二人の勝負
「おめでとうございます。まさか
緑色の
「
マイクを渡されて、いつもの調子でケイが言った。
そのあと、世界を
キャロルは、ケイをじっと見ていた。青い瞳が
ケイは、手の甲を向けて力を入れているようなポーズを取り、笑いを誘う。薄いピンク色のワンピース姿の少女は、メッセージのあとは
グレーに近い紫色のワンピース姿の少女は、隣を見つめている。
「……さきほどの言葉は、どういう意味だったのですか?」
キャロルは、
「人間やめてる、ですか? 人間を
「なるほど。……
まだお昼には早い。キャロルは、
ケイは、
みんなが笑う。
「気分が収まらないなら、どうだ? これから
フリードリヒが
「いいね。でもどこで?」
「
ジョフロワが答えた。スーツ姿で
「よし! いくぞ、お前ら。全員ボコボコにしてやるぜ」
ケイが
「……」
「大丈夫だよ。怖くないよ」
ナイナが表情を緩めた。金髪でおかっぱのような髪型。ゆったりとした服で、十代前半に見える。
年齢を聞いていなかったことを、キャロルは思い出した。
「はっはっは。いいね。行こう」
ダニオは陽気な
プロゲーマーたちを誘おうと、
「残念。これから
「またな」
しばらく手が離せないらしい。ヴィーシとユクシに続いて、全員から手を振られた。
ドームを出るキャロルたち。
エリシャは悔しがっている。ウェーブした髪をなびかせ、薄着で肌の
「ドリルで倒したかったな。
「ロマン
ボニーは相手を
サツキはケイの隣を歩いていた。ミドルヘアが
ヨウサクたちは来ていなかった。
キャロルは、アサトの隣を歩いている。グレーのシャツ姿の少年は何も言わなかった。
ホテルのロビーを通り過ぎ、エレベーターで上へ向かう。
和風の大部屋に着いた。
「さすがに、ホノリさんやユズサさんは呼べないかな。いや、
アサトはどこかへ行った。周りの人たちが何かを言っている。
キャロルの頭には入ってこなかった。
フリードリヒと戦い、動きがおかしいぞと遠回しに言われた。
まだその場にいたため、追いかけてこいと言われて、キャロルが部屋を出る。
部屋を出たものの、キャロルの足取りは重い。
どこに行けばいいのか、分からなかった。エレベーターのほうに向かっていると、アサトの姿を見つける。
「……ごきげんよう」
「はい。ごきげんよう。どうかしたんですか?」
アサトは、すこし
「ホノリさんやユズサさんとは……親しいのですか?」
キャロルは、眉を八の字にして聞いた。
「どうでしょう。最近、知り合ったばかりなので
「……こちらに来るようにと、呼ばれたのですか?」
キャロルが詰め寄る。
「ええ、そうなんですけどね。気が向いたらっていう
特に表情は変わらない。アサトの言葉はあっさりとしていた。
「すこし……外でお話ししませんか?」
少女が、相手をじっと見つめながら言った。
「はい」
少年が
ホテルの外に出る。近くを流れる川の前にやってきた。
「……その方達のどちらかが、お好きなのですか?」
アサトは、照れたような表情になる。
「いえ。実はまだ、
「実は……わたくしも、よく分からないのです」
キャロルも
「父さんは色々言うけど、分からないことだらけだ」
グレーのシャツ姿の少年が、困ったような顔で
「まだ、わたくしたちには……分からないことが
十代前半の少女は、
「もし、分かるときが来たら、会いに行くよ」
真面目に言ったあと、
「……わたくしも。どちらが早いか、
少女は右手を差し出して、少年はその手を
「一回戦負けは、もう勘弁してほしいですよ」
二人は声を出して笑った。
「……ところで、普段どおりの
キャロルにとって普段どおりの
「いえ。やはり
アサトが逆に聞いた。
「わたくしは……普通の女の子ですわ」
「どうやら私は、勝手に変な思い込みをしていたみたいですね。ごめんなさい」
「もう。普通に話して欲しいよ」
キャロルは、みんなの
「うん。そうするよ」
アサトは普段どおりの
「いま、変な感じでしょう? ……私から見たアサトも、変だったよ」
キャロルは
「普段から使ってない
「そうですわ。普段どおりが一番ですわ」
金髪ロングヘアの少女が、普段どおりに言った。
「そう考えると、
短髪の
「
「ちょっと、よく分からないんだけど、ひょっとしてもう
アサトは
キャロルが
昔読んだ絵本の
少女は嬉しそうに笑う。
「ちょっとみんな、どこ行くの?」
そのままの姿勢で、離れていこうとする
「え? おかまいなく」
「見てたよ。自分からいったよね。がばっと」
ツインテールのユズサが、立ち止まって口を開いた。
「さすがのオレでも、
「そうだよね。さすがのヨウサクでも、この場合はね」
「私は、どちらでも構いませんよ」
ショートヘアのマユミは中立だった。
「何か
「でも、泣いてたよ。何したの?」
ユズサが
「ちょっと。そういうことは、聞かないほうがいいよ」
「……わたくしの国でも、家族や大切な人以外で
すっかり泣き
「え? あれ?」
「……」
何も言わずに、キャロルは微笑む。アサトは
「そういうことなの? やっぱり?」
ユズサは
「いやいや、そういうことじゃないんだよ。みんなも一緒に
アサトは伝えたかったことをようやく言った。
「でも、オレたちが行ってもなあ」
「そうだよね。レベルが違うよね」
「二人の
「なるほど。お二人も
マユミは分かっていなかった。
「……わたくしが悲しんでいたところを、アサトが
キャロルが言った。
「行く。私一人でも。もっと話聞きたい」
真っ先に言ったユズサの
「一人で行かせると心配だから、私も」
ホノリが続いた。
「行って、ボコボコにされてやるよ」
ヨウサクは笑っていた。
「そうならないように、頑張ろう」
ロクミチは
「話はまとまったようですね」
マユミは
いつの
アサトが優しい顔で見つめている。
「ありがとう。キャロル」
短髪の
「……
いたずらっ子のような笑みを浮かべた少女に、
和風の大部屋がある階へ着く。
部屋に入ったとき、二人の手は
それを見つけたケイが
その
キャロルと王子様 多田七究 @tada79
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