第4話 俺の小学一年生時代

 小学一年生の頃。

 ついに恐れていた出来事が起こってしまった。

 幼稚園では奇跡的な確率で起きなかった。

 しかし、さすがに人数が多いと、回避できなかった。

 ……そう。

 

 俺のクラスには――

 

 ……いや、流石に一クラスに四人の佐藤は異常だろう。一人も佐藤がいないクラスももあったことから、何かの陰謀を感じていた。

 さて、佐藤が同クラスに四人もいて何が困るかというと、そこで俺の体質である。


「佐藤――」

「はい!」


 俺は遮るように手を挙げる。

 先生は困ったような顔をして、


「あらあら。あいうえお順では確かに君だけど、でも、まだ名前の最中で……」

「俺は俺だからいいんです。それより、次お願いいたします」

「? まあ、いいでしょう」


 首を傾げつつ、先生は点呼を再開する。


「では、佐藤の次は――」



「『俺』」



 ……ごめん。佐藤タケシ君。

 君が影薄くなったのって、俺のせいなんだ。

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