きハヅキちゃんの前に立つ。
「うちらが第4隊を訓練してる理由や」
ハヅキちゃんは不思議そうな顔を浮かべる。
「最前線合同訓練のためじゃないんですか?」
「まっそれもあるけどそれだけじゃわざわさうちらが訓練する必要、ないやん?見てる限り今のままでも割と闘えるとおもうで?」
「じゃあ…」
うちは人差し指をピッと立ててみせた。
「もういっこ超大事な理由があんねん」
◇◇◇
強烈な拳が次々と放たれる。
先程のように防いでいるだけでは完全に防戦一方になってしまうな…
「
これも防ぎきるも、元いた位置から随分と後ろへ押される、その証拠に地面には二本の足の跡が残っていた。
「ふぅ…」
「どうだっ!」
「それはこちらのセリフだ、どうだ?その力は?」
発花は首をかしげる。
「なんか、急にこの力の使い方?というかそういうのが頭に浮かんだんだ」
「そうか…」
「何か知ってるふうだな隊長」
「そうだな、その力こそ俺ら第1隊がお前らを訓練するようになった真の理由…」
「真の…?」
「恐らくお前が一番早いだろうなそれを“思い出した”のは」
「もったいぶってないではっきりしろよ!思い出したってなんだ?」
これは少しいじわるだったかと内心笑う。
そして、発花を指差してはっきりと言う。
「その力の名は“
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