第一章 第20話「発足、第4隊」
あの事件から数日が経った。報告にさらに任務とここ数日はかなり忙しかったが、それも落ち着き俺は1人食堂でニュースを見ていた。
大門家の事件は公にはされず、サブサイドの人間だけが知っているいわば秘密となってしまった…
それもそうだ、人が
そんなことを思いながら、俺は支部長室へ向かう。大門三兄弟への処罰が決定したらしい、俺は代表で直接聞かされることになっている。
支部長室と書かれた扉を叩く。
「支部長!
「入れ」
部屋に入ると、支部長は椅子に座っており、机の上に一枚の紙を出した。
「それが大門の3人に課されたものだ」
俺は渡された紙に書かれた文字を見て目を見開く。
「サブサイド本部での無期間労働…?」
「おかしいと思ったか?」
「はい…これは言い換えるとサブサイド本部の監視下のもと死ぬまで働かされるということですよね…彼らのやったことに対して重すぎるのでは?」
「そうだな、労働といっても研究や調査の手助け程度だろうが、厳重な監視を引いた寮という名の牢屋にでもぶち込まれ、そこで残りの人生を過ごすことになるだろう」
「しかも、本部…」
そう、彼らを監視する程度なら支部にでもできることだ。それをわざわざ王都にある本部でやるということは…
その考えを支部長が遮断するように言葉を放つ。
「余りのめり込みすぎるなよ…それにもう決まってしまったことだ、お前1人が動いてどうこうできる話じゃない」
まるで心を読まれたかのようだった、支部長も同じ考えなのだろうか。
「王都に関しては今は忘れろ、それとお前を呼んだのは他に理由がある」
と支部長は机の引き出しから一枚の紙取り出した。そして、立ち上がり俺に眼光を突きつける。
「月永ヒロト!お前を第3支部第4隊の隊長に任命する!隊員は
「はぁ!?」
思わず声が出てしまう、何を言っているか一瞬理解できなかった。
「貴様、支部長に向かって“はぁ!?”とはいい度胸だな?」
「えっ!ちょっ!支部長!本気ですか!だって俺たちまだ…」
支部長は俺が言葉を発し終える前に言った。
「新人だろうがなんだろうが関係ない!サブサイドは実力がモノを言う!お前たちはそれ相応の実力を示した!ただそれだけだ!」
俺はハッとする。もう俺たちは認められた、サブサイドの看板を背負うことを許されたのだと。
「はっきり隊員としておいた方が何かと都合もいいからな、それにお前が隊長といったが今は仮だ、他の4人の誰かの方が向いていようものならそちらを隊長に据える」
俺は拳を握り締める。
「はい!!」
「ふんっ、では月永これに全員のサインをしてこい、これで第4隊は正式に第3支部の隊として認められる。」
俺は渡された紙を持って第4隊のメンバーのところへと向かった…
ーーー数日後、支部長室
「…以上で第4隊の報告とさせていただきます。」
「うむ、ご苦労」
俺たちは支部長への報告を終え、飯にしようと食堂へ向かう。
「しかし、ヒロト〜だいぶサマになってきたんじゃねぇか?」
「からかってんじゃねぇよ、それにまだ仮だっつったろ?」
「あたしはヒロトが隊長で全然いいと思うけどね〜」
「アオイは隊長業務とかそういうのが面倒なだけだろ」
「僕も月永くんが隊長でいいと思うよ?」
「私も私も!」
「からかってんのか本気なのかわかんねぇよ…」
第4隊として任務をこなし始めたと言っても、ただ俺がいじられるようになっただけで特に何も変わらずいつも通りという感じだった。
まぁそれが一番いいのかもしれないが…
任務の反省会を兼ねた食事を終えて、各自部屋に戻る。
「月永くん!」
「ん?なに、ハヅキ」
「明日、何もなかったら買い物に付き合ってほしいんだけど…」
「いいよ」
荷物持ちかな…
「よかったぁ!ちょっとした家具とかを買いたいと思ってるから助かるよっ」
予想は当たってたな、俺も何か買うか…
「じゃあ、明日の朝、寮の入り口で待ってるから!」
と言ってハヅキは女子寮の方へ走っていった。
そういえばハヅキと2人で買い物なんていつぶりだろうか…学生の頃は何するにも3人でだったけど、2人は無かったなぁ
「んーーっ」と少し背伸びをして俺も自室へと戻っていった。
ーーー翌日
時間通りに寮の入り口へ行くとすでにそこにハヅキの姿があった。
「おはよ」
「おはよう、月永くんっ」
