第16話 俺の美意識の中で銀色はとても美しいイメージがあって幼女もとても美しいイメージがあるのだから美しいの二乗で素晴らしいと思うが俺はロリコンではありません断じて

 そこにいたのは、地に伏せたピンク色のビキニの女性と、その目前に立っているクナイをくわえた銀髪の美幼女だった。


「半蔵子ぉぉぉぉぉおおおおお」


 あれが半蔵子か。予想通りのろりっこだ。銀髪なのは少し予想外だったが、隠密っぽい恰好をしていることであまり気にはならない。


「あ、姫様姫様。敵を倒しましたぞ」


 褒めて褒めて、と手をパタパタさせて駆け寄ってくる半蔵子。


「う……えっと……」

「姫様、どうしました?」


 半蔵子の無邪気な様子に、やすみちゃんはたじたじである。半蔵子は彼女の為を思ってしたのだろうことは分かるから、責めに責められないだろう。やすみちゃんが倒す、っていう場にいたかも不明である。というかどこにいて、どういうルートでここに来たのだろうか。全く、謎の幼女は困ったもんだぜ。何に困ったのか分からないけれど。

 そういえば――


「殺していないっすよ。気絶しているだけっす」


 倒れている女性の腕を取っていた姫子が大手を振る。


「当たり前だ。拙者は忍者。『不殺』を守り通すぞ」

「それはどっちかって言うとサムライじゃないか?」


 これも姫子が俺達の世界から持って来たのか。


「……うん。まあ。よくやった、な」

「えへへー。姫様姫様―」


 やすみちゃんが半蔵子の頭を撫でる。半蔵子は気持ちよさそうに目を細める。

 ほのぼのした光景だ。


「半蔵子。この調子で私達の後ろを守ってくれないか。先は私達が進んでいくから」

「ですが先の方に強敵がいると思われますが……」

「半蔵子」


 ガッと肩を掴む。


「私の先に立って守ってくれる人はたくさんいるが、私の背中を預けられるのはお前だけなんだ。だから頼む」

「……っ! 御意に!」


 とても嬉しそうに鼻の穴を膨らませて、半蔵子は姿を消す。本当に忍者の様だ。


「しっかし、やすみちゃんもやるっすね」


 いつの間にか傍に来ていた姫子の言葉に俺も同意する。


「ああ。このままだと半蔵子が先に突き進むことは確実だからな。下手したら大元まで倒しちゃう勢いだったし、上手いことを言ったな」

「あんな幼女を惑わすなんてひどい人間っすね」

「たらしだな」

「たらしっすね」

「ちょろいんなのに」

「ちょろいんなのに」

「あーあー、聞こえないなー」


 耳を塞いで首を横に振って、次の部屋へと向かっていく。

 第三の間。

 番人の名前も分からないまま、撃破。

 続いて。

 部屋の扉に書いてあるのは『四の間』。

 一の間の番人の言葉を信じれば、ここが最後の間である。

 通例であれば一番強い番人がいるはずである。が、他の三人の実力が判らない今は何とも言えない。

 果たしてやすみちゃんは勝てるのか。


「行くぞ」


 やすみちゃんが先頭に立ち、扉を開けた。

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