第24話 俺のヒロインとの別れ
後日談。
風雲城にいたロリは全員、元の城へと戻されることとなった。その際にやすみちゃんも協力してくれることとなり、ひとまずは安心という所だ。
そこでこの世界の危機というのは去った。
俺の役目も終わったということだ。
すれば当然、元の世界へと戻るわけだ。
その際、タケシ君にも戻るかを確認した。俺の能力と姫子の能力を合わせれば難なく可能であることだ。
だがタケシ君の回答は、
「僕はこっちの世界で暮らしていくよ」
「いいのか? もし存在感が無いことが原因なら、俺の能力で元に戻せるけど」
「ううん。それは関係なしで、この世界にいたいんだ」
「家族よりも好きな人を取ったか」
「言い方悪いけど、うん。つまりそういうこと。あっちはあんまり心配していなさそうだしね。いずれは戻るけど、今はこっちにいるよ」
「タンクトップ」
「その単語はやめて」
「おう、すまんすまん。ということで……じゃあ、これ持っておけ」
「何これ?」
「ボタン式の電波発信機だ。一発押せば俺の携帯に連絡が来る。もし帰りたくなったら伝えてくれ」
「分かった。けど、どういう仕組みなの?」
「んー、能力で作ったからよく判らないや」
「便利な能力だね」
「だな」
そういう経緯でこっちの世界に残ることとなった。冬香と幸せになってくれ。
ということで。
俺は自分の世界に戻るべく、やすみちゃんと別れの挨拶を交わしていた。
「ぐすっ……救世主殿は残らないのか……?」
「世界の危機を救ったからね。ごめん。元の世界に戻るよ」
「……まだ危機は去っていない」
「えっ?」
「私の心の中の平穏は……訪れていない……救世主殿がいなくなってしまえば……」
「……」
とりあえず、抱きしめた。
「っ!」
「ごめんね。一日だけだけど、魅力的なやすみちゃんと一緒にいられて、楽しかったよ」
「きゅ……救世主殿―っ!」
涙でボロボロになった顔面を胸に押し付けてくる。
少しして落ち着いた彼女は、俺から一歩離れ、微笑を浮かべる。
「……すまぬ。救世主殿は他の人の救世主殿でもあるのだからな。私が我儘を言ってはいけないな」
「ごめんね」
「謝ることではない。むしろこちらこそ謝らなくてはいけないことだ」
だが、とやすみちゃんは満面の笑みで右手を差し出してくる。
「謝罪で別れるのは良くない。だから、感謝で終わろう。――ありがとう」
「うん。ありがとう」
握手する。
その手の小ささとぬくもりを忘れない。
「じゃあ、お元気で」
「元気でね」
手を離し彼女に背を向け、俺は前方にある黒い空間へと足を踏み入れた。
一瞬で目の前の空間が変化する。
それは元の屋上だった。どうやらZ軸の設定は上手くいったようで、数十センチしか落下はなかった。もし数十センチ下だったらどうなっていたかは想像しないことにする。
さて、と。
女体化された武将。
カタカナがないだけでオーバーテクノロジーの世界。
案外楽しかったな。
「あ、透明障壁、買ってくるの忘れた。……ま、いっか。帰るか」
「ちょっと待つっす! 流石にちょっと待つっすよ!」
傍にいた姫子が全身全霊でツッコミを入れてきた。
「なんだよ?」
「いやいやいやいや! なんかすっごいあっさりしていないっすか!」
「あっさりって?」
「ほら! やすみちゃんとはあんなに濃厚なお別れしたのに、私とはそういうのないんすか!」
「何で?」
「何でって……何でっすか! っていうかさりげなく一緒にいたのに、驚きの一つもないんすか!」
「ああ、うん。ブラックホールだけ作ってあの場に残っていれば、っていう話?」
「そうっす! 私は別に一緒に行かなくても良かったのについてきているっすよ!」
「そうだね。そういうのも知ってたから、驚きはないよ」
俺は深く溜め息を吐く。
「だって君――あの世界にいる気なんかさらさらなかっただろ?」
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