ハヅキはいつも着ている服装ではなく完全に休日の服装をしていた。
「お前、まだ確実に行けるとは決まってないのに気が早ぇよ」
そう、まず司令長に任務の有無を聞かないと気安く出かけることはできない。
「それなら大丈夫だよ?さっき聞いてきたから」
「仕事が速いなぁ」
と言って支部へ行こうとしていた足を止める。
「じゃあ行くか」
「うんっ」
そして、俺とハヅキは街へと繰り出していった。
◇◇◇
「ねぇやっぱり僕もなの?」
「あたし1人じゃ変だと思われるでしょ!」
「尾行してる時点で僕がいてもいなくても変だよ…」
そう僕は今、麗未さんに連れられて月永くんと光丘さんのデート(?)を尾行している。
「別に普通に買い物してるだけじゃないの?」
「わかんないよぉ〜?第4隊のそういうのはあたしが管理しないと!」
ほんとに何言ってるのこの人…
「ほらあそこに入ったよ!行こっ!」
「はいはい」と僕は嫌々着いて行く。
昨日、なんでも欲しいもの一つ買ってくれるという誘いに乗らなければ良かったとすでに遅い後悔をしている僕だった…
◇◇◇
一方、ショウスケは…
「あれ?みんないねぇな??」
と支部内を彷徨っていた。
「もしやのもしやハブられたか!?」
少し考えを巡らせるが、まぁいいか…と特に気にもせず第1訓練所へと入っていった。
◇◇◇
「月永くん!これは!?動きやすそうじゃない?」
と服を手に取り俺の体に重ねる。
「あのさぁ俺の服なんてどうでもいいからとりあえず先にハヅキの欲しいもん買いに行こうぜ」
「これも、今回の目的なの!月永くんの服装なんかパッとしないし、いつもおんなじなんだもん」
「ほっとけよ!」
黒のインナーに白いワイシャツ、黒いズボン何がいけないのか…
「これは?」と南国の花の柄が所狭しと並べられたシャツを俺に渡す。
「お前本気か?」
「そんな怖い顔しなくても冗談に決まってるでしょ〜」
こいつ…と思いながらも結局いくつか服を買ってその店をでる。
「次はちゃんと欲しいの買いに行くからねっ」
「はいよ」
今日はいつにも増して機嫌の良いハヅキに連れられ街を練り歩く。
そして、帰る頃には俺の両手はいっぱいになっていた…
「買いすぎじゃね?」
「いいのっ次いつ買い物に出られるかわかんないんだから」
「まぁ確かに」
俺たちは世間話をしながら寮まで帰ってくる。
「荷物ありがとう、そこ置いといて。月永くん寮入れないでしょ?」
俺は扉の前にハヅキの荷物を置く。
と、ハヅキが背を向け喋りかける。
「今日はありがとね…こういうの久しぶりだったから楽しかった…」
「…?お、おう」
「…また、暇ができたら付き合ってくれる?」
「俺が暇ならいつでも付き合ってやるよ?」
「ありがと…」
と言うとハヅキは「よいしょ」と荷物を持つと「また明日ね」と足早に寮の中へ入っていく、その顔は少し赤いように見えた。
ふと、俺は振り返る。
「夕焼けか…」
とそこには綺麗な夕焼けが広がっていた。俺はそれを見ながら寮へと戻った。
◇◇◇
グシャッ!
っと麗未さんはもっていたジュースのカップを握り潰した。
「なんなの!あのバカ!ド鈍感ね!!!」
「ま、まぁ今のはそうだけど…」
「なんで今ので夕焼けの流れになるの!?」
と僕に掴みかかってくる。
「僕に聞かないでよ…」
「今までの言動見て分かんないの!?ねぇ!」
とさらに揺らしてくる。
「し、しらないってぇぇ」
「はぁ…ハヅキがかわいそう…」
「僕、もう戻っていい?」
と麗未さんに恐る恐る聞く。
「え?あぁ、いいよ、そういえばお礼はそんな本でよかったの?」
僕の抱えてる本を指差し質問してくる。
「いいよ、前々から欲しかったんだこれ」
「そう、じゃあ今日はありがとね」
と麗未さんは手を振り寮へ歩いていった。
散々振り回されたけど、たまにはいいかと思いながら僕も寮の方へ向く、すると、後ろから声がする。
「おう!ダイチ!どこ行ってたんだ?」
「発花くん、ちょっと…買い物かな…発花くんは何してたの?」
「1人で特訓してた」
「そうなんだ…」
この人はさすがだなぁと思う。そして、発花くんの話を聞きながら僕も寮へと戻った。
こうして、第4隊のつかの間の休息は幕を閉じた…
第一章「起こされた狂騒」 fin…
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