Page16.甘くてとろけそうな・2
「ん、あっそうなんだ、
『うん、そうなんだぁ~! まぁたぶん実家に顔出して色々小言とか言われたりするんだろうけどね。その帰りに
電話の向こうで甘えたような声を出す彼女の言葉に、思わず笑う。
相変わらず、真彩は真彩だ。
大学に入ったときに出会って、それから何となく意気投合して一緒にいた友達。どこか頼りなさげで、よく言おうとすれば庇護欲をそそるっていう言い方が1番いいのかな――色々聞いているのが嫌になるような言われ方もすることがあったのも覚えてるけど。
だけど、見てないようで色々周りを見ている彼女は、私が傷ついたりしたときに拠り所になってくれたり、困ったときに普段ボーっとしているのが信じられないくらいの行動力で助けてくれたりもした。
『行動力だけはね、呆れられるくらいあったからさ』
その笑顔に何となく感じた影からは目を背けて。
たぶん、色々なことを察せていないふりをして。
私は、大学にいた4年間のほとんどを、真彩と過ごしていた。その間に色々なものを手放したりしたけど、それでも真彩との時間は大事にしながら。
卒業とか就職をきっかけに段々離れていって、たまに聞く近況報告の後ろからいたずらっぽい微笑む低い声が聞こえたりして何となくそれ以上連絡をとる気を失くしたりしながら、今に至って。
それでも、やっぱり久しぶりに会えるのは嬉しい。
もう何年も電話だけのやり取りだったから、少しだけ緊張するけど、それでも、楽しい時間を過ごせたら……。
そう思ってたんだけど。
どうやら、私の考えは甘かったみたいだった。
ポップコーンを買って戻った私の目に映ったのは、何か裏のある微笑みを浮かべて何か
思わず、胸がざわついた。
何か言うべきだったのは確かなのに、何も言えなくて。私は、2人が話を終えたくらいのタイミングを見計らって戻ることしかできなくて。
風香と真彩、たまたま2人が同じ映画を観たがってたから……なんていう理由で選んだだけの映画の内容なんて、入ってくるはずがなかった。
風香も、どこか上の空なのが胸に痛くて。
「あー、楽しかった! ねぇ絢音、次何しよっか!」
そんな中でただ1人楽しげな真彩の笑顔に曖昧に言葉を返している自分が、少しだけ嫌になった。
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