リラックス
アサトが、レトロファイトをプレイしている。
横で黙って見ていたキャロル。アサトに話し
ライバルと戦うアサト。
「……送っていただき、ありがとうございます」
両親の泊まっているホテルの前で、キャロルはスカートの
「いえ、近いので、気にしないでください」
アサトはさも当然のように言った。
去っていく、グレーのシャツ姿の少年。後ろ姿が見えなくなる。荷物を持った薄手の白いシャツ姿の少女は、ビルディングの中に入った。
「……ごきげんよう」
両親の居る部屋に入ったキャロルは、自分から
三人はテーブルを囲んで座った。オレンジ色の明かりに照らされた部屋で、キャロルはこれまで話せなかった色々なことを話していなかった。
両親の話を聞いて、それに答える。
何年か分の話したいことがあったはずなのに、思い出せなかった。
今という幸せを
なぜ泣いたのか分からない少女は、泣きながら笑っていた。
緑の多い、
「この辺りには、ニンジャの
父親は、残念そうに告げた。
「もう少し早ければ、桜も咲いていたのでしょうね」
母親も残念そうだ。
「また……
丸襟の白いシャツに紺色のスカート姿の少女は、両親に向かって微笑んだ。
お昼を回ってしばらく
家族は、駅の近くの公園へ向かった。
ベンチに座らず、東の端まで移動する家族。母親は
海の向こうには、ただ、雲が見える。
お
キャロルの
メッセージを確認するキャロルに、両親は何も言わなかった。
「……わたくし、アサトのお家に、行ってまいります」
「ええ。いってらっしゃい」
「ゆっくりしてくるといい」
両親が
アサトの家の前まで行くと、ちょうどアサトも戻ってきたところだった。
「……ごきげんよう」
キャロルが、今回は
「こんにちは」
今回は、アサトが着替えてから部屋に入ったキャロル。自分はプレイせず、白いシャツの少年がゲームをするのを見ていた。二人はベッドに座っている。
「さすがですわ!」
キャロルは、テンションが上がっていた。
「ありがとうございます」
アサトは、
「……昨日のお友達は、いらっしゃらないのですか?」
普段に近いテンションでキャロルが聞く。
「はい。別にいつでも行けるから、とか何とか言われて」
アサトは、
「そうですか。……そうですね」
なぜか2回言ったキャロルは、すこし
「ゲーム、やりますか?」
「いえ。……楽しいのです。見ているのが、好きです」
キャロルが心からの笑みを見せて、しばらく見つめていた少年。
ゲームを終えると、二人は家を出た。
両親に連絡を取っていたキャロルに手を引かれ、アサトは駅の近くの公園に行く。
すこし
手が離されたあとで家族に手を振り、去っていく姿を見守った。
次の日。
キャロルと両親は、列車ですこし西に移動した。
特に
J国の普通の
昼には、お
客のすくない店内。
家族はしばらく話をして、歯磨きをしてから店を後にした。
「歩き疲れたなら、おんぶすることもやぶさかではないですよ」
と言った父親の言葉を
和風の民家が立ち
「……
「若いのに
感心した様子の、
キャロルの両親は
話をした
屋根に黒い
きれいな庭も手入れされている。小石が川のように並び、植えられた木が見下ろしている。
十代前半の少女は、家の住人である
「……本当に、ありがとうございました」
キャロルは言ったあと、教わったお
近くに来たらいつでも寄ってくれと、別れ際に声をかけられた。
列車で
まだ、アサトから連絡はなかった。それでもキャロルは家に行き、チャイムを鳴らした。
アサトの母親が
「勝手に、部屋に入っていいよ」
キャロルは
嬉しそうに見る少女を、アサトの母親も嬉しそうに
しばらくして
「ただいま」
「……おかえりなさい」
帰ってきた人物に向けて、キャロルはすこし恥ずかしそうにしていた。
言われた少年も、すこし恥ずかしそうにする。空の弁当箱を母親に渡してから、自室へ向かった。少年が
そして、キャロルが部屋に入った。アサトがゲームをするのを、隣に座って見る。
「えーっと、眠いんですか?」
アサトが聞いた。昨日のように気分を
「……そうかもしれません。今日は、結構歩きましたから」
キャロルは、アサトのほうに
「……」
アサトは、何を言っていいのか分からなかった。初めての経験だった。
「寝ていないので……ゲームをなさってください」
目を開いたキャロルが言った。
アサトは、しばらくレトロファイトをプレイした。だが、いつもより相手を
「んー」
キャロルは眠そうな声を上げたあとで体を起こした。アサトが、ほっとした様子で隣を向く。そこに相手はいない。
少女は少年の
「……」
アサトは何も言えなかった。
「……」
キャロルは何も言わなかった。
「今、寝るのはまずいですよ」
「疲れてしまいましたわ。このまま眠らせてください」
キャロルが
アサトは、
「起きてください」
言われる前に、キャロルの目は開いていた。全身に力を入れたあとで、目を
「……起きましたわ」
キャロルは、
しかし、頭が回らなかった。
明日、アサトの家に来て、そのときに伝えると言い、両親の泊まるホテルへ帰る。
アサトは当然のように送っていく。
疲れのためか、キャロルは普段よりすこし早く眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます